フランスでの事件について、パレスチナ・エルサレムの旧市街に暮らし続けている
ホストファミリーのおとうさんが、憤りながら話してくれました。

「マイ、ニュース見たか? フランスでの事件を見たか?
 私は夜中の1時に、中継で見てたんだ。まったくひどいことだ。

 犯人はムスリムだって言うが、彼は断じて正しいムスリムじゃない。 
 市民に対する暴力はいけないって、コーランに書いてあるんだから。
 無辜の人々を殺してしまったら、それは正しい行いじゃないんだ。
 捕虜の兵士にすら敬意を払うべきだって、イスラームは教えているのに。

 シリアで起こっていることだって、同じことだ。
 彼ら(ダーイシュ:イスラム国)は、ムスリムじゃないんだよ。」



「私は知っているけれど、これでまた世界中で、
 ムスリムへの偏見と差別が広がるんじゃないかって、心配なの」
そう返したところ、おとうさんは真面目な顔をして言いました。

「そうだ、またこれで差別が広がるんだよ。
 たった一部の間違った奴らの行いのせいで……。」



* * *


ホストファミリーの皆は敬虔なムスリム。暴力とは無縁で、
私は彼らと一緒に夜な夜な、お茶とフルーツをいただきながら、
たくさんの鉢植えと小鳥に囲まれた素敵なバルコニーで時間を過ごしています。

涼しい風が通り抜け、近所からは楽しそうな家族の笑い声。
教会の鐘の音や、モスクからの祈りの呼びかけが時折響く、
穏やかな場所でのひととき。
親戚や隣人たちの来訪。
「何買ったの?」「今日はどうだった?」と交わし合う、
とりとめのないようでいて、人と人とのつながりを育てていくようなお喋り。

それは本当に、文字通りピースフルな時間です。
こんな暮らしが誰かに奪われませんように。