昨日はホテルの傘をかりた
長崎は今日も雨だった
明日はコンビニで傘を買おう
長崎に来たのは32年振りである
32年という年月は、たぶん、かなりの年月なのだろう
今日、路面電車のなかで泣いていた女の子は
きっとおばさんになっている
僕の鉄分を満たせてくれた白いカモメだって、
ずいぶんと古い車両になっているだろう。
32年後、僕は生きているだろうか?
生きていたとしてもだ、
学会にはもう来ていないだろう
飼いつづけていたハハエなら
320世代は経過しているかな
場合によっては、誰の目にもハエに見えない
生き物になりうる時間だと思う。
32年前、僕らは、夜半に長崎駅についた
宿はなく、
駅前にあった連れ込み旅館に泊まった。
畳の間に風呂桶が、むき出しのまま
床の間の上に乗っかっていて、配水管が通っていた。
さびれた、その宿に泊まった僕らは、
そして、
皿うどんを食べ、グラバー邸を見て、
ちゃぽんを食べた。
それが長崎の想い出だ。
そして、再び夜になると
長崎駅始発の予行列車に乗り込んだ。
算段眠車にゆられて、僕らは東へと向かったのだ。