宮崎駿「シュナの旅」他と、私の作画絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店)誕生秘話 | 後藤 仁(GOTO JIN)の日本画・絵本便り

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後藤仁ブログ2~絵師(日本画家・絵本画家、天井画・金唐革紙)後藤仁の日本画・絵本・展覧会便り。東京藝大日本画卒,後藤純男門下。「アジア/日本の美人画」をテーマに描く。東京藝大,東京造形大講師。金唐革紙製作技術保持。日本美術家連盟,絵本学会,日中文化交流協会会員。

【宮崎 駿 作品「シュナの旅」「もののけ姫」他と、私の作画絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店) 誕生秘話: その1】

 私が絵本
『犬になった王子 チベットの民話』(君島久子 文、後藤 仁 絵/岩波書店)を描いて以降、あちこちで広報・宣伝をしたせいもあり、宮崎 駿さんの絵物語「シュナの旅」(宮崎 駿 作/徳間文庫)の原話が、『犬になった王子』(君島久子 文/岩波書店)であるという事実が、かなり世間にも浸透してきたようです~。

 これは、
『犬になった王子』の制作打合せ時に、私が直接、君島久子先生にお会いして聞いた裏話です。
 ・・・・当時、若かりし宮崎 駿さんは、チベット民話
『犬になった王子』を読んで感動し、ぜひ作品化したいと思い、「シュナの旅」の原案を、君島久子先生に手紙で送ったそうです。
 君島先生は、当時を回想し、「その時は、全く、原案の意味が分からなかった・・・」と私に感想をもらされました。宮崎 駿さんの大胆な脚色に、原作者も理解できなかった事実は、面白いエピソードですね。・・・・

 私は、
『犬になった王子』を絵本化するに当たって、スタジオジブリ広報部を通し、宮崎 駿さんあてに、絵本のあとがきで「シュナの旅」に触れる旨をお伝えしました。この事案には、本来、許諾は必要ありませんが、礼儀上、ご本人に連絡をしたのです。
 絵本の完成後、スタジオジブリにも拙作絵本をお贈りし、広報部によると、一応、宮崎 駿さんご自身もご覧になられたらしいです。
 ・・・・作者以外は誰も知り得ない、創作秘話でした~💖

 絵師(日本画家・絵本画家) 後藤 仁

               
  

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【宮崎 駿 作品「シュナの旅」「もののけ姫」他と、私の作画絵本『犬になった王子 チベットの民話』(岩波書店) 誕生秘話: その2】

 
「シュナの旅」(徳間文庫)は、1983年に初版が刊行された、宮崎 駿さんの文・絵による、マンガと絵本の中間的な文庫本です。”あとがき”には、『この物語は、チベットの民話「犬になった王子」(君島久子訳 岩波書店)が元になっています。・・・・〈抜粋〉と書かれています。
 
「シュナの旅」は、2006年にスタジオジブリにより映画化された、アニメ映画「ゲド戦記」(宮崎吾朗 監督)の原案にもなりました。また、宮崎 駿 監督の名作アニメ映画「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「もののけ姫」等の原点になっているとも言われています。

 今回、再放送された「もののけ姫」を改めてよく観てみると、冒頭の、村(国)に災難が起こり、若くて勇敢な男(主人公・ヒーロー)が或る品物と言い伝えを元に、”ヤックル”という動物に乗って西へ西へと旅を始める・・・というストーリーは、まさに「シュナの旅」~『犬になった王子』の筋書きそのものでした。人間の言葉を話す犬が、一人の少女(副主人公・ヒロイン)と交流するという最も重要な設定は、互いの関係性は少し異なりますが、『犬になった王子』に酷似しています。また、主人公が旅の途中で、困難に遭遇したリ、怪しげな老人(『犬になった王子』では、老婆と神様の二人)に出会う件や、一人の少女との出会いと愛情によって主人公の心の持ち方が変わる件、少女の周囲には何かしらのたくらみを持った大人がいる件等、実に多くの「シュナの旅」~『犬になった王子』との共通点が随所に垣間見えます。息子さんの宮崎吾朗さんが映画化した「ゲド戦記」(冒頭部分に「シュナの旅」の設定を用いる)より、むしろ、宮崎 駿さん、ご本人の「もののけ姫」の方が、全体としては、「シュナの旅」~『犬になった王子』の大筋に近いですね。
 また、「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」等の初期の宮崎 駿 監督 ジブリ映画作品にも、ヤックル等の登場動物や、多くの設定・イメージに「シュナの旅」~『犬になった王子』が垣間見えます。
 このようにして、古来からの多くの作家は、他の作品からヒントやイメージを受け取り、自分なりに解釈・換骨奪胎して、作品を創作する源としてきたのです。

