2年前の冬、いつも通る駅の地下街の片隅。
冷たい地べたにそのまましゃがみ込み、下を向いて動かない
ホームレスのおじいさんがいました。
すごく痩せていて、その前を通る度に胸が痛みました。
でもいくら心配しても、同情しても、何もしないのであれば、
無視と一緒です。無関心と一緒です。
無視と無関心の視線ほど、冷たいものはありません。
ある日の朝、雪が降りました。すごくすごく寒い朝でした。
起きた時から、今日こそは!と決めていました。
サラリーマンやOLの人たちが、私たちを交互に見ながら
通り過ぎていきます。すごく恥ずかしかったです。
私は、千円札を入れた封筒とカイロを手に、小声で
「すみません」と声を出しました。おじいさんは全く動きません。
寝ているのかな?
起こしたら怒るかな?
怒鳴られるかな?
おじいさんがどういう人なのか全然分からないので、
とても怖かったです。寒さと緊張で手と声が震えます。
もう一度、「あの、すみません」と言ったけど、やはりおじいさんは
動きません。
もしかしたら警戒して無視しているのかも・・・。
そう思って、「あ、あの。寒いからカイロと・・・」と言ってみたけど、
やっぱり動きません。
も、もしかしたら・・・
そう思うと、すごく怖くなって、ダッシュでその場を去ってしまいました。
その日の夜、主人におじいさんのことを話したら、翌朝、彼も一緒に
ついてきてくれました。
でもいつもいるはずの場所におじいさんはいません。
見るに見かねた誰かが通報か何かをしてくれて、おじいさんが
施設に入れたのならいいなと願いました。
THE BIG ISSUE (雑誌)のことを知ったのは、それから
すぐのことでした。
ビッグイシューは、ホームレスの人々に収入を得る機会を
提供する事業としてロンドンで始まりました。
雑誌を売るのは全てホームレスの人たち。
この本(300円)を購入すると、そのうちの160円が彼らの収入に
なるのです。薄い雑誌ですが意外と読み応えはあります。
ビッグイシューを購入する私を、販売員のおじさんたちが無視
することはもちろんありません。それどころか、みなさん、とても
フレンドリーで優しいです。
私も、それが嬉しくて、安心できて、いつも2,3分、立ち話を
してしまいます
実は・・・、とてもとてもハッピーサプライズな出来事があったので、
その帰り道、一度は通り過ぎてしまったビッグイシューのおじさんの
ところに戻って、1冊購入しました(笑)。
「あれ?前にも買ってくれたよね!」とおじさん。
すごい記憶力です
彼らの販売場所はひとりひとり決まっているので、常連さんも
つきやすいんですよね
「すごく久しぶりですけどね(笑)。今日はすごく良いことが
あったから」と私が言うと、おじさんも喜んでくれました
ちなみに彼は、池袋東口にある洋菓子のタカセ本店の
前を担当しているOさん。
Oさんのとても穏やかな笑顔にいつも癒されます
これからどんどん寒くなっていくから、風邪を引かないように
気を付けて、頑張って欲しいです
そう伝えると、「ありがとう!お姉さんもね!」と言ってくださいました。