寒さ厳しい季節、心あたたまる本を読みました。

 

著者は高橋恵さんです。

 

🔶高橋恵さんの「志」

高橋さんは、サニーサイドアップというPR会社の創業者です。中野にある小さなマンションからスタートし、現在、サニーサイドアップは一部上場企業になっています。

 

サニーサイドアップは元サッカー日本代表の中田英寿選手のPRを手がけた有名な会社です。ですので、高橋さんを「上場企業の創業者」というビジネスライクな見方をするのは、当然のことです。

 

ただ、この本を読みますと、「上場企業の創業者」という見方は少し脇において、高橋さんの魅力あふれた人間性から生み出された「おせっかい」という古くて新しい優れた思想に、もっとスポットライトが当たるべきだと感じました。

 

高橋さんは、著書の「おわり」でその志を、とてもわかりやすく書いています。

 

「おせっかいな人が、日本中に小さな幸せを撒き散らし、いつの日か、物質的な豊かさだけではなく、心の豊かさにあふれる、この国がそんなやさしい国になればと願います。そしていつの日か、世界中が「やさしいおせっかい」であふれれば、きっと世界は平和になると信じて、私はこれからもおせっかいを続けていくことでしょう」幸せを呼ぶ 「おせっかい」のススメより)

 

「おせっかい」という言葉は、普段、あまりいい意味では使われませんね。

 

「あの人はおせっかいだから…」とか「あのおせっかいには…」と書くと、次に続く言葉は、ネガティブなものが連想されます。

 

「余計な御世話を焼くこと」

 

これが、通常私たちが「おせっかい」を使う時の意味です。


でも、高橋さんがいうのは、「やさしいおせっかい」です。

 

「やさしいおせっかい」は、人の縁を生み心の豊かさを引き寄せ、それが広がっていけば、世界平和にもつながっていく。それが高橋さんの考える「おせっかい」です。とてもポジティブな考え方です。

 

🔶節介ってどんな意味?

 

ところで、「おせっかい」とは「お節介」と書きますね。

 

では、「節介」て何だろう、と思いませんか?

 

そこで辞書を引きますと、「節介」には、こんな意味もありました。

 

「節操を堅く守り、世俗に流されないこと。」

 

では、「節操」とは何だろうと、また辞書を引くと。

 

「節義を堅く守って変えないこと。自分の信じる主義・主張などを守りとおすこと」

 

そういえば、コロコロと考え方が変わり行動に一貫性の無い人のことを、「あいつは節操がない」なんて、言いますね。

 

そう考えると、「おせっかい」という言葉の根底には、

 

「自分の信じる考え方やその道を守り通すこと」

 

そんなポジティブな意味が流れているのです。

 

🔶優れた営業ウーマンだった高橋さん

 

高橋さんは、サニーサイドアップを創業する前には、営業ウーマンとして、ずば抜けた成績を残した人でした。様々な業界で働き、どの業界でも好成績をおさめています。

 

高橋さんの手にかかれば、「売れないものはない」と、そういった形容がぴったりの人物です。

 

その営業として優秀だった様々なエピソードの根幹にも「おせっかいマインド」があるわけです。

 

「おせっかい」だからこそ仕事にスピードがあり行動力があった・・・その数々の逸話には、ただただ脱帽です。

 

この本は「営業の心得」としても、とても有益なものと感じました。

 

つまり、高橋さんは、ずっと「おせっかいマインド」を実践し続け、今も、守り通している人なのです。

 

意図してやっているのではなく、「自然とそうしている」のだと思います。

 

「自然とそうしている」からこそ、高橋さんの「おせっかい」は、打ち上げ花火のような一過性のネガティブな「余計なお世話」にならず、世のため人のためになる、ポジティブな長続きする「やさしいおせっかい」になるのでしょう。

 

後世に引き継ぐべき、大切な教えが、今、この国から、あるいは、この世界から失われつつある危機感が、高橋さんを動かしています。

 

と同時に、「やさしいおせっかい」の広がる未来のビジョンに希望をもてているからこそ、様々な活動を続けているようです。

 

🔶高橋さんの「おせっかい」活動-「今」

 

高橋さんは現在、中野を拠点にして、おせっかい活動を続けています。一般社団法人おせっかい協会を設立し、その志を広げていってます。

 

「一般社団法人おせっかい協会」HP

http://osekkai.jp

 

おせっかい活動を展開されて、中野にある高橋さんの自宅には、国内だけでなく海外からも日々、人が訪れています。

 

「人と人とのつながり」が希薄になっているこの国において、高橋さんの活動とその考え方は、後世に遺していきたいものであり、その思いに共感した人々が、高橋さんのもとを訪れるわけです。

 

さらに詳しく高橋さんのことをお知りにになりたい方は、こちらの本もオススメです。

 

高橋さんの半生をベースにして、これまた、学ぶべきことの多い、気づきにあふれた本になっています。

 

 

 

🔶後世へ遺すもの

 

明治の思想家・宗教家である内村鑑三は、名著『後世への遺物』で、こう書いています。

 

「それならば最大遺物とはなんであるか。私が考えてみますに人間が後世に遺すことのできる、ソウしてこれは誰にも遺すことのできるところの遺物で、利益ばかりあって害のない遺物がある。それは何であるかならば勇ましい高尚なる生涯であると思います。これが本当の遺物ではないかと思う。」(『後世への遺物』より)

 

人は、財を築き、それ(お金)を遺すことができます。または、事業を起こし、それを遺すことができます。さらには、自分の独自な思想を作り上げ、それを遺すことができます。

 

「お金」「事業」「思想」それら3つが、どれも叶わなかったとしても、どんな人でも、

 

「勇ましい高尚なる生涯」

 

を遺すことはできる。そう内村鑑三は言います。

 

この先人が遺した言葉にふれ、高橋さんの半生に本を通して、ふれてみますと、高橋さんは、そのどれをも遺すことが可能性な稀有なる人物なのではないかと思えてきます。

 

特に、「おせっかい」という「思想」と、それを生涯、貫き通し続けている「勇ましい高尚なる生涯」からは、多くのことを学べます。

 

まさに「幸せを呼ぶ「おせっかい」のススメ」(PHP研究所)を、オススメしたいと思います!