食べ終わると、らんはおでかけの準備をする、と。
僕の手を引いて、自分の部屋へ連れて行った。
「ね?ママ、どれがいいかなぁ?」
ベッドの上にお気に入りだろうワンピースが数枚、置かれていた。
「こっちはおリボンが好きなの。
こっちのはすきないろだし。
これはハートがかわいいでしょ?
こっちはかっこいいでしょ?」
鏡の前でワンピースをとっかえひっかえ。
こんなちっちゃいのにオシャレだなぁ。
僕の意見を聞いてるようで、結局聞かずに自分で決めた。
髪も可愛く結ってもらって、ワンピースと同じような色のリボンまで付けてた。
「ね?ママ、らん、かわいい?」
「うん、可愛い。世界で一番可愛いよ」
らんは嬉しそうに僕にしがみついた。
「じゅんくんも かわいいっていってくれるかな?」
「んふふ、言ってくれるといいね?」
らんはお気に入りのバッグも持って迎えの車に載った。
バッグを大事そうに胸にぎゅっと抱いていた。
道が混んでなければ事務所は家から15分程度。
らんが僕らの仕事を見学に来るのは初めてじゃない。
あらためて、見学のときのおやくそくを確認した。
スタッフさんとかに迷惑かけるわけにはいかないからね。
らんはちゃんと覚えていた。
疲れた時、飽きた時のための別部屋の準備もある。
今日、一日、楽しく過ごしてもらいたい。
テーマパークの代わりにはならないけど・・・
事務所に着くと、もう、カズと潤くんは来ていた。
らんをお願いすると、僕はまず、足首と肩の調子を診てもらうことにした。
テーピングが解かれて、足首を、そして右肩を触れられる。
「腫れは引いてますね。熱も持ってない。
ちょっと動かします。痛みがあったら教えてください」
ゆっくりと動かされる。
足首が外側を向いたときだけ、ちょっと痛みを感じる。
肩は肘を後ろに引いたときに。
またテーピングを巻き直してもらった。
ガッツリ踊るのは本番の1回だけ、と念を押された。
らんの待つ部屋に戻ると、もうみんな揃っていた。