絶対貧困/石井光太

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BOP関係2冊目。
ネクスト・マーケットに続き、絶対貧困。
そしてムハマド・ユヌス自伝もとりあえず読む予定。

BOPに小さいころから関心があったものの、知識も経験もなかったので、まずは本から攻めてみることにしました。

ネクスト・マーケットはBOP(ボトムオブザピラミッド)のポテンシャルとどうすればビジネスとしてうまくいくかについて徹底的に突き詰めた本だったけど、今回の絶対貧困は、世界最貧民の目線にたった本。

ネクストくんが陽としたら、絶対貧困くんは陰の対極の位置となる。
1日1ドル未満で生活する絶対貧困と呼ばれる人々の生活、習慣、価値観を著者の石井光太氏は、おもしろおかしく、講義形式でわかりやすく説く。

内容は大きく分けて
第一部 スラム編
第二部 路上生活編
第三部 売春編
の三部構成です。

<本書で使用されている主なデータ>
・世界の半数の人たちが1日2ドル以下で暮らしている。
・途上国における都市住民の3分の1がスラム暮らし。
・南アフリカの失業率30%、ジンバブエ80%、ネパール40%
・生後1か月以内の死亡者率、アフガンとシエラレオネで約6%(日本は0.2%)
・5歳未満児死亡率、アフガンとシエラレオネで2.5%以上(日本は0.4%)
・先進国とBOPの生涯年収は300倍の差。
・世界の30人に1人が貧困などにより豊かな国を求めて国を出る。
・中国人口13億人に対して売春婦は2000万人、インド10億人に対して1000万人。
・日本でのエイズ発症者は12.6%が外国人。

でも貧困という問題は、定量的に物事を述べるだけでは、本質はつかめない。

つまり国際開発論のような最大公約数としての統計を出し、問題解決の糸口をつかむことだけでは、いけないのだ。ネクストくんでも触れているように、現地で生きる人々の目線、価値観、ニーズがわかって、初めてスタート地点に立てるというものである。日本人はしょうもないメディアの偏光レンズを通した報道により、正しくない見方をする人がたくさんいるので、まずは知ることが必要だよね。

ここでは今まで知らなかったこと、誤解したいたことにのみ触れていきたいと思います。

①スラム
・スラムは必要悪
厳格なイスラム国家はポルノやお酒はNGです。清く正しくがモットーです。
でも人間、そんなきれいに生きられるわけがありません。みんなが聖人じゃないし。
そこでスラムが密造酒、売春、賭博などをやっており、欲望のはけ口となってる。
聖なる町と俗なるスラムというすみ分けがちゃんとできているのである。

・スラムなのに、貧しいのに肥満が多い。
あっちでは階級によって食生活が違うのが当たり前。スラム食は火や油を使い、一般庶民が食べないような部位を、鮮度の悪いものを、保存期間を長くしながら、調理して、食べる。
お金がない彼らはカロリーベースを満たすために、フライドチキンばかり食べ、ビタミンなどはサプリメントで済ませる。これにより、先進国の贅沢な肥満ではなく、貧困によって生まれる早死にしやすい肥満となってしまう。


②路上生活者
・人類みな兄弟
路上では一人で生きていくことは困難なので、数世帯でコミュニティを作る。そこでは血のつながりは関係なく、みんなが両親であり、兄弟であり、兄や姉が小さな弟と妹のお守りをする。コミュニティ内で多くのものを共有し、大人のおもちゃとかまで共有しちゃったりする。

・重婚しちゃう
法律の対象とならない、切り離された存在なので、結婚自体が法的拘束もなく、恋人の延長のようなもの。なので現地妻などが数人いたりする。しかし注目すべきは、女性の生活苦に同情して結婚してあげること。厳格なムスリムの下では、結婚しなければ、女性に触れること、支援することすらできないので、結婚という名前だけいただき、恵んであげたりする。

・ストリートチルドレンの悲惨さ
日本メディアでは、彼らが懸命に生き、お涙ちょーだいてきな番組はやっているが、それはある側面で、事実はもっと残酷である。ストリートチルドレンはほとんど少年たちのグループであるが、彼らは数日に一回、大人の男どもに強姦される。寂しさのあまりグループみんなでシンナーをやる。臓器売買、人身売買の格好の餌食となる。戦争に駆り出され、少年兵として前線に送り込まれる。以上のことから、彼らの中で、まともに、かつ長生きする奴はほとんどいない。つまりみんな早死するのが当たり前なのだ。


③売春
・人身売買による強制売春の被害者は見つけることが難しいくらい少ない。
確かに絶対にそういう人たちはいるにしても、圧倒的に自分たちの生活を支えるために、一心不乱に働いている人のほうが多く、誇りをもってやっている人も少なくない。売春をすることで、スラムでは不可能だった子供の教育をしている親もいた。もう世界では、売春=悪ではなく、合法化しているところもあるし、売春=必要悪or産業と前向きにとらえている。ただイスラム国家では、細々とやっている。

・戦争や災害の裏では、必ず女性が身体を売っている事実がある。
家計を支えるためには、支援や募金では不足であり、補うために、隣町や隣国に行って、身体を売って、送金する。考えれば確かにわかるけど、戦争難民の売春婦は数えられないほどいる。んで結構な率でHIVに感染してしまったりする。


④共通にいえること
・不衛生、慢性的な栄養失調または偏った栄養素の摂取などにより感染症にかかる確率が非常に高い。また科学的根拠のない迷信などを信じ、さらに感染率が高まっている。
HIVは処女や処男?、つまり少女や少年とすれば、治るという噂を鵜呑みにし、村の大半の人がHIVに感染してしまったり、ココナッツオイルを男性の性器に打てば、大きくなるという噂を聞きつけ、みんなで不衛生な注射を打ちまわし、HIVなどの感染症にかかったり。ギャグでやってるのではなく、彼らは本気でやっているから…もうつっこみようもない。
また堕胎させるときでも中絶手術は莫大な費用がかかるため、おなかを殴る、冷たい水の中に1週間入り続ける、膣の中に毒を入れるなどの呪術師や薬師による治療(魔術?)があったりして、頻繁な死亡事故が起こっている。

・マフィアや犯罪組織の存在
物乞いで驚くことが、健常者よりも障害者のほうが圧倒的に稼ぎがいいこと。重度の障害者は路上のカリスマである。マフィアなどの悪い奴らは、ストリートチルドレンなどの子供を拉致り、目をえぐり、肌を焼き、四肢を切り落として、路上で物乞いさせる。他にも人身売買、ドラックの販売、臓器売買、違法売春の斡旋などをしており、スラムや路上者などを利用している。

・本当に困っている人は非合法のものを扱っている。
何にしてもそうだが、悪いもんは悪いといって、政府が規制しても逆に困る人たちがあふれかえるだけであるということ。本当に困っている人は、お金がなかったり、不法労働者であったり、HIVに感染してたりと…悪い奴らがやっているとこでしか雇ってもらえないのだ。だから規制していくのではなく、法整備、セーフティーネット、教育を確立していかなければならない。


もうなんか不条理すぎて、どうしたらいいかわかんなくなっちゃいました。
早くビルゲイツにならないと…。さてさてでは次はユヌスにいっちゃいましょー。