2016シーズンが終わり、京都は年間勝ち点5位でJ1昇格プレーオフに進出しましたが、準決勝で敗れてしまいました。
今回からの記事では、例年通り今季を振り返っていこうと思います。
全3回か4回の予定です!今年も分量考えてません!書きたいだけ書きます!

第1回の今回は、シーズンの流れを改めて振り返ってみます。



昨季17位からのスタート


和田昌裕監督が指揮を執った昨季は開幕から不安定な戦いを続けて下位に低迷。
前年9位の成績を受けて強化部を刷新したこともあって選手編成にも混乱が見られ、今井浩志社長(当時)が現場に大きく介入したことも報じられていました(参考:2015シーズンまとめ・その1 )。
和田監督も戦術面で確固たる指針を打ち出すことができず、夏に解任となりました(参考:2015シーズンまとめ・その2 )。
攻守両面でのチームの混乱を考えると解任はむしろ遅すぎたくらいで、ここにも今井社長の介入が大きかったことが窺えました。結局混乱の責任を取る形で今井社長も退任し、京セラグループから異動してくる形で山中大輔社長が就任。
シーズン中に社長も監督も変わる異常事態となりました。

和田監督の後を継いだのは、ヘッドコーチとして京都に戻ってきていた石丸清隆監督。
積極的な前線からのプレスと4バックの連携をベースに守備を立て直し、降格圏からは脱出しました。
一方で攻撃の形作りは進まず、Jリーグ記録となる9試合連続ドローに代表されるように、勝ち切れない試合が続きました。
最終的にリーグ戦は17位。2014シーズンの9位を大きく下回り、J昇格後最低の成績を更新することになってしまいました。

巻き返しを図るオフには湘南のチョウ・キジェ監督の招聘に動いたものの、最終的に破談。それを受けて石丸監督が引き続き指揮を執ることになりました。
また選手編成面では、宮吉拓実、駒井善成、伊藤優汰、原川力といったユースからの生え抜き組がJ1チームに移籍し、中山博貴も現役を引退したため、大きくチームが様変わりすることに。
一方で「赤字覚悟」と山中社長が言うほどの投資を行い、GK菅野孝憲やFWイ・ヨンジェらの実力者を多数補強(参考:2016シーズン戦力まとめ )。
さらに開幕直前にはエスクデロ競飛王も加入し、2016シーズンに突入しました。



慎重さが表に出過ぎた序盤戦


昨季の流れを引きずるように開幕のホーム水戸戦 を皮切りに4試合連続ドロー。
第5節のアウェー札幌戦 では大敗を喫し、1999年以来の開幕5戦勝ちなしスタートとなってしまいました。

キャンプでは3トップも試していたようですが、開幕戦はオーソドックスな4−4−2の布陣。
ダブルボランチの片方(多くの場合、佐藤健太郎)がDFラインに下がるとともに、両SBが高い位置を取り、サイドを主体に短いパスで崩していく形を志向している様子を窺わせました。
これに関連して、試合中にCBを投入して3バックに転換し、ポジションチェンジを伴わずに攻撃を作る形も見せていました。

元々こういったポジションチェンジは、相手が前からプレスを掛けてきた時にどう外して、どう前に運ぶかという観点からやるものです。しかしながら、京都は「どう運ぶか」という点で苦労しました。
受け手があまり顔を出せないということも大きかったですし、守備面から来る影響も大きくありました。
染谷悠太と菅沼駿哉が軸となるDFラインは基本的に引き気味で、相手のFWが裏に抜けるのを警戒。一方で有田光希とイ・ヨンジェのツートップはカウンターに備えて前に残るので、間延びしやすい状況に陥りやすくなっていました。

慎重と言えば慎重でしたし、押し上げられない臆病さが出ているとも言えました。
攻撃面でもなんとかボールを受けたいために小さな展開になりがちで、なかなか打破できない状態に。
3バックへの転換も、基本的にはバランスを崩さずに目先を変える目的がメインになっていましたし、なるべくリスクを冒さないように戦おうという意識が強かったと思います。
第3節・岡山戦 ではスタートから3バックにしてみたり、第4節・長崎戦 からはまた4バックに戻したりと微調整を施そうとしましたが、引き過ぎる癖は変わらず、5戦連続で勝利がない滑り出しとなりました。

シーズン初勝利を挙げたのは第6節の山形戦
堀米勇輝とダニエル・ロビーニョが今季初のスタメンとなり、染谷に代わって高橋祐治が菅沼とCBを組んだ試合でした。
開始早々に大黒将志の先制ゴールを許しましたが、イ・ヨンジェとロビーニョが組む2トップが相手DFの裏に走り込む意識を強く出し、2トップがそれぞれゴールを決めるなど、3ゴールを奪って勝利。
続く群馬戦 もセットプレーから交代出場の有田が決めて勝利し、連勝を果たします。
ただ、山形も群馬もこの時期は苦しんでいて、相手方のリズムの悪さに助けられたところもありました。

昨季同様、左SBで下畠翔吾が起用されていましたが、左足をスムーズに使えないために攻撃面ではどうしても詰まってしまいました。また、攻撃のテコ入れのためかアンドレイが前に出過ぎるシーンも目立つように。
群馬戦では高橋も脳震盪で長期離脱を余儀なくされましたし、不安様子は解消されたわけではありませんでしたからね。
事実、第9節徳島戦 (第8節・熊本戦は震災の影響により延期)では、相手にシュート1本しか許さなかったにも関わらず、攻撃の形をほとんど作ることができないまま敗戦。
昇格への道筋どころか、石丸監督の進退問題も取り沙汰される状況に陥ってしまいました。



