ロスト・バイ・マイパワー | 妄想のはけ口

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説明不要

季節が冬に移り変わろうとするある日のこと、

特異な能力を持つ二人の少女がとある道端で話をしていた。

一人はグリーンのショートヘアで、少し長い前髪で片目が隠れた少女。
名を「フウカ」と言う。

もう一人はアイスブルーのセミロングで、後ろ髪を肩にかけ、赤い眼鏡をかけた少女。
名を「ハルカ」という。


今回は、ハルカがいかにこのフウカと出会い、それまでに何があったのかを
お話しよう。


2011年11月某日

「なあ・・」

「・・・・」

「なあ・・」

「・・・・」

「なあって!」

「わっ?!」

歩きもってずっと考え事をしていたハルカを心配したのか、
フウカが少し大きめの声をかける。

「な・・何・・」
すかさず聞き返すハルカ。

するとフウカは
「さっきからずっと考え事してるけどさあ、何かあったの?
・・まさか・・あたしにすら話せない何かを・・?」
と、少々からかいながら、ハルカが今何を考えていたのかを聞き出そうとする。


その問いかけにハルカは一瞬黙り込み、
真剣な表情で答える。

「少し、昔のことを思い出したの・・」

その言葉を聞くと、少しにやけていたフウカも表情を元に戻す。
「昔、ってまさか・・」

ハルカは、少し色白の、自らの手を見つめ、自分の思い出したことが何なのかを告げる。
「そう、私とあなたが出会ったあの日、何が起きたのか、あの時あの部屋で起こったことを
 思い出したのよ・・」

フウカは怖いものが嫌いで、今からハルカが話すこともそれとなく怖い気がしたから
「やめろ・・話すなハルカ・・」
と呟こうとしたのだが、
ハルカの唯一無二の、最高の親友としてどんな血塗られたことでも
知っておかなければならないような気がして、おもわずその言葉を飲み込んでしまった。

少し悲しげな表情をし、ゆっくりと
自らの凍てつく記憶を話し始めるハルカ。

フウカは、恐る恐る、彼女の過去を聞きはじめた



200X年 初夏
「あっついなぁ~・・」
そのときのハルカは、ごく普通の小学校に通う
ごく普通の女の子であった。

それなりに勉強もでき、運動もでき、
またそれなりに、友人にも恵まれた。

今青い下敷きで自分を扇ぎながらハルカに放しかけたのもその一人で、
ハルカはそのこのことを「ユキちゃん」と呼んだ。

「そうだねぇ・・まだ初夏なのに・・」
何気ない日常会話の中で、ぐてぇっと机に突っ伏すハルカ。
どうでもいいことだがこのときはまだ、眼鏡をしていなかった。

それを見かねたユキちゃんは、TVで覚えたのかヘンなサイトで覚えたのかは知らないが
なにやら怪しげな呪文を唱え始める。
「○×△◇・・○×・・」

それを突っ伏したまま聞いたハルカは、クスッと笑いながら
「ユキちゃん、暑さでヘンになった?」
と問う。

刹那、ユキちゃんの手がハルカの頬に触れる。
普段ならよくあることなのだが、今回ばかりはハルカも目を丸めて驚いた。

「つっ・・冷たい!」
ユキちゃんの手のひらが、まるで氷のように冷たくなっているのだ。

ユキちゃんは自慢げに、自らに目覚めた能力について語る。
「えへへ~、すごいでしょ。何か朝起きたら使えるようになっててさ・・
 何なのかはわからないけどまぁ、こんな暑い日には便利だよね~この力。」

