本当は続きを書く気はなかったのですが、読みたいと言ってくださった方がいたので続編を作ってみました。
とはいっても最初の話の時に思い付いてたけど収拾つかなくなるからと削っていたものを再利用して話を作っただけなのですが・・・。
ちなみに今回の話の内容ではこっちの方がいいと思い微妙にタイトルを変えております。
前回に引き続きほのぼの要素ゼロの話ですがよろしければどうぞ。



毒舌な天使改め小悪魔たち



本日も元気に遊んでいる子ども達を見守りながら、蓮はキョーコのことを思い浮かべていた。
彼女に初めて会ったのは約半年前。
母親が木曜だけ都合がつかなくなったためこれからは自分が奏江を迎えに来ることになったと挨拶され、笑顔の少女と目が合った瞬間彼は恋に落ちていた。
所謂一目惚れというやつである。
それからはなりふり構わずアプローチしたが全てスルーされ、今現在は普通に世間話が出来るくらいで留まっているのだった。
時折というかほぼ毎回ドン引きされながら・・・。
だがなりたいのは手を出しても許される特別な関係であっていつまでもこんな状態を続けたいわけではない。
そろそろキョーコに意識してもらいうにはどうしたらいいかと彼が思っていた時、聞き慣れた少女たちの会話が耳に飛び込んでくる。

「まったく、ドイツもコイツもどうしてこう騒がしいのかしら。
おかげで落ち着かないじゃないの・・・。」

「まあまあ、皆まだ子どもなんだからそれは仕方ないって。」

「そんなこと言ってる千織だってうるさすぎると思ってるクセに・・・。
あ~あ、これだから子どもなんて嫌いなのよねー。
騒ぐし我が儘だし自分の主張を通そうとするしで・・・。」

「そりゃ私も同じ感想だけどそんなこと言ってたらキリないもの。
今だけの辛抱なんだから我慢しなさいよ。」

と、またもや園児らしからぬ内容に内心“いや、君たちもまだ子どもだから”とツッコミを入れつつ蓮は深いため息をつき天を仰いでいた・・・。

そんな日々が過ぎようやくやってきた心待ちにしていた木曜日の夕方。
ふと彼は思い付いたことを実行してみることにした。
それはキョーコが見ている前で他の女性と親しくするというもので、上手くいけば意識してもらえるのではと期待したのだが空振りに終わり落胆してしまう。
だがまあ次頑張ればいいかと自分を励ました翌日に彼のその前向きさは見事に粉砕されるのだった。
いつもながら2人の少女によって・・・。

「あんなことでお姉ちゃんの気を惹こうだなんて浅知恵にも程があるんじゃないの?
先生もいい大人なんだからもっと考えて行動しなさいよね。」

「あら奏江、よく考えてあれだったんだろうからそこまで言ったら可哀想よ・・・まあ本当に浅すぎて笑っちゃったけど。
しかもそれがダメで凹むってどれだけヘタレたら気が済むのかとも思ったし。」

片や呆れたようにやれやれとため息をつき、もう一方は生温い笑顔を浮かべている。
そんな少女たちにこの後も散々こき下ろされ蓮はがっくりと項垂れ離れて行く。
その去っていく後姿を見ながら奏江はポツリと呟いていた。

「・・・本当にあんなヘタレのどこがいいのかしら・・・。」

「えっ、どういうこと?」

聞こえてきた言葉の意味が分からず千織が問い返すと、少女は眉根を寄せながら囁くように話す。

「最近気付いたんだけど、どうやらお姉ちゃんたらあの人のこと好きみたいなのよ。
もっとも自分みたいな色気のない女は相手にされるわけないって思い込んで諦めてるようだけど・・・。
だからあの2人って本人同士は気付いてないけど既に両想いなの。」

「え~~っ、何それ?!
何でお姉さんがあんなのに落ちるのか納得いかないんだけどっ!!」

「私だってそうだけどこればかりはしょうがないじゃない。
それよりも・・・いい?このことを知ってるのは今のところ私たちだけなの・・・ここまで言えば察しのいいアンタなら私の言いたい事分かるでしょ?」

「・・・ああ、先生が気付くまで知らん顔で邪魔してやろうってことね。
それはいいわ、是非やろうじゃない・・・そう簡単にあんな顔だけヘタレに奪われてたまるもんですかっ!」

「そうその意気よ。先生って打たれ弱いクセにめげないから、しっかり妨害してやりましょ。」

まさかそんなとんでもないことを天使の顔した小悪魔たちが囁きあってるとは露知らず、蓮は1人子どもにあそこまで言われる我が身を嘆いていたのであった。
そんな彼の春はまだまだ遠い・・・。



おわり



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