社に宥められ、何とか気持ちを切り換えた蓮だったが、さすがにカメラマンには隠しきれず何度も撮り直しという珍しい事態に陥った。

“敦賀 蓮”にあるまじき失態であったが、カメラマンに〈敦賀さんにそんな顔させる女性にお目にかかってみたいです〉、と見抜かれて赤面し、蓮がまた新たな一面をカメラマンに晒してしまったのは別の話である。


結局いつもと同じような時刻に帰宅した蓮だったが、社の計らいで翌朝の入り時間を2時間遅らせて貰えた。


「今夜のうちに例のDVD、観てしまえよ。
  あのまま放置したら“敦賀 蓮”の名に響きかねないからな。
…本当なら1日オフにしてやりたいところなんだけど…ごめんな、これが限界なんだ。」


スケジュールを何とか遣り繰りしての2時間。

社は自分の力不足を詫びた。


「俺が仕事にプライベートを持ち込むような事したのがいけないんですよ。
まだまだ駄目ですね、俺って…。
今日の今日で明日の入りを2時間ずらすなんて、社さんじゃなきゃ無理ですよ。
力不足だなんてとんでもない。
…明日はちゃんと切り換えますから。」


申し訳なさそうな蓮に、社は笑って自宅へ帰っていった。




自宅へたどり着いた蓮は、完全にくつろげる状態になるまでDVDをリビングのガラステーブルに置き去りにしていた。

本音を言えば『見たいような見たくないような』であろう。

…とはいえ逃げる訳にもいかない。

蓮は諦めてウイスキーのボトルとグラスに氷を用意し、ディスクをプレーヤーにセットした。




社が言った通りだった。

ヨーロッパで人形工房に、中央アジアで絨毯(じゅうたん)工房に体験修行で1週間、アフリカの集落でもその手先の器用さをいかんなく発揮し、さらに料理の腕前を披露して各地の男たちの胃袋をがっちり掴み、礼儀の正しさと熱心な仕事ぶり、時折見せるはにかんだ愛らしい笑顔でハートも鷲掴み。

別れの日には結婚を申し込む男たちが殺到し、目を覆わんばかりの修羅場が繰り広げられたのだった。



(…確かに…これじゃ放送はできないな。
それに…一刻も早く捕まえないと更に無自覚に馬の骨を増やしてしまいそうだよ、彼女は…。
まさに天然小悪魔。
こうなったら形振り(なりふり)構ってなんかいられるものかっ!!
後で社長にイジられようがなんだろうが絶対に彼女を捕まえる!!)


…急がないと海外からの馬の骨が襲来しそうなDVDに、強く誓う蓮であった。











このあと蓮さんがどうするかは…書こうかな?

おまけ付けましょうか!?