30 エホバの証人の「言語訓練コース」について④ | エホバの証人(JW)について考えるブログ

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弁護士。元JW2世。1980年代後半13歳バプテスマ・90年代前半高校生で正規開拓者,18歳奉仕の僕・その後外国語会衆・一時的べテル奉仕・2000年代前半大学進学・自然消滅・JWと決別、その後弁護士という人生です。過去の経験を書き綴り皆さんとJWについて考えていきたいです。

【その後の感想】

 

さて、エホバの証人組織がその当時やろうとしていたTESOLを取り入れた外国語教育について、その当時の感想は、前回書いたよなものだったのですが、その後、いろんなことを知るにつれて、いろいろと別のことを感じるようになり、また、そこからエホバの証人組織についてもいろいろ考えるものがありました。

 

1.別の教訓者候補-Q兄弟の話

 

まず、自分がまだ現役だった頃、この教訓者用クラスが終わった直後のことですが、私たちの言語の巡回区の兄弟で、いずれはこの巡回区の巡回監督になるのだろうと思われていた候補の一人の兄弟と話をする機会がありました。

この兄弟は、当時の私をずいぶん気に入ってくれていて、巡回監督くらいしか知らないようなべテル内部の情報をいろいろと教えてくれる兄弟でしたし、べテルについて歯に衣着せずに「間違ってることは間違ってる」ときっぱり言い切るタイプの兄弟でした。

 

大会か何かでこの兄弟にあった時に、Q兄弟のほうから無理やり二人だけの場所に呼ばれて、

「IMも例の言語訓練コースの英語版を受けたんだろ?どうだった?」といきなり聞かれました。

 

まあまあ良かったかなと思っていた私はQ兄弟に正直にその感想を伝えたのですが、Q兄弟は吐き捨てるように、

 

・「べテルでやった私たちのクラスは全く話にならないんだよ、IM」と言ってきました。

 

・「IMは、すべての授業を直接英語で受けたんだろ?私たちのクラスを想像してみなよ。カナダの先生兄弟が英語で話すだろ?そしたらそれをまず日本語に訳す兄弟がいるんだよ。で、いろんな外国語会衆のネイティブの兄弟たちも参加していて、彼らは英語も日本語もわからないだろ?だからその訳された日本語からさらに各国語に訳すんだよ。わかるだろ?それだけで3分の1に情報量が落ちるわけだよ。」

 

・「しかも、その英語から日本語への通訳、日本語から各国語への通訳の両方の段階で、明らかに誤訳とか訳せない部分があるんだよ。聞いててひどいんだ。だから、最初の数日間のクラスは、そもそも何を勉強してるのかもわからない感じで、参加者の多くがポカーンていう感じだったんだよ。」

 

・「しかも、教訓者候補としてネイティブの兄弟たちも呼ばれただろ?彼らは日本に何年も住んでいても全く日本語を覚えられないから俺たちが彼らの言語を覚えて助けてるわけじゃないか。なんでそういうネイティブの、しかも日本にいながら日本語を覚える意思も能力もない人たちが、言語訓練コースの「教える側」になって、日本人に「教える」わけなのか考えないか?できるわけがないじゃないか

 

と結構な剣幕で話していました。

 

・「あんなのただのお遊び、協会の自己満足以外の何物でもないよ」とまで言っていました。

(ちなみにこの人もべテルでは結構偉い人だったんですよ。)

 

この話を聞いて私は、そのクラスを受けたわけではなく、実際見たわけではないので、責任持ったことは言えないのですが、

とにかく、「あーー。。。。さもありなん」と感じました。

 

直接に通訳なしの課程を受けた自分でさえ、通訳がない分だけ得られた情報量は多かったですが、それでも英語でネイティブがすごいスピードで専門用語を話すわけなので、課目によっては半分も理解できていないであろうものがいくつもありました。(許可を受けていたので、すべて録音してあとで何度も聞き返したりしていました。)

 

そうであるにもかかわらず、課程が終わったときにはしっかり「TESOLの修了証」が私にも渡されました。

さらに驚いたことに、「希望する人は、自費になるが、修士号や博士号をとれる課程に進むこともできる」と言われましたし、

それより仰天したのは「学位を取るには、「外国語教育の経験」が何時間あるかということが1つの条件になる。基本的に教育者でないと取れない学位だから。ただし、外国語会衆で外国人と「家庭聖書研究」をしている兄弟たちは、その時間を「外国語教育」の時間としてカウントできる」というような説明もありました。

 

