『え、え~。おほん。
ではそろそろ次の質問をお願いします。』

惚気まくりのアイツの手綱を締めようと、司会者が話を逸らそうとしているのが見え見えだ。

『京子さん!
敦賀さんと家族計画についてはお話しされましたか?
いつ頃、何人くらい、男女どちらが欲しいとか…。』

ぶっっ!!!
なんてコト聞きやがるんだこの記者!
こらキョーコ!
そんな周りが卒倒しそうな可愛い顔してアイツの方を見るんじゃねぇっ!
…無表情になってやがる…?

『…蓮さん?
あ、すみません。
彼、照れたりすると無表情になって固まっちゃう癖があって…。
そんな可愛いとこも好きですけど。////
えっと…まだ子供に関しては話し合ってません。
笑顔いっぱいの明るい家庭にしたいです。
私は…彼と、彼の子供達に囲まれて、本当の家族を持ちたいです。』

だから何人でも、どっちでもいいんです、と笑うキョーコのその言葉の意味に、また俺の心が悲鳴をあげた。
キョーコに家族の温もりを与えられるのは俺だけのはずだったのに…!
俺のものだと思い込んでいた大切なオンナは、自分の愚かさ故に別のオトコのものになってしまう。
…もう遅いのか……?
そう思った俺に画面の向こうでようやく復旧できた無表情男が、おそらく画面のこっちの俺を含めた邪魔者どもを完膚無きまでに蹴散らしたい意識見え見えの、こっちが燃え尽きるような発言をかましやがった。


『し、失礼しました。
俺も彼女と同じで、何人でも、どっちでもいいんですが、お互い一人っ子ですし、たくさんの子供たちに囲まれて暮らす幸せに恵まれたいですね。
ただ、俺も“女優・京子”を愛する者として活動を制限することのない様に、子育ては全面的に参加するつもりです。
…そういう事で、京子さん?
たくさん、たっくさん愛してあげるから、安心して子供、産んでね?』

つ~る~が~れ~ん~!!
おまえなんつー事いいやがる~!


がたたたっっ!!!
画面から外れたところで何かが倒れる音がした。
カメラがその音に向けられると、真っ赤になって鼻血を抑える若いレポーターや、あまりの熱々ぶりに卒倒するカメラマンが続出、会場から引きずり出されている事態である事が浮き彫りになった。


『いやぁ~!!
みんなの前でそんな事、そんな破廉恥な!
蓮さんのばかぁ!』

『ちっとも破廉恥なんかじゃないよ。
俺は君を愛してる。
君も俺を愛してくれてる。
だからこうして夫婦になろうとしてるんだから、何の問題もない。
だったらいいじゃないか、こういう話したって。』

『しちゃいけないなんて言わないわ!
…貴方と結婚するんだもの。
人前でする話じゃないって言ってるの~!』

『じゃあ人前じゃなきゃいいんだよね♪』

『きゃあっ!!
な、何を…!』

『人前じゃない所でゆっくり話し合おう?
そういう事で、記者会見はこれで終わりにさせていただきます。
今日は私たちのために、ありがとうございました。』

キョーコを突然、いわゆるお姫様抱っこしてアイツは退席していった。

後に残された司会者は、場を締めるために一礼し、会見終了を告げたのだった。






…すみませぬ。
私の妄想力がもちょっとあったら、もっと蓮さんが暴走出来そうなのに…。