人気セラピストの彼女の施術を受けに深夜車を走らせた。
 正直ここまで予約がとりづらくなってしまったのは私のようなファンがいるだけでなく、お店も最後の稼ぎとHPにアピールが高いためと思われる。
 丁寧な接客、かわいさ、施術技術どれもとってもこの店でも上位(バランスがよく私にはNo.1だが)とは思えるが、すべてが最高とまでは言えない。それぞれ上には上がいる。ここはそれを楽しめるそんなお店だ。
 いつものとおり、施術は彼女のお任せとした。
 施術がはじまり、私のいつもと違う反応に、彼女も

「あれ、私下手になっちゃったのかな。オイルの滑らかさが違う・・・」

 我慢して受け続けてもらおうかと思ったが、長いエステ通いの中で今日はじめて施術を止めさせた。
「今日は調子が悪いみたいだからやめよう。ここに座って話でもしようか・・・」

 と施術台に座ってもらった。
 再会してからうすうす感じてはいたが、マッサージ技術・気持ちの低下が見られる。たくさんの施術をこなし疲れていることは否めない。移籍の件もあるし不安になっているのかもしれない。

 ただ私は彼女のファンだから甘やかしてきてしまったのかもしれない。ラクに稼ぐことを覚えてしまったのかもしれない。私の知らない3ヶ月の間に彼女に変化があったのだろう。
 クレームめいた話やお説教はしないで、「きのう何かあったの」から始まり、
技術のこと、辞める経緯、新しい店での内容、将来やりたいこと・・・・できるだけ話してもらうようにした。
 私も仕事への考え方、いろんな思いを話した。
本当はこの仕事を彼女がやりたいわけじゃないことも私は知っている。
 そして私はいままでなぜ彼女だけを指名しているのか、その理由を告げた。
彼女のその強い気持ちと本質(真面目さ・やさしさ・暖かさ)が変わらなければ、この世界から卒業するまで応援してあげることを伝えた。
 彼女は私に新しいお店を教えてくれた。
「お店のスタッフに私の紹介と伝えて」と。

 たぶん私は彼女の馴染み客の一人としては合格なのだろうが、それ以上の関係は望まれていないようだ。
 彼女はお世話になったこの店の誰にも行き先を告げず(良客には伝えているだろうが)、ここを去るのだろう。
 それにしても虚しい・・・帰りの車のなかで一人考えていた。外は激しい雨・・・何も出来ないに自分に少し苛立った。