超帝国・超紛争・超民主主義
こんな未来が本当に待ち受けているのか?

21世紀の歴史――未来の人類から見た世界/ジャック・アタリ

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著者はヨーロッパ復興開発銀行のい初代総裁にして経済学者、思想家、作家。
サルコジ大統領も首ったけの、金融危機も予言していたジャック・アタリ氏である。

内容は、これまでの歴史を振り返り、その法則性から未来を導いたもの。
2060年あたりまで幅広い分野での未来を描いている。

未来を描くことは可能なのか?
という問いに対して可能であるとアタリ氏は言う。
人口から未来を予想することは可能であるが、歴史の法則性からより正確に最も可能性のある未来を導き出すといった手法だ。

重要なポイント、データ、歴史から学ぶものなどに触れておくと、

<日本の21世紀の課題>
・中国からベトナムにかけての東アジア地域に、調和を重視した環境を作り出せ。
・日本国内に共同体意識を呼び起こせ。
・自由な独創性を育成すること。
・巨大な港湾や金融市場を整備せよ。
・日本企業の収益性を大幅に改善せよ。
・労働市場の柔軟性をうながせ。
・移民を受け入れろ。
・市民に対して新たな知識を公平に授けよ。
・未来のテクノロジーを習得せよ。
・地政学的思考を念入りに構築し、必要となる同盟関係を構築せよ。

<西洋での欲望に対する違い>
アジアでは、自らの欲望から自由になることを望む一方、西洋では欲望を実現するための自由を手に入れることを望んだ。(仏陀、孔子、老子などを見ればわかる。)

<今後の世界>
ドル基軸から多極化。各大陸ごとに1つ2つの市場が主要な勢力となる。
2025年、日本の経済力は世界の5位となり、アジアの成功モデルは韓国となる。
2035年より前にアメリカは終焉を迎える。
それから超帝国超紛争が起こり、2060年ごろに超民主主義が勝利する。
※超帝国…民主主義なき市場。地球規模となった市場に世界秩序は国家を越えて統一される。
※超紛争…すべての紛争・兵器・悪が集結するような、人類を壊滅させるような紛争。
※超民主主義…世界はひとつの村であり、豊かさは可能であり、人類全員がさらに健康で長生きすることが可能であり、他人の幸せが自分にとって有益であるような社会。


その注目すべき過程を見てみると…

情報開示は義務化され、保険業界と娯楽業界が権力を持ち、人々はサイボーグ化、クローン化までしてしまうという。食品や衣類の開発から生産までのサイクルが1か月から4日に短縮される。これまでタブーであったさまざまな性が容認される。廃車が微生物に分解される。テレビはオーダーメイド化されて、紙メディアは2030年までにヴァーチャル化する。必要な知識が72日ごとに倍増する。個人の自由・幸せが最も重要視され、他人の幸せは自分にとっての有益ではなくなる。企業の主な資産はブランド。マイクロファイナンスがこれまでになく巨大な市場となる。自殺の企画まで行う企業、愛の破局まで保険にしてしまう企業が出てくるなどなど。

このような世界が本当に数十年後に来るだろうか。
特に重要なのが、超帝国→超紛争→超民主主義の流れ。
1.アメリカ中心の世界が終わりを告げると、国家のラインが曖昧になり、弱体化し、国家が介在しない市場民主主義が始まる。
2.アメリカが利益を追求し、サブプライムローンによる金融危機を引き起こしたように、市場民主主義の暴走を誰にも止められず、限界まで利益を追求する。
3.限界を超える=自分の幸せのみを追求した結果、周りの人々、地域、国と争いが起こる。
4.資源を求め、水を求め、地域での権力を求め、世界各地で血みどろの争いが起こる。
5.最大級の緊張が起こり、人類は二つの道を迫られる。超紛争か?超民主主義か?

→超紛争の場合
最先端兵器、核兵器の使用など、人類はその幕を閉じる。

→超民主主義の場合
世界はひとつの村であり、豊かさは可能であり、人類全員がさらに健康で長生きすることが可能であり、他人の幸せが自分にとって有益であるような社会となる。相互依存による相乗効果により、信じられないような技術革新、価値観、また世界政府・世界共通通貨まで生まれることもありうる。本当の意味での世界平和が訪れる・・・。



うーん。ほんまかいなーと思ってしまった僕。
ただマルクスだってまだ資本家と労働階級が生まれる前から、彼らについて思考をめぐらせ、資本論を綴ったんだから、アタリ氏のおっしゃることも数多くの未来のひとつであることは間違いないだろう。

人類は、常に空想世界であったものが、想像以上のスピードで現実のものとなることを経験している。
それはないっしょーって言われていたことがどれだけ覆されたことだろうか。

様々な分野から多くのことをインプットし、常に未来を見据えていれば、きっと誰もが未来を垣間見れるんだよね。目先の利益にとらわれず、時代の潮流をつかんでいかなければ。


下記さえ見たら本は買わなくてもたぶんいいですよー。

ジャック・アタリ氏の1回目のインタビュー。60分程度。


ジャック・アタリ氏の2回目のインタビュー。60分程度。