B型肝炎治療用の飲み薬に、
ガンの転移を抑える可能性があるとするマウスでの研究結果を、
九州大の研究チームがまとめた。
ヒトでの臨床試験(治験)で有効性や安全性を確かめ、
5年程度で公的医療保険の適用を目指すという。
論文が3日付の米医学研究誌に掲載される。
ガン細胞の周囲には、
ガン細胞の成長を促す細胞の集まりがあり、
その集まりの拡大にはCCL2というたんぱく質がかかわっている。
研究チームは、
そのたんぱく質の働きを抑える、
プロパゲルマニウムというB型肝炎治療薬に、
ガンの転移を抑える効果があるかどうかを調べるため、
マウスで実験をした。
薬を与えたマウスは与えていないマウスと比べ、
ガン細胞の転移する量が、
乳ガンで約10分の1、
皮膚ガンの一種のメラノーマで約4分の1だったという。
<朝日新聞デジタル 1月3日(土)5時3分配信>
ガンを転移しやすくするたんぱく質を、
世界で初めて突き止めた、
との研究成果を、
中山敬一・九州大教授(分子医科学)らのチームが、
2日の米科学誌、
『 ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション 』 に発表した。
既存の肝炎治療薬に、
このたんぱく質の働きを妨げて転移を抑える効果があることも、
マウスの実験で確かめた。
研究チームは、
「ヒトへの有効性は今後の治験(臨床試験)を待つ必要があるが、
副作用が少ない薬なので期待が持てる」
と話す。
国内で年間40万人近くが死亡するガンは、
進行すると他の臓器などに転移して治療が難しくなる。
ガン細胞を標的にした薬の開発が進むが、
転移を抑える目的の薬はなかった。
チームは、
ガンが転移すると、
細胞のまわりに「がんニッチ」と呼ばれる正常な細胞の集団ができ、
ガン細胞の成長を助けることに注目。
まず、
乳ガン患者の血液を分析し、
特定のたんぱく質が少ない人はガンを再発しやすいことを確かめた。
さらに、
このたんぱく質をなくしたマウスにガン細胞を移植したところ、
がんニッチに正常細胞を呼び寄せる信号を出す別のたんぱく質が体内で増え、
ガンの転移が早まることが分かった。
信号を出すたんぱく質は、
B型肝炎ウイルスが炎症を起こす仕組みにも関係している。
そこで慢性肝炎治療薬として使われている、
「セロシオン(一般名プロパゲルマニウム)」
をマウスに投与すると、
乳ガンの転移はほぼゼロに、
悪性の皮膚ガン(メラノーマ)の転移は3分の1以下に抑えられたという。
中山教授は、
「国に承認されるまで早くて5年程度かかる。
使用はそれまで待ってほしい。
ガンの摘出手術に前後して服用を始めれば、
再発や転移を防げるはずだ」
と話す。