ラオウの真意を悟り、興奮冷めやらぬ中、
橋杭岩を背に、那智の滝へ車で向かいました。
車で走ること1時間。
『ラオウ』の『ラ』の字すら頭の中から薄らぎ、
その記憶(力)が危ぶまれ始めた頃、
夢か現か幻か、
那智の山中に入っていくと霧が出始め、
幽玄の世界に入っていきました。
山道を進み、7時頃に飛龍神社に着きました。
この奥へ進めばいよいよ那智の滝です。
石の階段をしばらく下って行くと、
小さな境内には社務所や護摩釜などが見え始めました。
早朝なので観光客はほとんどいません。
階段を下りきり、前方を見上げれば、
息を呑むような光景が広がっていました。
那智大滝です。
水しぶきがこの距離まで降りかかり、
僕の坊主頭の上には無数の水玉ができ、
身も心も頭も清められているようでした。
服やかばんが濡れていっても全然気にならず、
ただただ呆然と眺めていました。
ゴォーーー
という滝の音が脳裏まで響いていました。