マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった/ジョン ウッド


ちょっと久々にブックレビューとか書いてみる。
いっぱいいい本を読んでるが、たまにはちゃんと共有してみる。

社会的に認められた地位、高収入、美人な彼女、マイクロソフトを捨ててまで途上国の子供たちに教育を届けようと社会起業家になったのが、著者であるジョン・ウッドだ。ネパールを仕事で訪れた彼は、教育水準の低さに驚きを受ける。訪れた学校全てに図書館どころか、本すらない。

教育を充実させたくても貧しくてできない環境を改善したくて、NPO界のマイクロソフトになるようにと、Room to readを立ち上げた。本を届けた。図書館を作った。学校も作った。さらにはコンピュータ教室まで作った。

驚くことなかれ、1992年12月設立以来から2007年6月までに、英語児童書を140万冊以上、学校を286校、図書館を3540か所、コンピュータ教室と語学教室を117か所という実績。

この実績に、ジョンの全てがある。彼は他の慈善団体とは一線を画しているのだ。

まず真面目な話からいくと…
彼の慈善活動のビジネスモデルは斬新なもので注目を浴び、急成長を遂げている。
①当たり前だけど、活動成果や出費の内訳を詳細な数字で報告する。
②人件費などの運営コストを抑え、活動に最大限投資する。
③地域社会も資金や労働力を提供し、住民が主役となってプロジェクトを定着させる。
④地元の優秀なスタッフを集め、地元の文化に合わせたプロジェクトを育てる。

僕が特に注目したところは…彼の資金集めと、事業の特性にある。

<資金集め>

以前は大富豪のもてあました金を社会に還元させるものだった。しかしそれでは継続性は確保できず、事業としては不安定。しかし今は自分の見てきた途上国の貧しさに何かできることはないかと思う人は世界中に多くいる。ジョンのような素晴らしい人材が10人いるよりも、週に数時間ずつ貢献できる人が数千人必要なんだ。クラウドソーシングみたいに、余った時間を誰かのために使いたいって人をうまく使ったのが、世界中での拠点作り。世界中のちょっとした貢献がしたい人たちにたいして、募金活動を大々的に展開している。マジでキャンペーンがうめぇ。

<事業の特性>

本書の言葉を借りれば、「援助を成功させる唯一の方法は、地元の住民にも労働力と少額の資金を提供させること。そうでなければ援助は無償の贈り物にすぎず、当人たちに失うものがないから、プロジェクトの価値を誰も認めようとしない」という。地域の住民たちに自分たちが作ったものと意識させることで、インフラを整えた後は彼らにゆだねられる。ひとところに一度の支援で済み、どんどん拡大させていけるのだ。また寄付したお金がどこで使われてるかを明確にしているのも支援者の喜びにつながり、素敵すぎる(RTRの協力者の中に以前、別団体で寄付したお金がどこにいくかわからないという人が多くいた。)。

そしてその全ての根底にあるのは、彼のマイクロソフトでの経験だ。
資金獲得のために売り込み、事業を慈善ではなくビジネスとあくまで捉えてることに加え、MSの精神が要所要所で大きく作用していた。
「大きく行け、それができなければ家に帰れ」
「個人は攻撃してはいけないが、アイディアは攻撃していい」


ビッグマウスで注目を集めた。できるかも微妙なのにイエスと言って考えながら創っていった。その過程でアイディアをたたける風土を構築し、優秀な仲間を引き入れて毎度毎度なんとか成功させていく。

むちゃくちゃだけど、カッコいい。どんなにぼろ雑巾になっても、毎日仕事が楽しくてたまらない彼の姿を見て・・・感動でした。こりゃ一読する価値あり。もしも教育やBOPに興味がおありならば。