エステレポ第53弾

熟女マッサージ愛好家の間では、伝説となっているマッサージ店が幾つかある。
いずれも店名ではなく、所在する地名で呼ばれている事が特徴的だった。

本年冬。
どうしても確かめたい店が1件あった。
愛好家の間でも一時話題になった店だ。
話によれば自宅の一室での施術らしい。
事の真相を確かめるべく向かったのは埼玉県某所。
昼下がりの団地街。

電話での案内により辿り着いた団地の一室。
指圧、マッサージ等の触書は無く、苗字を綴った小さな表札が掲げられている。
呼び鈴を押すと暫くして、重々しく静かに開かれるスチール製の扉。
ゴクリと固唾をのむ瞬間。
対面し、思わず暫しの間をおいてしまった。

お歳の頃は控えめに見ても70代中盤頃であろうか・・・。
MDさん。あなたには完敗です(涙)

間取りは公団住宅にある平均的な2DK。
内1部屋は和室を施術部屋に。敷布団。
内1部屋はご家族の寛ぎの場。居間。
その居間では家の主人らしき人物がTV鑑賞とお寛ぎになられている。

浴衣に着替え寝て待てとの事。
浴衣って・・・戸惑と困惑。
普段であればNPで浴衣!みたいなキモヲタ的一面を披露するところであるのだけど・・・。
そんな勇気。私には無かったです。
結局Tシャツさえ脱ぐ事も出来ず、大人しく浴衣を羽織り待機。

先生も部屋に戻られ、まずは横向きでの施術から。
ソフトなタッチで首筋からゆっくりと流れる丁寧な施術。
BGMにはダブルカセットのラジカセから流れるAM放送。
NHKラジオ第一。
話の内容は園芸についてのリスナーと専門家との質疑応答。
鑑賞用の梅と実がなる梅は物別だそうです。
番組の話題は園芸の事から『豚汁』の読み方についてに変わり始めた頃。
施術はようやく横半面を終了。


首筋から足先に至るまで、どれくらいの時間が経過しただろうか・・・。
日が傾きだしておりました。


もう反面も横向きでの施術。
変わらないスローペース。
ソフトなタッチで首筋からゆっくりと流れる丁寧な施術。
話題の『豚汁』の読み方について。
東日本では『とんじる』と読み、西日本及び北海道では『ぶたじる』と読むのだそうです。
その番組が終わりを告げる頃に施術はようやく終了。


首筋から足先に至るまで、どれくらいの時間が経過しただろうか・・・。
日は陰りを見せ始めておりました。


うつ伏せでの施術。
番組はいつしか国会中継に。
自民党質疑45分。公明党質疑10分。

そんな時。静寂を遮るかの如く呼び鈴の音。

『電気屋で~す』

現れたのはと町の電気屋さん。
施術中に聞こえる主人と電気屋さんとのやり取り。

国会中継は45分に渡る自民党質疑が終わり公明党質疑へ。
作業を終えたのか町の電気屋さんはお帰りに。
施術はまだ肩甲骨から腰の辺りに差し掛かった頃。

どれくらいの時間が経過しただろうか・・・。
終わりの見えない施術の流れ。
日はすっかりと暮れております。

遂には国会中継も終わりを告げている。
やがて施術は臀部へ。緊張のひと時。
そんなタイミングでラジオから流れてきた曲。

「お届けしますのは、ガーション・キングスレイ。ポップコーンです。」



機械的な曲調で満たされる室内。
この状況とポップな曲調に生じる不協和音。
思考回路が崩れ始めたのでしょうか、ある妄想が頭を過ります。

揉み解される臀部と内腿。
もし、もし仮に。
万が一・・・。
普段ならウエルカムな願いも今回ばかりは不安要素が一杯。
なのにそんな窮地でも期待をしてしまっている心の矛盾と不純。

と、そんな不安と期待をよそに肩をポンポン。

「お疲れ様。」

130分に渡る死闘。
あっけなく訪れた終焉の時。

噂とは噂でしかなく。伝説とは伝説とでしかなく。

ただ普通のお店では体験出来ない、数々のサプライズがあった事は事実。
先生の丁寧な施術のお蔭で全身の凝りは完全に解消。
丁寧なお心配りで対応してくれたお婆ちゃん先生。
感謝の気持ちで一杯です。


終劇