2016年8月28日18:00キックオフ@京都市西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場 天候:晴

京都 4ー0 加古川   


【京都メンバー】
GK清水圭介。DF右から内田恭兵、吉野恭平、下畠翔吾、齊藤隆成。MF右から田村亮介、和田篤紀、國領一平、沼大希。FWエスクデロ競飛王、有田光希。
SUB:山田元気、岩沼俊介、堀米勇輝、矢島卓郎、キロス。
監督:石丸清隆

(選手交代)
65分、有田→矢島:ポジションそのまま。
70分、エスクデロ→キロス:ポジションそのまま。
81分、田村→堀米:ポジションそのまま。


【加古川メンバー】
GK津司啓太。DF右から福田俊太、日向翼、勝又隆太。MF右から花岡諒、大賀優将(55分:→大塚靖治)、桶田慎二、長瀬圭佑(45+1分:→近藤光)。FW右から弦本一樹(57分:→中村哲平)、田中良磨、鈴木玲央。
SUB:船崎慶紀、白岩涼。
監督:橋本雄二


【審判団】
主審:吉田寿光 副審:藤沢達也、谷弘樹


【得点】*サイドは攻撃側から見て
24分、エスクデロ(京都1−0加古川):右CK、國領のクロスをニアサイドでエスクデロが頭で合わせて決める。
31分、國領(京都2−0加古川):中盤に引いたエスクデロからの縦パスを有田が落とし、受けた國領が左足ミドルをゴール左に突き刺す。
53分、有田(京都3−0加古川):和田のサイドチェンジパスを右サイドで田村が受け、オーバーラップした内田にパス。内田の低いクロスに有田がニアサイドで右足で合わせて決める。
67分、矢島(京都4−0加古川):エスクデロの縦パスをDFがクリアしようとしたボールがこぼれ、拾った矢島が落ち着いてゴールに流し込む。


【警告】
京都:なし
加古川:大塚(59分)



リーグ戦が一時中断となり、天皇杯が始まりました。
毎年のようにレギュレーションが変わっている気もしますが、今年は前回とほぼ同じスケジュール。
J2クラブは1回戦からの登場となり、京都は兵庫県代表のバンディオンセ加古川との対戦となりました。
下部カテゴリーに属する相手ということもあり、京都はリーグ戦と大きくメンバーを変えて臨みました。
清水、齊藤、田村、沼、和田といったところは今季初めてスタメンですね。齊藤と沼については京都でスタメンになることも初めて。
また、内田が右SB、吉野・下畠がCBとして出場となります。

対する加古川は、兵庫県予選決勝で甲南大学に勝利して出場。天皇杯本選に出場するのは8年ぶりとのこと。
ここ最近はずっと関西学院大学が兵庫県代表として出ていたように思いますが、今年は大学選手権優勝枠での出場となっているため、兵庫県予選には出ていません。加古川としては強力なライバルがいない間に着実に出場権を手にした形と言えるでしょうか。
今季は関西1部に所属していて、現時点で4位。かなり引き分けが多いようで、なんとなく親近感を覚えるチームですね(笑)



個人としてもチームの一部としても戦う姿勢を示して得た結果


この試合、京都としては最低限勝ち切るということに加えて2つのテーマがあったと思います。
1つ目はこれまで出番の少なかった選手たちが個人として、また与えられたポジションの中でチームの一部として機能しながら戦えるかを見ること。
もう1つは、1つ目のテーマをクリアした上でリーグ戦での新しいオプションとなり得るかどうかの見極めです。


まず結果として、危なげなく4−0の勝利を飾ったということで最低限の目標はクリアできました。

加古川はまずしっかり守備をしようということで、後方に選手を固め、CBを一枚余らせた上でマンツーマン気味に京都の攻撃に対応しようとしていました。
京都の布陣が見掛けは4−4−2なので、加古川も最初は3−4−3の形でやろうとしていましたが、エスクデロが中盤に引く動きが多いと見るやすかさず4−1−4−1の形に。
マンツーマン+後方にカバーリング用のCBという構えは崩さず、さらに前にはほとんど出て行かないということで、京都としてはスペースを見出しづらい状況ではありました。
その中で、ボールを左右に動かしながら相手の綻びを探し、縦パスから裏を狙う攻撃で攻略していきます。
崩しきる場面は少なかったですが、セットプレーからしっかり先制点を奪い、國領の素晴らしいミドルシュートで追加点。引いた相手に対するオーソドックスな攻略法で試合の流れを決定づけることができましたね。
後半にはサイドチェンジからの良い形で追加点を奪い、矢島のゴールで突き放す形。
終盤、フル出場に慣れていない選手が多いだけあって疲れも出たのか、判断やプレーのミスが出て攻められはしましたが、しっかり完封しました。


