信玄「でも、それは駄目だ」
強い口調で言い切られ、踏み出したつま先が、びくりとして止まった。
信玄「俺は君を傷つけたくない。出て行くなら今だ、ゆう」
「っ・・・・・・嫌です。出て行きません。せめて信玄様の容態が、大丈夫だとわかるまでは」
信玄「ゆう、君の気持ちは伝わってる。だからこそだ・・・・・・俺が自制できているうちに頼む」
「でもっ・・・・・・辛いんですよね」
信玄「なんてことないよ」
荒い息を吐き出しながらも、信玄様の微笑みが崩れることはなく、かえってそれが不安を煽った。譲れずに、私は一歩ずつ信玄様のそばへ近づく。
「私だってわかってるつもりです。私を傷つけないために、そう言ってくださっていることも。その優しさを受け取ることは簡単です。でも、信玄様が苦しんでいることは変わらないから・・・・・・信玄様が少しでも楽になるなら、私は傷ついたって構いません」
信玄「ゆう・・・・・・」
「こんな時に、ひとりになりたいなんて言わないでください。いつだって私がそばにいます」
だからさー、ゆうが近づけば余計に辛いんだってば。。。意地っ張りだな私
信玄「・・・・・・」
(あ・・・・・・)
わずかな沈黙が降りた直後、強い力で腕を引かれた。ふわりと抱き締められ、着物越しにも体温の高さが伝わってくる。不安になって見上げると、困り笑いを浮かべる信玄様と視線が合う。
信玄「俺の負けだよ。君はどこまでも強くて、美しいな」
「っ、そんなことないです・・・・・・優しいのは、信玄様です。こんな状態になっても、私を気遣ってくださってるじゃないですか」
(そんな信玄様だからこそ、全部受け止めたいって思うんだ。今夜は・・・・・・全部、受け止めさせてほしい)
「信玄様、今夜は・・・・・・んっ」
口づけで言葉が途切れ、何度も何度も、重ねられる。
信玄「ゆう・・・・・・もっとそばへ」
「あ・・・・・・」
背中を抱えられたまま、ゆっくりと後ろに押し倒された。顔の横で指先が絡み、熱に浮かされた瞳が近づく。
信玄「・・・・・・なるべく、優しくする」
このセリフ可愛いな
「ん・・・・・・」
繋いだ指先にも愛おしむように唇を押し当てられて、胸がぎゅっと締めつけられた。
きゃー、愛あるね〜
やがて、火照る肌をひとつに重ね合わせる。
信玄「大丈夫か?」
「はい・・・・・・幸せです。ありがとうございます、受け入れてくれて」
信玄「俺の台詞だ。どんな俺も愛してくれて、ありがとう」
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翌朝------
信玄様の隣で目覚めて、私はすぐに彼の体温を確認する。
(どうしよう・・・・・・治ってない)
まだ熱いままの信玄様の額に手を当てていると、幸村が部屋にやってきた。
幸村「あ、起きてたか」
「っ、幸村・・・・・・」
とっさに、助けを求めるように駆け寄った。
「どうしよう、信玄様の容態が全然良くならなくて・・・・・・」
幸村「・・・・・・あー・・・」
この、あー・・・・・・が嫌だわ。何となく状況理解した的な…
幸村「安心しろ。たぶん、それただの風邪だから」
えーーー!なんだってー!
「そっか、風邪・・・・・・ええ!?」
あっけらかんと言われ、思わず声が裏返りそうになる。
幸村「昨日、例の悪徳商人を捕まえて内情を吐かせた。練り香はただの甘い香りで、なんの効力もないらしい」
「そ、そうだったんだ・・・・・・」
(じゃあ・・・・・・信玄様は本当に体調が悪かっただけなの?)
佐助「多分、プラシーボ効果だと思う」
幸村の後ろから佐助くんも現れ、あっさりと付け加えた。
佐助「本当は効き目がないのに、そんなふうに思い込んで、その症状になるっていう現象だ」
想像妊娠みたいのか。。。
(つまり、ただの勘違い・・・・・・?)
信玄「それは違うと思うぞ」
「っ、信玄様!」
いつの間にか信玄様が起きていて、私はすぐに駆け寄る。
「信玄様、大丈夫ですか?」
信玄「大丈夫かどうかでいうと、微妙なところだが・・・・・・その『ぷらしーぼ効果』っていうのは見当違いだ」
きょとんとしている間に、信玄様はさり気なく私の肩を抱き寄せた。
信玄「俺はゆうの魅力にあてられたんだ。な?」
上手い👏🏻
「っ、そんなこと言ってないで、ちゃんと療養してください!」
いつもと変わらず、息を吸うように口説く信玄様に恥ずかしくなる。そんな私達を見ていた幸村が大げさにため息を吐いた。
幸村「見せつける元気があるなら大丈夫だな」
大丈夫よ、幸村。熱があっても、勘違いして、夜中じゅう出来ちゃうんだから。。。(笑)
そのまま幸村たちは出て行ってしまい、信玄様とふたりきりになる。昨日のやりとりを思い出し、火照る顔を片手であおいでいると、
信玄「ゆう」
呼ばれて振り返った私に、信玄様が穏やかに微笑む。
信玄「君の気持ちは嬉しかった。ありがとう」
私も笑みを返して、そっと信玄様の肩に寄り添う。
信玄「それで、看病は引き受けてくれるのかな」
「ふふ、もちろんです。頼まれなくても、お世話しますから」
信玄「ありがとう。間違いなく今、俺はこの世で一番の幸せ者だな」
きゃー!!!なんか大人の男だなー♡
(それはきっと、私もだ)
拍子抜けしつつも、何事もなかったことを心から幸せに思いながら・・・・・・穏やかな朝の光の中で、顔を見合わせて笑い合った。