もう何ヶ月も前の話になりますが、毎週火曜日に日本語レッスンを受けに来ているイギリス人のアレックスとの会話の中で日本の修学旅行の話が出ました。

 「修学旅行って何?」という質問への答え方が難しい。「修学」とは言っているものの、実質は「思い出作り」か「卒業のご褒美」という意味合いが強いように思えます。

 じゃあ、もし本当に「学問を修める」という字義どおりの修学旅行をするとすれば……という妄想的な方向に話は進んでいきました。

 「修学」と言っているのだから、学業の集大成的なものが良い。だったらいっそのこと、海外で3ヶ月間、ホームステイをしたらどうだろう、ということになりました。

 中学校に入学したら、ホームステイを想定しながら語学の学習を進めていきます。どのような表現が必要になるのかを自分自身で想定し、自分自身が困らないように準備を進めます。実際に起ることが分かっている状況を想定しながらの学習なので意欲も高まりますし、先生方への質問もより具体的でリアリティのあるものになるのは間違いありません。授業外の、テストには出ない事柄でも自身で調べて、幅広く学習をする子も増えるかもしれません。
 
 そしていよいよ集大成の「修学旅行」です。実際にその言語圏の中で試してみて、自身の欠点やその後の学習の仕方のヒントが得られることでしょう。

 日本に帰ってから、その後の進路選択に大きな影響を受ける子も現れ、学校の先生方や保護者、そして我々大人達は彼らが持ち帰る海外の情報に大きな驚きや刺激を受ける事になると思います。つまり、我々大人も彼らによって成長できる訳です。

 さらに言えば、毎年100万人を超える子供達を海外に送り出すことで、世界各地に親日派の人たちを増やす事も出来ます。子供の魅力は国籍や人種を超えて万国共通なのは皆さんもご経験があることだと思います。また、そのぐらいの年齢で子供達同士が築いた人脈は、将来的に日本の国際政治やビジネスの世界でも活かされることになるでしょう。

 もっと言えば、このような手段で親日派の方を増やす事は、「軍事力に頼らずに国を守る」という日本国憲法の理念にも合っています。得てして、軍事侵攻というのは相手方の顔が見えない事で生じ易く、知人が多く暮らす国への軍事侵攻には反対する人たちが増えると思うからです。

 国が予算を組んでホームステイをアレンジする機関を作り、実現してくれないかなあ、というのが僕ら二人の妄想でした。