2016シーズン振り返り・その2です。
前回の記事(シーズンまとめ・その1) では、昨季オフから全チームと対戦が一巡したところまでを書きました。
今回の記事では後半戦を取り上げます。



苦しみの夏、バリエーションを増やす試みを積極的に行うも


ゴールデンウィークから始まった快進撃にも陰りが見え始めていた前半戦終盤。
7月に入ってナイトゲームが中心となったものの、蒸し暑さでコンディションの調整が難しい時期にもなっていました。
負傷者も増え始めていて、毎年のことではありますけど過酷な試合が続いた夏になりました。

後半戦初戦のホーム群馬戦 では序盤から圧倒的に攻め込みながら、枠内シュートゼロのままスコアレスドロー。
続く徳島戦 では、3−4−2−1の布陣で戦う相手とのミスマッチに苦しんで敗戦。

なお、この試合からまた山瀬功治と堀米勇輝のサイドを入れ替えていて、左利きの堀米が右サイド、右利きの山瀬が左サイドを主に務めるようになります。
これはGW連戦の前までやっていたものと同じ形で、サイドハーフが中に入ってきて、細かいパスを使ったコンビネーションで中央突破を狙ったり、ミドルシュートを狙ったりというところを攻撃のポイントとしていきたい狙いがあったでしょう。
ただし、これはシーズン序盤戦で上手くいかなかった形でもありました。
守備がある程度整ったところで再度試していきたいというものだったでしょうか。また、サイドの裏に走り抜けることを得意とし、体も強いために起点となっていたイ・ヨンジェが負傷離脱していたことも関係しているかもしれません。

イ・ヨンジェだけでなく、負傷者やコンディション不良の選手が多く出ていて、第24節・讃岐戦 では國領一平がボランチとして初スタメンを飾り、中盤右サイドでは内田恭兵がスタメンとなるなどメンバー変更が多い中での試合になりました。
この試合でも攻撃の不具合というのは出ていたものの、チーム全体としての守備がしっかり統率されていたことが効いて完封勝利。

この時期の問題と言うか、チームとして解決していきたい課題として、いかに攻撃のバリエーションを増やしていくかといったものがありました。
讃岐戦でもそうですが、丁寧に守れば堅い試合運びをできるのは今季の京都の大きな特徴でした。
一方で引いた相手に対して有効な攻撃というものがなかなかできずにいましたので、中盤のサイド入れ替えだけでなく、全体のポジショニングを前掛かりにしてみることもありました。
第25節の山口戦 なんかはそういう試合で、ショートパスを主体とする攻撃力を武器とする山口に対して真っ向勝負を敢行。試合途中からは3バックへの転換も行うなど、様々なバランス変化を試みますが結果としてはドロー。

3バックへの転換は序盤戦でも頻繁にやっていましたし、勝利した讃岐戦でも終盤にやっていました。しかしまだまだ練られていない感じが強くて、石丸監督がこだわりを見せる割にはチームに勢いがつかないという状態でした。
さらに、交代策で変化をもたらすこともほとんどありませんでしたね。
元々の選手層や負傷者の影響もありましたけど、攻撃の幅自体がそれほどないこともあって、選手の組み合わせに頼る部分が大きかったこともあったでしょう。

前回の記事でも触れましたが、守備面では3バックおよび1トップ2シャドーで戦う相手への対応で後手を踏むことが多かったのも課題として挙げられます。
4−4−2で戦っている京都にとっては、布陣が噛み合わないために対応する必要があるのですが、ツートップの守備参加が限定的であるために後手を踏みやすいというのが原因でした。
第26節のホームC大阪戦 の前半も、今季初めて3バックの布陣を敷いたC大阪にいいように振り回されてしまいましたね。
後半に3ゴールを先行した後に追い付かれるという怒涛の展開に多い隠されがちですが、前半かなりやられてしまったというのは気掛かりなところでした。
なお、この試合ではイ・ヨンジェと山瀬が負傷から復帰したほか、広島から期限付き移籍してきた吉野恭平がいきなりスタメン出場を果たしています。彼に加え、夏の移籍期間では195センチの長身ブラジル人FW・キロスも加入しました。

一方、石櫃洋祐が膝を負傷し、しばらく離脱することにもなりました。
タイミングの良い攻め上がりと豊富な運動量でサイド攻撃に大きく貢献していた石櫃の離脱は大きく、ただでさえ苦労していた攻撃の形作りに影響を及ぼします。
東京Vには勝利 したものの、山形には攻めあぐねてスコアレスドロー

