塩野七生さん 「ギリシア人の物語」完結 衆愚政に堕しないために ...

 

 

 

 

 

 

 

ギリシア人の物語 III 新しき力 | 塩野 七生 |本 | 通販 | Amazon

 

 

 

 

 

 

 

 

塩野七生は、古代ギリシア人の物語をアレクサンドロス(アレキサンダー大王)で

筆を置き、どうやら作家から引退したようだ。

 

 

アレキサンダーは、ぜひ読みたかったので

仕方なく全部購入して読んだ。

 

 

アレキサンダーが32歳でなくなって以降

内部分裂が起きるところも面白いのだが、高齢ゆえやむを得ない。

 

 

岩明均という漫画家が、ヒストリエを書いていて

主人公が、エウメネス

 

 

アレキサンダー、その高名な配下の武将たち

彼独特の描き方で、非常に面白い。

 

 

それもあって、典型的な司馬史観の彼女が

アレキサンダー後のヘレニズム世界をどう描くのか興味があった。

 

 

歴史家と小説家は、大きく異なる。

小説家は所詮、自分で勝手に描いた物語なのに対して

 

 

歴史家は、史実に忠実でなければいけないため

面白みに欠けてしまい、一般読者層がついてこない。

 

 

しかし、歴史はどうやっても誰が書いても面白い時期があって

どうしようもない地点があり、この時には歴史家でも十二分に面白い。

 

 

小説家は、面白ければいいので、史実から離れることも多く

全面的に、史実として信用はできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういった点で、塩野七生は、司馬遼太郎の忠実な弟子といったところだろう。

ただ司馬の場合は、自分でちゃんと取材もせず書くことが多かった。

 

 

その点は、塩野七生とは異なり

彼女は、たぶん彼女なりに、ちゃんと追っかけている。

 

 

ローマ史の研究者は夥しいほどいるので

それをかいつまんだり、優れた小説の書き手の文章をそのまま引用したりしていた。

 

 

彼女の成功は、ひとえに面白い時代を描いた点と

地中海世界の歴史という、なかなか日本人には描けない世界を描いた点にあるだろう

 

 

日本人研究者も数多くいるのだが、小説家ではないので面白みに欠け

その点をついたところに大成功のワケがある。

 

 

彼女がローマ史をモノにできたのは、イタリア在住で

ラテン語にもっとも近いイタリア語に強かったから

 

 

英語圏の人間でも、ラテン語の習得はなかなかできない模様

イタリア語習得者ならではといった感じがする。

 

 

英語のドラマで、オカルトものは呪文がだいたいラテン語

英語圏の人たちは、それを見て、ラテン語には辟易している。

 

 

 

塩野七生は、ラテン語文化圏の歴史を面白おかしく日本にもたらしたが

良かった面もあるし、悪い点もかなりある。

 

 

別に研究書でなくとも、ギボンなんかで十分だったが

日本人向けに、司馬史観でローマ史を語るのが面白かった。

 

 

悪かった点は、あまりにも多いが、一番悪かった点は

改革至上主義者であった点だろう。

 

 

やたら改革、改革と唱えるが、それは歴史に残る偉大な人物たちだから

可能だったワケで、そうおいそれとそんな偉大な人物がポンポンと出てはこない。

 

 

それなのに、日本にも改革至上主義を持ち込んで

こんなにも、改革は素晴らしいのだと喧伝されてしまった。

 

 

その結果、日本という国家はボロボロになり

日本経済、日本社会すべておかしくなっている。

 

 

他にも、バイリンガル(2か国の言語習得)をやたら進めている。

そりゃ、塩野七生のように親の脛をかじりまくって

 

 

イタリアで何年も遊んで暮らせるようなご身分の人ならいいが

だいたいの人はそんな親を持てはしない。

 

 

安倍さんは、2年留学したが、ホームシックに陥って

毎日、実家に電話ばかりして、英語の習得どころか

 

 

あまりの電話代に、親に帰ってこいと言われる始末

「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎました」

 

 

と言い放った首相が、そんなもの

日本人の多くにとって、表音文字の国の言語の習得は、はっきり言って不可能に近い

 

 

 

塩野七生のエッセイを読んで、えらい老害になったなぁと思わされた。

自分が長年、主張してきたグローバル化万歳が崩れ去ったのに

 

 

それを認められず、イタリアの税金が高い、医療費が高いと喚き

そりゃ、あんたの主張通り、グローバル化でイタリアがおかしくなっただけじゃん

 

 

と突っ込みたくなった人は、自分を含め少なくないだろう。

新自由主義の行き着く先が、EUであって

 

 

イタリアの税金が高いのは、中央銀行と通貨発行権を失ったら

通貨発行や公債という政府の資金調達手段が失われるから

 

 

税でしか公費を賄えないから、高くなるのは当たり前じゃん

それを先導してきたのが、あんたでしょ、自業自得としか言えんと思ってしまった。

 

 

 

 

 

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