「内緒にしておいて」ということだったので、しばらく様子を見ていたけれど、とうとうお店のホームページに退店のご案内が掲載された。昨日の夜に店長に「今日で辞める」と言ったらしい。馴染み客にはひととおり伝え終わったのだろうか。私がここに通い始めてからもたくさん辞められたセラピストさんがいましたが、入店の紹介はあっても退店のご案内が掲載されたことはなかった。このお店ではきわめて異例のことだろう。
 仕事で世田谷区に行くことがあって、沿線上にあるここにお昼休みを利用して立ち寄ってみた。
聞くと今日は夜まで予約がいっぱい明日もすでに3時間コースが2本予約が入っているということだった。
ほかのセラピストさんではまずありえない予約状況・・・。
 店長には「特別に指名料いらないから」とほかのセラピストさんを勧められたが、仕事中であることと、最後までお気に入りの彼女を見送ってあげたい気持ちもあり、ほかのセラピストに頼む気がしなかった。受付で店長とあれこれ話をしていると待機室の話し声が良く聞こえる。女の子の話は耳が痛くなることが多い。お客のうわさ、店長の悪口・・・、お店の雰囲気も変わったということだろうか、私もここから卒業する日も近いかもしれない。

 彼女のすばらしさは、そのかわいいルックスもさることながら、何よりも接客の気持ちよさだろう。
施術の丁寧さ、気持ちのこもった接客、お客にあわせて接するので男がはっとするツボを心得ている。
若い子でこれだけしっかりしてるは周りにはいない。
 メンズエステでは、男女の駆け引き、過剰サービスを楽しみに来るお客もいるだろうし、実際指名を取りたくて過剰サービス、色情営業する子もいる中、彼女はそれが皆無だった。それゆえに太い馴染み客がついていると私は思っている。
 このお店では若い方なのに、もっとも信頼されているし売り上げも一番なのだ。No.1だから大切にされる、No.1だからほかの子に妬まれたり陰口もあるだろう。受付をしていてつらい経験もしている。店長はいまひとつ頼りない人なので、彼女からすれば安心して仕事ができなかったのかもしれない。
 そんな子が先日あんなことを言ったので、先日私はショックを受けた。時間をおいても決意は変わらなかったようだ。たぶん、新しいお店に移ったら、すごく苦労することになるだろう。
 「私ここが初めてのお店で何も知らないから。ここにいるとみんな優しくしてくれるから甘えちゃってだめになる。私のことを誰も知らない世界でもっとがんばりたいの」

心配そうな私の顔を見て

「私は大丈夫。落ち着いたら連絡するから・・・しばらくは来ちゃだめよ。」

 でも彼女なら持ち前の頑張りで乗り越えられるだろう。
 この年頃の女性はほんとちょっとしたことから大きく変わっていく。
 初めて施術してもらった時の初々しい女の子から、すでに彼女は大人の女性に変わっていた・・・