ただし、攻撃面では苦労していましたが、守備面ではしっかり戦えている試合が多かったのも確かです。
少ないチャンスを得点に結び付けることができれば、堅実に試合を終わらせる公算もある程度は立ちました。
そういう意味では、第29節の町田戦 は会心の試合でした。しぶとく丹念に守備を続け、同様に丁寧な守備組織を構築している町田を徐々にバラしていき、有田光希の一撃で1−0の勝利。
爆発的な得点力がない代わり、我慢を続けながらしぶとく戦うことができるというのは間違いなく良い特徴でした。
そう考えると、もう少し全体の守備をより改善していく方法があったんじゃないかというようにも感じていたのですが・・・。



中断期間のテストも有効策とはならずPO圏内を巡る争いへ


8月終わりから9月頭に掛けて天皇杯が行われ、リーグ戦が2週間中断されました。
この中断前後の対戦相手は首位・札幌と2位・松本。自動昇格を目指すのであれば、しっかり叩かなければならない相手との試合でしたね。

まず札幌とはスコアレスドロー
相手の強力な前線を警戒し、下畠翔吾と岩沼俊介を両ワイドに配した5バックで臨みました。
相変わらず前線の守備は曖昧でしたが、守備を得意とする選手を両ワイドに置いたこともあって、よく守れはしました。シーズン序盤に3バックをやった時と比べれば遥かに動きが整理されている印象も持てましたし。

中断期間の天皇杯では、コンディション調整も重視しながら出番の少なかった選手を起用し、底上げを狙っていきます。
特に、加古川との一回戦 ではFWが本職の沼大希と田村亮介を両サイドに配した布陣で戦いました。
FWの選手がサイドから斜めに前線へと飛び出していく形が狙いですが、同様の形は昨季も宮吉拓実を左サイドに置くことでやっていましたね。
石田雅俊がシーズン中に相模原へ期限付き移籍したこともあって、サイドハーフを本職とする選手がかなり少なかったので、そのポジションで使える選手を見極めるとともに、攻撃面での一つの形として考えていたのでしょう。
ただ、昨季の宮吉もそうでしたが、攻守においてサイドハーフに求められることが多すぎて、若い2人には過度な要求だった気もします。

続く2回戦のC大阪戦 はほぼベストに近いメンバーを並べ、リーグ戦への準備の色が強かったように見えました。
しかし、リーグ戦再開となる松本戦を前に出場停止者・負傷者が相次いでしまいます。
結局、松本戦 では札幌戦と同様に3バックを採用し、岩沼を右サイドで使い、ダニエル・ロビーニョをワントップに据える苦肉の策。
守備を重視し、少ないチャンスに賭けようという選択でしたが、開始早々に失点してしまったことでゲームプランは瓦解。
攻撃でも変化を付けることはできずに完封負け。
札幌、松本に1敗1分ということで自動昇格圏からも離されることに。
それどころか、勝ち点差7で7位につけていた横浜Cに敗戦 し、プレーオフ圏内を巡る争いに再び突入することに。

思うように勝ちが積み重ねられないことで焦りも相当あったでしょう。
横浜C戦もそうでしたが、北九州との試合 でもその焦りが前面に出てしまい、スコアレスドローに。
もちろんそういう状況に手をこまねいていたわけではなく、再び中盤のサイドを入れ替えてサイド攻撃の厚みを付けようとしたり、エスクデロが引き過ぎて中央が渋滞しないようにといった微調整を施してもいました。
結果がすぐ出るわけではなく、金沢にもスコアレスドロー
いろいろ手は打っていたのですが、結果に結びつかないもどかしさはかなりあったのではないでしょうか。



回帰策と割り切りで勢いを取り戻し、最上の流れで決戦へ臨むも


実ったのはアウェー千葉戦
この試合からイ・ヨンジェが本格復帰しましたが、序盤から前への志向を強く持ち、堀米の開始早々のゴールにも勢いづけられて3−0の快勝。
序盤から前にガンガン行ったのは、勝ち切れていないことから来る焦りにも後押しされていたと思いますが、早々に結果が付いてきたことによって良い方向に回ってくれました。