下部カテゴリーのチームと対戦する時、控え選手主体で臨むと難しい試合になることが多いです。
相手はJクラブとの対戦ということでモチベーションが高いですし、一方のJクラブ側は連携の取れてない選手間で試合序盤にズレが出やすくなってしまうことが往々にして起こってしまうためです。
特に、レギュラーメンバーも含めてチームとしての形ができていないチームはそうなってしまうことが多いですね。
京都も昨季は立命館大学を相手にそういう試合 をやってしまっていて、チームとしての積み上げのなさと、控え選手の意識の低さを露呈してしまいました。

その点で言えば、少なくとも4−4−2の守備についてはある程度チームとして共有できていて、今回出場した選手たちもその中での役割を担うことはできていたかと思います。
加古川も球際に強く行こうとしていましたが、京都の選手も相手ボールになった際にすぐさま奪いにかかる意識は強く保っていて、個人能力の高い京都が優勢に。
ボール保持が長くなるとこの辺りが薄れてしまうこともよくありますけど、しっかりとやってくれたのはホッとしたところです。

特に和田は技術の高さを見せる一方で守備意識の低さ・軽さが課題でしたし、そこをしっかりやる姿勢を見せられましたね。奪い切るというところまでは少なかったですが・・・。
吉野もCBとして出るのは初めてでしたけど、下畠とともに後方をしっかり締めてくれました。3バックにした際のCBとして練習で試されていると言う話も出ていましたが、リーグ戦に向けて十分な手応えがあったのではないでしょうか。
このメンバーだと下畠が頼もしく見えるというのはちょっと感慨深いですね。

また、國領はリーグ戦でもボランチの位置で良いプレーを出せるところは既に見せていますが、この試合でも十分な働きを見せてくれました。
有田と内田もリーグ戦で出ている選手ですが、彼らに求められる役割は果たしたでしょう。
ただし、内田は現状では攻撃の部分で裏への飛び出しが求められていて、サイドハーフで起用されることが多くなっています。今回の試合でも攻撃面では十分にやれていたというところ。
本来のポジションである右SBで勝負していくためには、まだ守備面で不安は残っていて、よりレベルの高い相手とやった時にどれだけ集中を切らさずにプレーできるかという点は継続課題ですね。
石櫃の離脱が長いようですと、内田にかかる期待が大きくなってくるので、例えば次のセレッソ戦でも見たいところでしょうか。


その他、齊藤は相手がマンマーク気味であることを逆手に取って、高い位置取りをすることによって相手の攻撃を防止していた印象。
対面することの多かった花岡は加古川のチーム得点王だそうですし、マッチアップでほぼ自由にさせなかったことは評価できそう。
特徴を考えると攻撃面でもう少し強みを出したかったでしょうか。

GKの清水は昨季レギュラーでしたので、実力は折り込み済みと言えるところですけど、試合勘があまりない中でも安定した危なげないプレーを披露してくれたのは頼もしいところ。
プレー機会自体が少なかったですけれど、終盤のFKでも動じず、さらにチームが緩んできた時に引き締める一声も掛けてくれていて、こういうGKがベンチにいてくれるのは心強いですね。



オプションになり得るかは持ち越し課題に


この試合の2つ目のテーマについては、まだまだという状態でしょうか。

現状のチームの問題として、エスクデロと堀米のキープ力・突破に頼った攻撃に偏りがちなことがあります。あとはイ・ヨンジェの裏抜けですね。
もちろん彼ら3人の攻撃力はかなりの武器なのですけど、チームとして攻撃の幅が少ないことは攻めあぐねや交代策の乏しさにも繋がっていて、リーグ終盤戦に向けて何とかしたいという状況です。
特にサイドハーフは人員的にも不足していて、現状のメンバーでどれだけ厚みをつけていけるかが焦点に。


