2018シーズン振り返りの第3弾、最終回です。

第1弾では布部陽功体制時、第2弾ではボスコ・ジュロヴスキ監督になってからをまとめました。

今回はそもそもの低迷を招いたチーム作りについて見ていこうと思います。

 

 

そもそもどういう戦い方をクラブはイメージしていたのか

 

一年間非常にしんどいシーズンだったわけですけど、監督の指導能力を考慮しても、そもそもやりたいサッカーと現有戦力の特徴とがマッチしていなかった印象が強いです。

結局のところ、どういう戦い方をしていきたいのかという明確なイメージがないまま監督を選び、その監督の志向と無関係に選手を集めたようにしか思えません。

これは昨季もそうでしたし、結果としてプレーオフ進出までこぎつけることができた一昨年も怪しかったところ。さらにその前も・・・と2014年頃から年々酷くなっているような印象です。

毎年このシーズン振り返り記事でも同じようなことを言っている気がしますし、飽きるくらい・・・を通り越してもう諦めの境地にすら達しようとしています。

 

 

今季はシーズン当初の選手数が例年に比べても少なかったので、なるべく多くの選手が試合に絡めなければ厳しい状況でした。

その中でも中盤の守備を担うポジションを本職とする選手としては、新加入のマティアス・カセラスと若い荻野広大くらいしか見当たりませんでした。

シーズン前にも、ここで攻守両面では働ける選手がいないと厳しいだろうと書いていましたが、嫌な方向に当たってしまいましたね。

 

最も期待されていたカセラスは負傷がちで計算が立たず。そうでなくとも、出場した際のプレーを見るととても守備を任せられる選手とは思えませんでしたが・・・。

荻野もキャンプ中に脱臼を負ってから、癖になってしまったのか度々離脱していました(シーズン中に宮崎へ期限付き移籍)。シーズン序盤に宮城雅史が良い動きを見せて可能性を感じさせましたが、負傷がちだったためか出場機会は少なめに終わってしまったのも残念でした。

その煽りを受けてなのか、エスクデロ競飛王をアンカーで起用するなど、守備面を度外視したような無謀とも言える起用も目立ちましたね。

ボール回しを重視して保持率を上げることで守備をごまかそうとしたのか、フィジカルの強さだけでなんとかなると踏んだのか・・・。選手がいないというのも大きな理由だったでしょうけれど、守備面はおろか攻撃面でもさほど有効とは言えませんでした。

 

夏の補強期間で庄司悦大を獲得できたことで、以降は攻撃は幾分スムーズになりましたが、守備は結局改善されず。

誰が監督をやろうとも中盤の守備を成り立たせるのが難しいメンバー構成だったことに誰も疑問を挟まなかったのでしょうか。

疑問は持っていてもそれを言い出せるような人間がいなかったのかもしれないし、あまりに楽観的な考えのもとで動いていたのか。

どちらもあるでしょうし、獲得しようとしていた選手から敬遠されてしまったというところもあるのかもしれません。

こればかりは外から見ているだけでは分からない話なので、掘り下げることもできないです。

ただそれにしても、毎年のようにシーズン前から明らかに手薄に見えるポジションがあり、全体のバランスを保てずに苦しむのが目立つというのは、明らかに全体を見た強化システムが整っていないことを示しています。

それに慣れつつあるということこそ怖いことかもしれません。

 

 

不振の責任を取る形で、2018年限りで山中大輔社長と小島卓強化部長が退任することになりました。

ここまで書いてきた通り、監督を含めてしっかり戦える戦力を整えることができなかったのは明白で、中心となって動いていた小島強化部長の退任は当然でしょうか。

一般的に、チーム強化の担当者と監督が強い関係性を持っていることは悪いことではありません。

チームの強化に向けて共同で作業しなければならないものですからね。

一面で強化に関わる者としては監督や選手を正当に評価することも大事です。

その点で、どう見ても京都の形は正常ではなかったでしょう。

前年に結果を出せなかった布部監督に対して「格上」としか思えないボスコをコーチとして据え付けるなんて、普通では考えられませんからね。「監督の育成」みたいなことも言っていましたが、トップチームでやる話ではないです。布部監督に実績を付けさせたかったのか・・・。

関係の強い監督を据えて成績を残し、自分の手柄としたかったというところなのかもしれません。「新人監督を抜擢して好成績」みたいな。

 

また、プレー面で存在感を発揮していたとはいえ、コンディション面に常に不安を抱えていた田中マルクス闘莉王は明らかに特別扱いを受けていましたね。試合中のウォーミングアップもほとんどしていなかったり、シーズン中で試合が重なっている間でも深夜に東京でテレビ出演していたり・・・。
スポンサーやあまりサッカーに興味のない人にとっても闘莉王の知名度は抜群ですし、強化部長との関係の深さもあってクラブとしても容認してしまう背景になっていた気はします。
この点、例えば菅野孝憲や山瀬功治などの最近所属していたベテラン選手よりも格段に違うのは確かなので、そういった側面も考えないといけない部分はあるんでしょうね。大黒将志がようやく匹敵するレベルでしょうか。
外部からやってきた人間だからこそ、余計に関係の強い選手・監督に頼ったというのはあるのかもしれませんが・・・そういった人間に権限を与えて、好き勝手させていた山中社長の罪は重いでしょう。
 
こういったクラブ運営に関わるチグハグさを見ていると、選手獲得以上に社員さんを含めたチームスタッフの強化に問題をきたすのではないかという不安が起こってきます。
新人監督が続いているのは、結局引き受け手がいないからという理由かもしれませんし。

それでも来てくれているスタッフや選手がいるわけですし、また、今年の高校3年生の学年をはじめとしてアカデミーが一定の結果を出しているうちにしっかりと立て直していきたいところですね。