割り切りからメンバーの最適化に至り浮上


迎えたゴールデンウィークの連戦。京都はC大阪、清水、千葉と予算規模の大きなクラブとの連戦となりました。

今季ひとつ目の正念場と言えた緒戦のアウェーC大阪戦
個人能力の高い相手を前に、チームは割り切った守備戦術を採用しました。
DFとMFの8人がコンパクトに保つ意識を強く持ち、攻撃時にもポジションを崩さないように徹底。
中盤では堀米と山瀬功治のサイドを入れ替え、縦への突破でコーナーキックが奪えれば良いというくらいのプレーを見せます。
実際、コーナーキックから2ゴールを奪い、菅野のPKストップもあって完封勝利。

これを契機に、守備でのコンパクトさがより意識付けられることになり、シーズン最後まで大きな武器となりました。
続く清水戦 では佐藤の出場停止やロビーニョの負傷交代といったアクシデントもありながら、相手の攻撃に耐え抜いて勝利。
千葉戦 では最後に追い付かれてしまいましたが、正念場の3連戦で2勝1分の好成績を残すことができました。

この連戦後、愛媛北九州横浜C に3連勝。結局、これが今季唯一の3連勝になってしまうのですが・・・。
金沢とのドロー を挟んで讃岐山口 にも連勝。
9試合で6勝3分という好成績を挙げ、第18節終了時点で消化試合が1つ少ないにもかかわらず4位に浮上。自動昇格圏内も狙えるところまで上げました。

この好調時、メンバーと志向するサッカーが上手く噛み合ってきた印象がありました。
千葉戦からはエスクデロがツートップの一角としてプレーするようになり、多少のプレッシャーならモノともせずにキープできる彼が前線の起点に。
ややバランスを崩しがちなところもありましたが、アンドレイが前に出ることでエスクデロと2枚のトップ下のように振る舞い、中央の起点作りに貢献。最前線ではイ・ヨンジェが相手SBの裏へ飛び出す動きを見せることで縦方向の深みを作り、相手DFを下げる効果を作り出していました。
また、本多が戻ったこともあって左サイドで詰まることも少なくなり、上記した堀米と山瀬の位置も合わせてサイドの攻撃もだいぶスムーズに。
守備では中盤とDFがコンパクトに保たれるとともに、CBに移った下畠の奮闘もあり、良い流れができつつありました。



連勝の陰で浮き彫りになりつつあった課題


メンバーの入れ替えは多少ありましたが、この形はシーズンを通して最適な位置関係と言えるもので、終盤戦にここへ回帰していったのも当然の流れだったかもしれません。
言い換えれば、ここからさらなる進歩に至ることができなかったのが誤算だったとも言えるのですが・・・。

不安要素として感じられていたのはバランスの問題。
アンドレイが前に張る形が一つのベースとなっているために、カウンターを受けた時に脆さを感じさせることが1つ目。
コンパクトな守備を形成するものの、ツートップの守備参加が限定的であるために、相手のCBやボランチに自由にサイドチェンジを許す傾向にあったことが2つ目。
合わせて、主導権を握りながらも決定機を逃すことがあまりに多いこともありました。決定機を逃すあまり、焦ってさらにバランスを崩してしまうこともあったでしょうか。

このあたりの問題は試合ごとに垣間見えていましたが、結果に結びついてしまったのが第19節の東京V戦
ワントップに入ったドウグラス・ヴィエイラの動きにCBが引きずられ、相手ボランチにプレッシャーが掛からずに自由にサイドチェンジを許す苦手の展開。
一方でバランスを崩して攻撃に出る東京Vの背後を何度も突いてカウンターで決定機を創りますが、1点止まりに。
守備の不具合を解消できないまま、後半に逆転を許して敗戦。
連勝中のひとつの敗戦という考え方もできたのですが、振り返ってみると京都の問題を完全に浮き彫りにされた象徴的な試合でもありました。

東京Vに敗れた後で迎えたのはホーム松本戦 。勝ち点差2で迎えた3位チームとの試合でした。
互いに好守を見せる質の高いゲームでしたが、松本の得意とするセットプレーから飯田真輝に2ゴールを許し敗戦。
さらに、中2日で迎えた熊本との第8節延期分の試合 では、いつもの布陣とは異なる5バックで臨んできた相手への対応に苦慮し、ドロー。

前線の守備が機能しないため、3バック(あるいは5バック)および1トップ2シャドーで戦う相手に対して守備が掛からないという課題もよく見られるようになっていました。
京都の4DF&4MFが後方に引いてブロックを形成する時、DF陣は相手の1トップ2シャドーを見ることに。この時、相手のワイドに位置する選手はサイドハーフが見ないといけないわけですが、相手のCBがサイドに開いて前に出てくると、対応が難しくなります。
本来は相手に対してもマッチアップのズレは発生しているので、押し込まれた時は2トップが守備に参加し、奪った後に攻撃で相手サイドを押し込んでしまうと混乱を相手に押し付け返せます。しかし、前線の守備に課題を抱えていた京都にとってはそれは難しい問題でもあったのがこの時期の課題でしたね。

雨中の試合で岐阜に勝利 して5位で前半戦を折り返し。
この試合のレビューでは、「5位で折り返したのは上出来。今後はいかに前半戦で生じていた課題を解決できるか」というように書きました。
課題というのは、上でも書いてきた好守のバランスであったり、3バックチームへの対応というのがあります。それに加え、この時見出せ始めていた「最適位置」に加えた変化を、特に攻撃面でどう付けていくのかといったこともありました。どれだけチームに幅を持たせられるかですね。

こういった課題への取り組みをチームは後半戦にかけてやっていくのですが、結果として実際のところはどうだったのでしょうか。
今季に限らず、昨季にも石丸監督は類似したトライをやってもいたのですが、その辺りの話はまた次回に。


やっぱり書き始めると長くなるよねw