さすがにそれをきいて、当時の私は「そんなことでいいのだろうか」と疑問に思いました。

当時の私は、ちょうど大学に行きたいという強い願いが出始めていた時でしたので、その点についての強い憧れがありましたが、

そのような方法で学位が取れるということは信じられなかったですし、その学位が役に立つのかも疑問でしたし、何より自分は、そういう方法であれば、大した英語力がない自分は「学位をとること」に値しないと強く思いましたので、それ以上は情報を聞かないことにしました。

また、そのように「とれる学位」の信用性についても疑問がありましたし、そのためには随分とお金と時間もかかるということで、これもまた、それ以上関心を持たなかった理由の一つでした。

 

2.大学に入ってから

 

同じような疑問は、大学に入り本物の語学教育を本物の大学で受け始めたときに、さらに強まりました。

 

まず、以前書いた通り、同じクラスの周りの「世の友人たち」がすさまじい勢いで非常に難しい教育を難なく吸収して行く姿を見て、「エホバの証人の言語訓練コース」で勉強することなどでは、到底こうした世の人たちの10分の1のレベルにすら到達しないだろうということを肌で感じる毎日でした。

 

そして何よりも貴重だったのは、入学当初からほぼ完ぺきにこの言語を話せた私は、教授たちから当然のように特別扱いされて、教授たちの飲み会のようなものに参加させてもらうこともあったのですが、そのような機会に教授や専任講師の先生たちと話していた時に、「実は自分もTESOLらしき資格を取ったことがあるんですよ」と話したところ、教授陣全員から、「えーーー!それ本当!?信じられない!!」とびっくりされたことがありました。

 

あまりの驚きようにこちらが驚き、「いや、TESOL資格といっても、これこれこういう課程でした」と伝えたところ、

「なるほどー、それならば理解できる」「でも、いい経験だったねー」と優しく話してくれて、そのあとこのTESOLについての話が続きました。

 

実は、その時の教授陣の中に、3人ほどTESOLのホンモノの課程を受けた人たちがいて、そのうち2人は修了し、もう1人はあまりに辛くて途中で挫折したというような話をしていました。彼女たちの説明は以下のようなものでした。

 

・TESOLというのは、自分たち専門的外国語教育者の間では、基本的には、正式な「大学院修士課程」というのが常識的感覚である。さらにその後、博士課程に進んで博士号を取る人もいる。

・これらの言語教育研究課程は、ほとんどがアメリカ、またはイギリスの正式な大学の正式な大学院課程で行われ、極めて厳しいレベルおよび大量の教育がなされるので、よほどの言語レベル・気力・体力がないとついていけない。

(一人の人が途中で挫折したのはそのためとのことでした。)

・TESOLは何かの正式な資格ではなく、教育方法の名前なので、大学院で学ばなくてもエッセンスだけを詰め込んだ短期間の集中コースが実施されることはあるし、それはそれで価値がある教育だし、そうしたコースを設けている企業・団体はある。

但し、一般常識から言って、もともと教育学をやっていたり英語や外国語の先生をやっている人が、さらなるスキルアップとしてその短縮コースを受けてこそ意味があるのだろうし、その修了コースの認定証をもらっても学位とみなされないのは当然のことだ。

 

こうしたことを教えてもらいました。

 

3.その後

 

それから、「結局、このカナダの先生兄弟は誰だったのだろう?」とあとで気になったことがありました。

自分がもらった(もうその時にはなくしていましたが)修了証はどんな意味があったのだろうとも思いましたし。

 

それで、その彼の教育機関に電話して、直接聞いてみたのですが、

彼の教育機関は、大学でもなく、短期大学でもなく、専門学校でもなく、語学教室であると直接説明を受けました。

 

それから、修士号や博士号をもらえる可能性についても訪ねたのですが、

ほかの通信大学の紹介を受けて、通信教育課程を使ってそうした学位をとることも不可能ではないという説明でした。

 

私は勝手に、彼が「外国語大学の学長」だと思い込んでいたのですが、そうではなかったようでした。

また、これも驚いたのですが、私が受けたのと同じようなTESOLの短縮バージョンの課程を、今は日本でビジネスとして提供しているようで、お金を払えば、もう1回でも2回でも、彼のこの教育を受けることができるということもわかりました。

 

だからといって、何か彼のことを批判するつもりもなければそうしたいわれもありません。

こうしたTESOLの短期バージョンは多くの英語の先生には有益だと思いますし、

ただ、当時、自分がわからないでいたことの謎が解けてよかったなと思っただけです。