自慢げに説明するユキちゃんを、ハルカはただただ丸い目で見続けた。

このとき、ハルカにもこの能力が目覚めようとしていたことを
ユキちゃんを含め、クラスメイト全員が知る由もなかった。


それから何ヶ月かたったある日、
空は雲ひとつない快晴で、熱中症患者が何人も出るような恐ろしい猛暑日だった。

この日ユキちゃんはクラスの取り組みがあるか何かで、
珍しくハルカ一人で下校することとなった。

道の向こうに逃げ水が見える帰り道で、
ヒートアップしたハルカの脳は、ふと、ユキちゃんの能力について考えていた。

ユキちゃんって、やっぱりすごいなあ・・
アレからさらに冷たくできるようになったのかな・・
自分にも、あんな力があるのかな・・

ぼんやりそんなことを考えていると、なんだか自分の周りが一瞬寒くなったような気がした。
「?!」
あわてて辺りを見回すハルカだが、
先ほどと変わらず、道の向こうには逃げ水が見えていた・・

なんだ、幻か・・

そう思ったハルカは、滴り落ちる汗をぬぐいながら
一人、家に帰っていった。

そのころ、ユキちゃんはというと・・

「うっは、お前ホント冷たいなww」
「お前、死人みたいだなww」
「ユキだけに、雪女だなお前ww」
「雪女テラワロスwwwwww」

一緒に作業をしていたクラスの男子がユキちゃんの冷たく変化する体に気づき、
ものめずらしさから彼女の周りによってたかって、
彼女のことをいびり始めた。

もちろん、今日起きたこのことをハルカが知ることはなかった。

翌日、ハルカとユキちゃんは足並みそろえて、いつものように教室に入った。

いつもなら、二人が一言「おはよう」というと、
クラスのみんなが「おはよう」と返してくるところだが、

今日のところは何かおかしい。
みんななぜかユキちゃんに冷たい視線を向けて(中には怖いものを見るような目で見るやつもいた)
挨拶にも答えようとしなかった。

「・・・何?なんかあったの?」
何も知らないハルカがあどけない表情で、
うつむいたユキちゃんとそのユキちゃんに冷たい視線を向けるクラスメイトに聞く。

すると、クラスで一番の物好きが
「ハルカ、そいつ化け物だったんだぜ?」
物好きに続き、それを取り巻くほかの男子生徒が
「化け物と登校するハルカもバケモンなんじゃね?ww」
と茶化し始める。

すると、クラス全体が「化け物、化け物、化け物」と繰り返すようになり
ついには化け物コールなるものまで始まる。

「ちょっと・・やめてよみんな!」
必死でコールを止めようとするハルカだが、

一度火のついたコールはとどまることを知らず、
容赦なく二人を追い詰めた。
絶望しきった二人を見て、回りのものは余計面白がり

「バケモン出てけ!」などといいながら鉛筆や消しゴム。
さらには先のとがったものまで投げつけてきた。その中にあった硬いものが、運悪くハルカの
眼球に直撃し、ハルカは視力の大半を失ってしまった・・

どうして?みんな仲良かったのに・・
どうして?私たちをこんな目に・・

どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?
どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?

童心の中に宿った悲しき疑問は、一点の怒り、憎しみを抱いた。

こんな・・二人で茶化されるくらいならこんなクラス・・
かりそめの友情しか生まれないこんなクラス・・

壊してしまえばいいんだ・・!!

その一点の怒り、憎しみがハルカの中で爆発したとき、
あたりは一変、無情な寒さに覆われて何もかもが凍り付いていた。

黒板や机、チョークさえも真っ白に凍り付いていた。
もちろん、自分たちを茶化してきたクラスメイトたちも・・

「・・?ユキちゃん?どこ・・・?」
殆ど失った視力のせいで、今自分に、クラスメイトに何が起こったのか理解できないままでいたハルカは、真っ先にユキちゃんの存在を探し始めた。