今回の試合で言うと、前線4枚の組み合わせはかなりそれを意識したものと言えるでしょう。
イ・ヨンジェと交代で出ることの多い有田がトップにいて、エスクデロがボールを受けに中盤に下がる。これはリーグ戦でもよく見る形ですね。
ここに、本来はFWである田村と沼をサイドハーフに入れることによって、開いたところから斜めに飛び出していく形でシュートチャンスを作りたい狙いがあるでしょう。
昨季は宮吉拓実が左サイドで同じ役割を期待されていましたね。あまり上手くいきませんでしたが、石丸監督としては二列目からの飛び出しを攻撃の形の一つとしたいのでしょう。

ただ、サイドハーフに求められるのは裏への飛び出しだけではなく、サイドいっぱいに開いて相手DFを広げさせる役割も担います。この役割は同サイドのSBとも連携が必要ですし、守備面まで含めるとタスクの大きいポジションとなりそうです。ポジショニングと判断の部分で慣れも必要ですし。

沼については裏への飛び出しは得意そうで、今回の試合でも良い飛び出しがありましたが、あまり多くのタスクを求めるのはちょっと酷かなという印象。
田村は3点目のシーンで良いポジショニングとボールタッチを見せられたのは良かったですね。ただ、飛び出しで受ける場面はあまりなかったですし、終盤は判断の遅れで危なっかしいシーンを招くことも。
元々スピードに特徴のある選手ですので、多少守備面に目を瞑ったとして、プレー判断を速くして突破で貢献できればチームとしては助かるといったところでしょうか。それができるのであれば、点を獲りたい時のオプションとして候補に上がってきます。


もう1つの攻撃の形の候補としてはキロスの高さを使うことが考えられますが、こちらはほとんどやれませんでした。
「キロスには普通にプレーさせた」と石丸監督がコメントしていますが、4点差ありましたし、時間も20分程度ですので、割り切ったパワープレー練習に費やしても良かったように思います。
「普通に」となるとトップに入るキロスが引いてボールを受けに来るか、裏に抜けて相手のDFを押し下げるかといったプレーが必要だったと思いますし、周囲もそのつもりでプレーしていた様子でしたが、肝心のキロスが理解していなさそうでしたので・・・。
身体能力は高く、競り合いに入るフットワークもそれなりに持っているようには見えました。しっかり飛んで競れるので、クロスの質にもよりますが、十分高さは武器になると思います。
一方で器用な選手には見えません。
相手としてはあれだけ大きい選手がいるとそれだけでプレッシャーになるので、変に難しいことをさせて話をややこしくする必要はないはずなのですが。
今季については時間も限られていますし、求める役割としても終盤のパワープレーが第一選択肢でしょうから、テストにしてはちょっと中途半端な印象でした。

一方で、矢島が自由に動く形でプレーしていたのですけど、ワントップで張らせるよりもやりやすそうな印象は受けました。
これまで途中交代で入った時には、トップでロングボールを受ける形が多くなっていたと思いますが、本人としては前を向いた状態でどれだけ受けられるかというところなのでしょう。その方が突進力も活かせるでしょうし。
例えばシャドーの位置で使ってみても良いかもしれませんね。ようやく1ゴールも記録できましたし、リーグ終盤戦に向けて戦力になってくれれば。


難しい展開にも成り得たゲームでしたが、全体的にはよくやってくれたと思います。
その中で、今後にいかに繋げられるかというところなんですけど、それについては持ち越し課題となるでしょうか。
次週は天皇杯2回戦ということですけど、相手はC大阪。
リーグ戦では既に2試合戦っていますが、プレーオフも考えるとどれだけ手の内を晒すかという点も石丸監督は気にするかもしれませんね。
再開初戦の松本戦を見据えたプランB(あるいはC?)くらいを試用運転してみるのではないかと思っていますけど、どう戦うでしょうか。
また、そこでもオプション検討はあるでしょうし、選手個々にとってもチームにとってもうまく活用していきたいですね。


(筆者注)
C大阪戦は現地観戦できない模様です。
テレビ中継もなさそうなので、試合レビューはお休みの可能性が高いです・・・。
全試合レビューは今季もできないか・・・。