管理物件の滞納入居者ですが、粛々と契約解除と立ち退きへの法的手段を進めていました。
通算3か月以上の家賃滞納があった場合、まずは、「催告・契約解除通知書」を確実に相手に届くようにしその日が証拠として残るように内容証明郵便で送付しました。内容は次のような構成になっています(内容は少しぼかしてあります)。
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(1) 次の約定で賃貸物件を契約開始日に引き渡した。
①賃料
②支払期日
③賃貸期間
④解除事由
賃貸人が賃料を累計○か月分滞納したとき(賃貸借契約書の記載事項)
(2) しかし賃借人は○月から○月まで賃料支払いを遅滞したため保証契約に基づき保証会社は毎月立替払いした。現時点において○○万円が未払いとなっている。
(3) 賃借人の○か月にもわたる賃料支払遅滞行為は本賃貸借契約の解除事由を構成し、賃借人・賃貸人間の賃貸借契約の信頼関係を破壊せしめる。
(4) よって賃貸人は賃借人に対し、本通知書をもって保証会社が保証債務として支払った○○万円を賃料相当額○○万円全額を保証会社に対して到達後5日以内に支払うよう催告するとともに、期限が経過したときは信頼関係が破綻したものとして改めて通知する事なく期限の経過をもって賃貸借契約を解除する。期限の経過までに賃料支払日が到来する場合は上記の他賃料1か月分を賃貸人に支払う。
(5) 期限経過後も未払賃料全額を支払わない、物件を明け渡さない時は訴訟その他法的手段を実行する。
(6) 本件については賃貸人ではなく全て弁護士に連絡する。
賃貸人、弁護士、賃借人の名称
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そして催告しても期日内に支払いはない場合は明け渡し訴訟に進みます。訴状の内容はこんな感じです。
同じく少しぼかしてあり、内容的にも契約解除通知書と重複していますが、支払いがなく明け渡し要求する旨と過去の判例が関連事情として追記されています。
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原告:賃貸人
原告訴訟代理人:弁護士
被告:賃借人
訴訟物の価額:○○○万円
印紙額:○万円
(1) 主旨
①被告は原告に対し物件を明け渡せ
②訴訟費用は被告の負担とする
と判決ならびに仮執行の宣言を求める。
(2) 原因
1. 次の約定で賃貸物件を契約開始日に引き渡した。
①賃料
②支払期日
③賃貸期間
④解除事由
賃貸人が賃料を累計○か月分滞納したとき(賃貸借契約書の記載事項)
2. 被告は保証会社との間で賃料債務の保証委託契約を締結、原告は保証会社との間で書面にて連帯保証契約が成立した。
3. しかし賃借人は○月から○月まで賃料支払いを遅滞したため保証契約に基づき保証会社は毎月立替払いした。現時点において○○万円が未払いとなっている。賃借人の○か月にもわたる賃料支払遅滞行為は本賃貸借契約の解除事由を構成し、賃借人・賃貸人間の賃貸借契約の信頼関係を破壊せしめる。
4. そこで原告は被告に対し、保証会社が原告に支払った賃料相当額○○万円全額を保証会社に対して到達後5日以内に支払うよう催告するとともに、期限が経過したときは信頼関係が破綻したものとして改めて通知する事なく期限の経過をもって賃貸借契約を解除する旨の意思表示を内容証明郵便により発したところ、意思表示は○月○日に被告に到達した。
5. しかし被告は○○万円を支払う事なく期限が経過した。そのため○年○月○日をもって賃貸借契約は信頼関係が破綻したものとして解除されたことになるが、被告はその後も現在に至るまで本物件を占有している。
6. よって被告は原告に対し、賃貸借契約の終了に基づく本物件の明け渡しを求める。
(3) 関連事情
保証会社による代位弁済と賃貸借契約の債務不履行の関係について判示した判決として大阪高裁平成25年(ネ)第2227号事件がある(なお、当該判決は上告されているが(事件番号:平成26年(オ )第303号 、平成26年 (受)第391号 )、 当該上告は棄却され、上告受理申立ても受理されなかった。)。
同判決は、本件と同様に保証会社が賃貸人に対して賃借人が支払っていなかった賃料を保証会社が弁済しているから、賃借人に賃料等の不払はないとの賃借人による主張に対して、
「本件保証委託契約のような賃貸借保証委託契約は、保証会社が賃借人の賃貸人に対する賃料支払債務を保証し、賃借人が賃料の支払を怠った場合に、保証会社が保証限度額内で賃貸人にこれを支払うこととするものであり、これにより、賃貸人にとっては安定確実な賃料収受を可能とし、賃借人にとっても容易に賃借が可能になるという利益をもたらすものであると考えられる。しかし、賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の支払は代位弁済であって、賃借人による賃料の支払ではないから、賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するに当たり、保証会社による代位弁済の事実を考慮することは相当でない。なぜなら、保証会社の保証はあくまでも保証委託契約に基づく保証の履行であって、これにより、賃借人の賃料の不払という事実に消長を来すものではなく、ひいてはこれによる賃貸借契約の解除原因事実の発生という事態を妨げるものではないことは明らかである」
と判示しており、保証会社による代位弁済を、賃貸人と賃借人間における賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するにあたり考慮することは相当でない旨判断している。本件においても上記判決と同様の理由により、賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するにあたり考慮することは相当でないというべきであり、原告による本件賃貸借契約解除の効力が認められることは明らかである。
証拠方法 証拠説明書(1)記載のとおり
附属書類 (以下略)
物件目録 (以下略)
別紙図面
証拠説明書(1):全部事項証明書、賃貸借契約書、電話聴取書、保証委託契約書、催告及び契約解除通知書、郵便物等配達証明書
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上記にあるように、保証会社が払っているから滞納ではないと滞納居座り借主がトンデモ主張をした事案もあるらしいですが当然却下され、賃料支払いがない以上100%勝てる裁判です。保証会社側が弁護士を通して行っているので手間や費用の負担はなく、滞納でも競売を含めてここまで行ったケースは経験がなく非常に勉強になっています。
勝訴し明け渡しの判決が出ると次は強制執行の申し立てで追い出しにかかります。懸念点があるとしたら、
・賃借人とは別の第三者に占有させて妨害する
・退去までに建物を破損・汚損させる→リフォームが発生
などでしょうか、引き続き経緯を見ていきたいと思います。今はストップがかかっていますが、この被告とは一度どこかで対面しておきたいところです。