さっきまで、すぐ横にいたはずのユキちゃんが、忽然と姿を消している。
不意に、不安感を覚えたハルカは、おぼつかない足でユキちゃんを探し続けた。

「ユキちゃん・・・どこ・・? ユキちゃん・・」
いくらユキちゃんと呼んでも、返事ひとつ帰ってこない。

もしかして、ユキちゃんもクラスメイトたちみたいに・・・

そう思うと、もう歩くことなんてできなくなった。
よくみると、あの教室だけじゃなく
学校全体が真っ白に凍っている。

途方にくれたハルカは、静かに涙を流した。

ユキちゃんもきっと死んだんだ・・
どうせ、クラスメイトとすごした楽しい日々も結局はうそだったんだ・・
あぁ・・なんで自分だけ生き残ったんだろう・・・

そう思うと、泣くこと自体、呆然と立ち尽くすこと自体、
ばかばかしく思えて、
白く凍りついた床に、力なく倒れこんだ。

そのまま、ハルカは少しばかり眠りについた。
超低温下における、人間の生理的な反射である。

しばらく眠りについて、次に目を覚ましたときには
ある一人の女の子が自分を抱えていて・・


2011年11月某日
「われながら、ヘンなこと思い出しちゃった・・」
そういうハルカの目には、少しばかり涙が浮かんでいた。

一方フウカは、少し考えていた。

「あの時、何もかも凍りついた床に倒れていた女の子って・・」

あの時、襲い来る冷気に耐え切れたものは一人としていなかったが、
フウカだけはかろうじて、本能的に風を操り、冷気の直撃を免れていた。

その後、何もかも変わり果てた校内を歩いていて、真っ白に霜をかぶった女の子を一人見つけ、
校外へと一緒に脱出していた。

その女の子が、今目の前にいるハルカ本人ではなかったのかと、
あまり考え事をしない単純なフウカの脳は推測していた・・


その後、少しばかり二人を見つめていた少女がいたのは、
誰も知らなかった。


「ハルカ・・?」


~~~~~~~~~~~~~

登場人物
ハルカ・・アイスブルーのセミロングで、後ろ髪を肩にかけ、
     赤い逆ナイロールの眼鏡をかけたクールな少女。
     冷気を操る、フリーズキネシスという能力の使い手。
     以前は裸眼で、髪も短かったらしい。
     以前クラスメイト全員に茶化されまくったことをきっかけに、
     性格の明るさを失い、フウカ以外の人間とつるむ事を拒む。

フウカ・・グリーンのショートヘアで、少し長めの前髪で片目が隠れており
     活発な動きをするためかスカートの下に短パンをはく活発で少々壊れ気味の少女。
     風を操る、ブロウキネシスという能力を使うことができる。
     どうやら以前はハルカと同じ小学校に通っていたらしく、
     学校全体が冷気に襲われたときに、ハルカであろう少女を助け出した。
     少し単純で、ハルカにゾッコン。

ユキちゃん・・ハルカが小学校で知り合った、彼女の親友。
       水色の短髪で、毛先が跳ねぎみ。
       ある日突然、冷気を操る能力(=フリーズキネシス)に覚醒し、
       そのことをハルカに自慢するが、それが思わぬ事態を招くことに。
       学校全体が冷気に襲われたと同時に、ハルカの前から姿を消すが・・?


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えぇ・・書きましたよ・・
書いてしまいましたよ(意味不

前々から書こうと思っていたハルカ&フウカコンビ誕生秘話!(黙

この話のせいで、みなさまの抱くハルカ像、フウカ像が変わってしまったら申し訳ありません・・;;

一応ダークな話になる予定でしたが、ここまでとは・・!(爆

ユキちゃんを登場させよう。と考え付いたのはつい最近の話です。
フウカより前の、ハルカの最初の親友ってわけです。

もちろん「ユキちゃん」はハルカが勝手につけたあだ名で、
下の名前は「ユキノ」といいます。
どことなくハルカににた雰囲気を持った女の子です・・

最初ユキちゃんを生死不明にするつもりはありませんでしたが、
書いてるうちになぜか・・生死不明に・・;;

まぁ、最後の一文読んだら生きてるか死んでるか、大方予想つきますよね!(オイ


まぁハルカ、フウカに興味ある人に読んでいただければ幸いです・・
興味ない人も一応読んでみ?(爆
長々とお粗末さまでございました。;;