お昼近くに親から届け物のお遣いを頼まれて目黒へ行った。
用事を済ませてタクシーで帰ろうと思ったけど、少し散歩
していこうと思い、道路沿いを歩くことにした。

しばらく歩いていると一軒のカレー屋が目に入った。
中を覗いてみるとカウンターだけの狭い店で客の姿が一名
確認できる。

ここで昼食を済ませようと思い、外に貼ってあるメニューを
ながめる。
「ナスと生姜のカレー」というものがあったので店内に入り
それを注文したところ、「はい?それはありません」という
返事が。
食材を切らすなどの理由で無いのかと思い訊ねると、元々
そんな物はメニューに存在しないとのこと。

外に貼り出してあるメニューのことを伝えると店主は表に出て
私が注文したものが書かれた部分を手にして戻ってきた。
「誰だろう、こんな悪戯したのは」
改めて見せてもらうと店主が貼り出したメニューと同じフォント
でプリントした物を本物のメニューの上から貼ったものだった。

「ずいぶん凝った悪戯ですよね」と私が口にしたとき、横にいた
先客が笑ったような気がした。
まぁいいやと思い、ポークカレーを注文した。
先客と店主は知り合いらしく、世間話をしている。

「じゃあまた」と先客が席を立ち、店主に代金を渡し、店のドアを出る
ときに「さっきのあれね、俺が貼ったんだよ!あははは」と笑いながら
飛び出していった。
ポカーンとしてる私に店主が「あいつね、高校時代の友達なんだけど
たまに変なことするんだよね」と苦笑いしていた。
なるほど、そういうことか。
この程度のことなら知り合い同士の悪戯ということでべつに怒る気も
沸かないけど、皆さんは真似しないようにね。