らんはこの頃かららんは指しゃぶりをするようになった。
小さい頃からそんな癖、なかったのに。
でも・・・指しゃぶりするのはおやくそくを守らなかった時だけだった。
そんな時には、僕の機嫌を窺う様子も見せるようになった。
登園しぶりも始まった。
僕が保育園に送っていくと、絶対に離れない。
保育園の入り口で癇癪を起こす。
他の誰かに送りを頼んだとしても、保育園に行くことを悟られると離れない。
そのうちに僕から片時も離れたがらないようになってしまった。
仕事の時はどうしようもなく、シッターさんに協力してもらったけど。
らんには嘘をつくような形で家を出ることも多くなって。
悪循環だった。
みんなでどうにかしようと考えて、いろんな手段を試みてみたけど・・・
何をやってもダメで。
手詰まりだった。
3歳児健診で保健師さんに相談したら、心理相談を勧められた。
この状況をどうにかする方法を教えてもらえるかもしれない、って。
藁にもすがる思いで心理相談を受けた。
でもらんは先生の前に出ても一言もしゃべろうとしなかった。
しょうがないから、僕から先生に状況を話すことに。
らんは別室で保育士さんに見てもらってて、ママだけで、って言われたけど。
保育士さんが迎えに来て、別室に連れて行かれる時。
いつものように大泣きしてしがみついてきた。
その様子を心理の先生はじっと見ていた。
らんがドアの向こうに消えると、心理の先生は僕ににっこりと笑いかけた。
「お茶とコーヒーどちらになさいますか?」
「コーヒーで・・・」
紙コップに入ったコーヒーを僕の目の前に置いた。
自分の前に置いたコップから一口飲むと、僕にも目線で勧めてくれる。
紙コップから一口飲むと・・・じんわりとコーヒーが染みわたる。
ゆっくりコーヒー飲めたなんて・・・何ヶ月ぶりだろう?
らんがいると、全然ゆっくりできない。
味わうなんて・・・とてもできなかった。
「今日はよく来てくださいました。
ママ、大変でしたね。
頑張ってきましたね」
ポロっと涙が溢れた。
僕は助けてください、と何回も何回も繰り返して。
口ごもりながら、らんの家での様子を話した。
お子さんとお話できてないので、ハッキリとは言えませんが、の前置きで。
母子分離不安かもしれない、と言われた。
根底にあるのは不安。
自分が愛されてるのか?を試しているのかもしれない、と。
そんな子に言葉で何を言っても状況を変えるのは難しい。
できることはただひたすら甘えさせてあげることだけです。
時間が解決することもあるけれど、必ず解決するとも言えない。
ショックだった。