風が湿った雨上がりのとある昼下がりのこと------

私は、幸村と城下でデートをしていた。
(・・・・・・そういえば、今日は珍しく喧嘩もしてないな)

そんなことをぼんやり考えていると、前を歩くおばあさんが、雨上がりのぬかるみで、転びそうになった。次の瞬間、隣を歩いていたおじいさんが優しく支えて、手を繋ぎ直す。

おばあさん「ありがとう」

おじいさん「梅は相変わらずそそっかしいのう」

梅「そそっかしいのは、惣二郎さんじゃ。今朝も・・・・・・」

言い合いながらも、ふたりは幸せそうに笑っていた。

「素敵だね、あんなふうにずっと一緒にいられるの」

幸村「・・・・・・」

「幸村?」

幸村「あ、あー・・・」

首を傾げる私に幸村は、ふっと微笑んだ。

幸村「そーだな。悪くねえかも」

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その夜、幸村はゆうが寝静まった後、佐助の元を訪ねた。

佐助「こんな時間に珍しい」

幸村「たまにはいーだろ。あいつも寝ちまったし」

佐助「ああ、全然構わない。ゆっくりしていって」

部屋に通されると、いつから来ていたのか、座って何かを見ていた義元が顔を上げて微笑む。

佐助「ところで、こんな夜遅くにどうかした?」

幸村「お前やゆうがいたところでは、婚礼の申し込みってどうすんだ?」

えー!!婚礼の申し込みって、、、
ぷ、プロポーズー???( °Д°)

佐助・義元「え?」

幸村の一言にふたりは目をみはり、顔を見合せた。

佐助「それって・・・・・・ゆうさんと結婚したいってこと?」

幸村「まあ・・・・・・今すぐとはいかなくても、いずれはな。その前に、正式な許嫁にするくらいのことはしておきたい」

やばい、幸村が大人の男に見える。。。♡

義元「幸村・・・・・・大人になったね」

幸村「うるせー」

佐助「そうか・・・・・・そういうことなら、全面的に協力する。まず、俺達がいたところでは・・・・・・プロポーズといって、相手の女性に婚姻を申し込む儀式みたいなものがある」

幸村「ぷ・・・・・・ぷろ、ぽおず?どんな儀式なんだよ」

佐助「極端に言えば、『結婚してください』って伝えること」

幸村「っ・・・・・・おー、わかった」

佐助「その時に、婚約指輪っていうのを渡すのが一般的な申し込み方なんだけど。ちなみに給料三ヶ月分・・・・・・ええっと、三月に貰う褒賞くらいの価値のものがいいっていう古くからの言い伝えがある

幸村「! なかなか高いもんだな」

なんだ、この二人の会話。。。ワロタ(≧∇≦)

幸村「とにかく、その指輪ってのが必要なのか・・・・・・」

佐助の説明を聞いたところ、簡単に入手できるものではないということから、幸村は考え込む。

佐助「まあ、指輪がなくても、幸村の気持ちだけでも嬉しいとは思うけど」

幸村「いや、どーすなら、指輪も用意してやりたい・・・・・・何とかなんねーかな

義元「ねえ、それ、銀じゃなきゃ駄目なの?銀がないなら------・・・」

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幸村と城下でデートをした数日後のこと------

(また幸村いないんだ・・・・・・)
私は、春日山城をきょろきょろと探し回っていた。

(幸村、最近頻繁にフラッとでかけるんだよね・・・・・・行き先も教えてくれないし。。どこに行ってるんだろう)
考えながら歩いていると・・・

佐助「ゆうさん?」

「佐助くん!」

佐助「どうかした?なんだかボーッとしてたみたいだけど」

「あ・・・・・・うん。実は幸村を探してるの。どこにいるか知ってる・・・・・・?」

佐助「・・・・・・幸村なら・・・・・・義元さんと話してるのを見た」

「!そっか、ありがとう」

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ゆうがバタバタと駆けて行くのを、佐助は見送りながら------

佐助「ごめん、ゆうさん。俺は嘘がつけないタチなんだ」

佐助は、申し訳なさそうに手を合わせた。

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女中さんとすれ違い、義元さんの居場所を聞いた私は、ある空き部屋を訪れた。

義元「こんにちは。珍しいお客さんだ」

義元さんは私にも座るように促しながら、ゆったりと尋ね返した。

「最近、幸村がどこに行くのかも言わずよく出かけてるんです。それで・・・・・・義元さんは何かご存知かなと」

義元「ああ・・・・・・なんだか、足しげくどこかへ通っているよね」

「足しげく・・・・・・」

義元「気になる?」

義元さんは、くすっと笑って私の反応を見ている。

・・・・・・別に、何か疑ってるわけじゃないんですけど、最近やけに口数が少なかったり、様子もおかしいなって、気になっちゃって・・・・・・」

素直な気持ちを伝えると、義元さんは見透かすようにじっと私を見つめ、口を開いた。

義元「ねえ、ゆう」

「?はい」

義元「君は生涯、幸村と一緒にいたいと思ってる?」

「っ、え」

(生涯、一緒に・・・・・・)

「っ・・・・・・もちろん、そう思ってます」

義元「この前、たまたま佐助とそういう話をしてね」

「え、佐助くんと?」

義元「ふたりは一緒にならないのかなって」

(それは・・・・・・もちろんいつかはそうなりたいと思ってるけど・・・)

義元「佐助から、君達がいたところの風習も聞いたんだ。提案なんだけど・・・・・・君から『ぷろぽーず』をしてみるっていうのはどう?」

「えっ・・・・・・」

(私が、幸村にプロポーズ!?)

義元「確かな約束があれば、これから先、不安になったりすることも減るんじゃないかな。それに、幸村も喜ぶと思うし」

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それから私は、義元さんに連れられて、城下の外れの陶芸作家の方が住む家を訪れた。
(義元さんの提案で、指輪を作ることになるだなんて、思ってもみなかった・・・)

どうやら佐助くんから指輪の風習も聞いた義元さんは、元の材質で作るのが困難であれば、陶芸で作るのもありなんじゃないかと思いついたらしい。

義元「ちょっと話をしてくるから、待ってて」