 

 

今なお続くアカデミーへの不安

 

アカデミーの話に移りますが、ユースが好成績を残した一方で昇格組の田村亮介と沼大希の契約満了が発表され、今季はレンタルで外に出ていた永島悠史と山田元気の完全移籍が決まりました。

田村と沼は、選手数が少なかった今季のチームの中でもまとまった出場時間を得ることができませんでした。

低迷した今季を受けた人員整理の煽りを食ったようにも見えますが、二人ともトップ昇格してからそれぞれの強みを活かす術を持たないままだった印象が強いです。

田村の場合はスピード、沼の場合はDF裏への抜け出しかなと思いますが、そういった場面をなかなか自分で創り出せないという。

小柄なアタッカーで、プロレベルでやっていくためにはフィジカル面で足りないところがある。そこを上げていきながら、自分の特徴を発揮できるように、ポジショニングであったりボールコントロールであったりをトレーニングや試合で磨いていく。

そういったサイクルが当然必要ですが、一方で結果を出すことを求められるトップチームの中でどこまで時間を割けるかどうかがポイントです。

もちろん本人の自覚が足りないところがあったり、能力的にしんどかったりというのも大いにあっただろうと思いますが、似た特質を有する選手を短いスパンでアカデミーから複数トップ昇格させて、どうこうできる見込みまでしっかりと持っていたのかのは疑問です。

 

3年ほど前、奥川雅也が海外移籍した際にアカデミーに関して感じていた懸念を書きました。

あの時から本質的な問題は変わっていないのではないか、と。

昇格実績にこだわり、プロレベルで活躍する選手を育てるところまで考えていないのではという不安ですね。

判で押したように2年目にレンタルで出すことも気になりますし。外で出場機会が得られれば儲けもののような。

繰り返しですけど、本人の努力や特質は重要です。必ずしも成功例ばかりになるわけではありませんし、想定以上に苦しむ選手もいるでしょう。将来を正確に見通すなんてできませんから。

しかし、例えば大学進学と天秤にかけてどちらがいいのかなど、どこまで議論を尽くし、選手にも考えさせることができているんでしょうか。

同年代の中での能力が高いからと言って、年代間のバランスを見ずにハードルを下げていないか。

見る側も意識しないといけないですけど、他チームへの移籍も悪いことではありません。

高卒の時点で他チームでプロ契約というのも当然ありです。年齢の近い他選手との関係で出場機会などは大きく影響を受けますから。

今季も4人の選手が昇格することになりましたが、京都はどこまで彼らの将来を考えているんでしょうか。

そういったところを含めてこそ、育成クラブと言えるはずなのですが・・・。

 

 

来季に向けて

 

小島強化部長だけでなく、山中社長も退任しました。

就任時には前任の今井浩志氏の責任を糾弾し、威勢のいいことを並べていましたが、結局のところ「口だけ」になってしまいましたね。

ただ、社長が変わったからといって大きく変わるのかというと、正直疑問があります。

現状の体制では親会社である京セラから異動してくることになりますが、どうしてもサッカークラブの運営という点で手慣れているわけではありません。ですので社長職に就く方にとっては、今回の小島強化部長のようにサッカー界に繋がりの強い人物の意見を参考にしていくしかないというのが実際のところだったのでしょう。

しかしそういった中でも来季の準備はしないといけません。

 

来季に向けては、6月に新たにできた役職であるスポーツダイレクター(SD)に就任した野見山秀樹氏を中心に動く形でしょうか。

また、昨年強化本部長という役職にあった細川浩三氏も残っていますので、おそらく共同で進めながらやっているのでしょう。もちろん小島氏が手掛けていたものの引き継ぎなんかもあるでしょうけれど。

野見山SDは京セラの人間でありながら、ガンバ大阪でのプロ選手経験もある方ですので、これまで京セラから来ていた人とは異なり、サッカー界にも繋がりのある方と言えそうです。

こういった独特の背景を生かして、京セラとの関係をしっかり作りながら、これまでとは違った変化をつけていけるといいのですが・・・。
 

既に来季の監督として、東海社会人1部のFC. ISE-SHIMAの監督や総監督などを務めていた中田一三氏の就任が発表されています。

今のところ就任を要請した経緯は不明ですが、布部監督に続いてJトップチームでの指揮経験がない指導者ということで全く先が読めません。どんなサッカーをするのかもわからないですから。

さらにゲルト・エンゲルス氏や實好礼忠氏といったS級ライセンスを有するコーチが就任するということで、どういった役割分担でやっていくのかもわかりません。

エンゲルスコーチは京都や浦和のトップチームで指揮を執っていますし、實好コーチは今季はJ3のガンバU-23で監督を務めていましたので、プロクラブの監督という意味では中田監督よりも経験があるということになります。

どうしても今季の布部−ボスコ体制に重なるものが出てきてしまいますので、今度こそうまく回していけるのかどうかが注目です。

 

異なる点としては、Twitterなんかを見ていると中田監督がかなりクセの強い、一筋縄ではいかない人物でありそうなことでしょうか(笑)

ここまでの閉塞感を考えると、ガラッと変わったそういうノリもありなんじゃないかと個人的には思っていますけど。

クラブ上層部の言いなりになるだけではないという意味でもね。

もちろん野見山SDを中心にクラブが体質を変えようとしている意識の現れであるとも思いたいのですが・・・。

来季こそ、今度こそ建て直しのキッカケになる一年になってほしいですね。

 

 

そんなところでシーズンまとめを終えたいと思います。

選手の個人評はまたそのうち・・・。

ひとまず、今季もお疲れ様でした。

お読みいただいていた方は、今年もお付き合い頂いてありがとうございました。

来季も・・・やるんじゃないかな。マイペースに。