この日の私は山手線に揺られていた。

 改装の終えたばかりの恵比寿のお店に行こうと思い、恵比寿駅で電車から降りた。

 予約しているわけでもなく思いつきなので駅から電話をすると店長が出た。ここはまだ3回ほどしか訪問していなかった。

「すみません。今から大丈夫でしょうか?」

 と低調にお伺いしてみると、残念ながらすぐには入れず、50分待ちとのことだった。

「それだと今日は時間がないです。お店改装されたとお伺いしたのですが、見学に行ってもいいでしょうか」

 と話すと

「あっ、もしかして○○さん?」

 わからないように話したのだけどバレテしまったようだ。

「うふふ、私みたいなオバサンの顔を見に来てもしょうがないでしょ(笑)」

と軽くあしらわれてしまった。

 お店のブログを見ると彼女の熱烈なファンと彼女に嫌われた客の嫌がらせのカキコミが繰り広げられている。接客術はかなりよい方だが、30歳のオトナの色気が強くて私ごときではとても太刀打ちできないお方である。

彼女に会うのはまたの機会にしよう。

 かわりに新規オープンのお店に非通知で電話してみた。若い男性が電話口に出た。

その道で知られる大手グループのお店であり、電話応対はきわめて良好だった。非通知にもかかわらず丁寧にお店のことサービス内容を教えてくれた。

 店の女性のレベルとサービスに自信を持っているのだろう、

「ウチに来られるのはいろいろ行かれてからでかまいませんよ」

 とまで言われた。「電話応対の良いお店は「社員」教育もよい」と私は思っているので、働く女の子は安心できよう。だが、一度囲い込まれた彼女たちが本当に幸せになれるのだろうか。いつでも引き返せる場所で留まり更なる深みにはまらないでほしい。

 結局この日は電話で聞くだけにとどめることにして来訪は見送った。