また、この試合からアンドレイと吉野がダブルボランチを組むように。
連戦や負傷の影響もあって、主に佐藤健太郎を含めた3人の組み合わせでダブルボランチを回していました。
それぞれに特徴があるのですが、どうにもしっくりこない感じもありました。
最も多かったのがアンドレイと佐藤のコンビでしたが、的確な散らしができる一方でスピードに自信がないためかバランスを重視して後方に引く傾向のある佐藤と、体格も良く前線に絡んでいける一方で細かなプレーを不得手とするアンドレイとでは、互いの距離が開きやすくなりがちに。
アンドレイを外すと高さの面で不安が残り、佐藤と吉野のコンビもメリットとデメリットがありました。
吉野はCBでもプレー可能でありつつ、東京V出身らしい足下のスキルを持っているので、細かなプレーを含めて前への志向を強く出せます。アンドレイをサポートする形で後方のバランスを見ながら、機を見て前に飛び出し、崩しに参加できる良さがありましたね。
吉野も前に出るので、アンドレイがよりバランスを意識し出したというメリットもあったでしょうか。
佐藤もその気になれば前で絡めるプレーヤーだとは思うのですが、ちょっと安全志向が強く出てしまっていたでしょうか・・・。この後、出番はほとんどなくなってしまいました。

続く岐阜戦 では、夏に膝を負傷した石櫃が脅威の復帰。
しかもラストプレーでPKを奪取し、勝利に貢献します。
さらに第37節・水戸戦 でも同様にラストプレーでPKを奪取し、勝ち点1をもぎ取ります。
試合自体は荒れたピッチに苦しんで低調なものでしたが、頼れるベテランSBの復帰により、詰まりがちだった右サイドの攻撃も活性化されてくる兆候が出ていました。
また、攻め手がない中でも、キロスを入れた力づくの放り込み策に慣れてきてもいて、最後にゴリ押しできるようにもなっていました。

攻撃パターンが少ないため、ベストメンバーが揃わないと質が落ち、また、ベストメンバーであっても運動量が落ちてくる終盤には低調になっていくのがよく見られた試合展開でした。
その中で、夏にキロスを獲得したのは正解だったと思います。
キロスにはもっとやってもらいたいところでしたが、時間のない中で新たな攻撃パターンを探る一方、あまり手を掛けずとも分かりやすい策を持っておくというものですからね。
新たな攻撃パターンは上記したように結局モノにならなかったですし、力づくの手段を用意しておいて良かったのではないでしょうか。
実際に岐阜戦や水戸戦は最終手段としてキロスを投入し、前に人数を掛けにいったからこそ実ったものですし。

イ・ヨンジェと石櫃の復帰、さらにはダニエル・ロビーニョが右サイドハーフとして出色の出来を見せてくれたこともあり、終盤に勢いを取り戻すことができました。
ひとつ上の順位に付けていた岡山との大一番でも快勝
続く清水戦 では結果的に大敗したものの、前半はかなり質の高い試合を展開。
この時期の清水はリーグで最も充実したチームだったと思いますし、最終的に9連勝で自動昇格を逆転で勝ち取ったことからもそれは明らか。
そういう相手に対して質の高い試合を展開でき、それだけでなく些細なミスやズレから一気にやられてことによって、チーム内に良い意味での自信と緊張感が芽生えた気がします。
より高いレベルでのプレーを志向するようになったと思いますし、残り3戦で2勝を挙げました。
プレーオフ進出を決めた緩みからか、第41節・愛媛戦 はかなり低調でしたが、第40節・熊本戦第42節・長崎戦 は概ね良い内容でしたからね。

5位でシーズンを終え、プレーオフに進出。
負傷者も全員戻り、メンバーのやり繰りに苦労する必要もありませんでしたし、ゴールデンウィーク以降の好調期に見出していた最適な位置関係をベースに、吉野のボランチ起用とダニエル・ロビーニョのサイドハーフ起用でバージョンアップも果たしました。
戦績としても上り調子で、清水戦を経たことによるシビアさも意識できていたはずで、考え得るうちで最上の状態だったと思います。
今までのプレーオフ進出時とは全く異なる手応えのある状況でしたし、正直なところ、「今度こそ」と思っていました。

しかし、雨に祟られた不運もあり、また、C大阪の高い個人能力が集中した状況で発揮されたこともあって、一歩及ばずドロー
この結果、来季もJ2で戦うことになりました。
一発勝負というものの、シーズン中の課題がそのまま出たようなところもあった試合でしたので、「不運」では済まされない面は当然あります。
ただそれでもやはり・・・という悔しさはありますね。
それだけで終わらせてはいけないんでしょうけど。
 


次回は今季やろうとしたサッカーと、それに関してできたこと・できなかったことを戦力的な面から洗い出しつつ、石丸清隆監督について思うことを書こうと思います。