 私は幼い頃から、「未来少年コナン」「母をたずねて三千里」「フランダースの犬」「アルプスの少女ハイジ」「あらいぐまラスカル」等の名作テレビアニメが大好きでしたが、後(高校生の頃)に、それらの制作に宮崎 駿さんが関わっていた事を知りました。私は、小学校高学年になると戦闘物等のテレビアニメは観なくなりましたが、宮崎 駿 アニメ作品だけは、その後も観続けました。
 中学校3年生の時に、アニメ映画「風の谷のナウシカ」に夢中になり、宮崎 駿さんを知りました。同じ頃、15歳で、絵物語
「シュナの旅」にも出会いました。それ以降、「シュナの旅」は私の座右の書となり、最も大切な絵画作品の一つとして、その後の私の作品制作にも大きな影響を受けてきました。


私が座右の書にしている、「シュナの旅」(徳間文庫)



私の「シュナの旅」署名  昭和59年(1984年)、私が15歳の時に購入。残念ながら、初刷(1983年刊行)ではなく、既に、5刷です。


 その後、日本で一大、宮崎 駿ブームが起こり、私も、「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「魔女の宅急便」「紅の豚」「名探偵ホームズ」「ルパン三世 カリオストロの城」等々・・・、と宮崎 駿・劇場アニメ映画を、欠かさず映画館やビデオで拝見してきました。高校卒業後、単身上京した時には、ビデオで「太陽の王子 ホルスの大冒険」「長靴をはいた猫」「パンダコパンダ」等の昔の劇場アニメも観ました。
 美術予備校(立川美術学院)の時に、当時の日本画科講師だった村上 隆さん(現代アーティスト)が、宮崎 駿さんの大ファンだと知り、意外なファン層がいるものだと感心しました。

 それから時間が経ち、「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」の大ヒット等があり、私は東京藝術大学を卒業し、日本画家となりました。

 

 何にでも順位をつけたがるのは日本人の癖ですが、私の敬愛する宮崎 駿 作品(監督・演出・原画・原案・場面設定・作画 等、何らかの形で宮崎 駿さんが関わった作品)を、おおよその順で挙げてみたいと思います。これは、あくまでも、私の個人的な嗜好というだけで、作品の良し悪し・評価という意味ではないという点は、ご了承下さい。

 私の一番好きな宮崎 駿 作品は、私の座右の書である、絵物語「シュナの旅」(徳間文庫)です。

 テレビアニメでは、「未来少年コナン」「母をたずねて三千里」「フランダースの犬」「アルプスの少女ハイジ」「あらいぐまラスカル」「名探偵ホームズ」・・・と、おおよそこの順になります。

 劇場アニメ映画では、「天空の城ラピュタ」「風の谷のナウシカ」「千と千尋の神隠し」「太陽の王子 ホルスの大冒険」「もののけ姫」「となりのトトロ」「長靴をはいた猫」「パンダコパンダ」「魔女の宅急便」「ハウルの動く城」「名探偵ホームズ」「紅の豚」「ルパン三世 カリオストロの城」「風立ちぬ」「崖の上のポニョ」「ゲド戦記」・・・の順になりましょうか。

 その他ジャンルでは、漫画版「風の谷のナウシカ」も素晴らしいです。

 どうしても、多感な幼少期~少年期~青年期に観た作品に、思い入れが強くなりますね~。中でも特に、「シュナの旅」「未来少年コナン」は、今でも、私の永遠の憧れの世界になっているのです。


 2013年に私が、初絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』(君島久子 再話、後藤 仁 絵/福音館書店こどものとも)を作画・刊行したのをきっかけに、次回作を岩波書店から持ち掛けられ、君島久子先生の御作品を全て読み返しました。君島久子先生の中国民話集の中に、チベット民話の『犬になった王子』がありました。読んでいくうちに不思議な感覚にとらわれました~。君島久子先生の絵本作品は、「王さまと九人のきょうだい」(岩波書店)等を幼少期に読んで知っていましたが、この話は初めて読んだはずなのに、何故か懐かしさがこみ上げてくるのです。その物語自体に、万人に共通する懐古的風情が含有されているのでしょうが、それにしても、かつて読んだ事があるような親しみ感です。・・・ピン!ときた私は、座右の書として、田舎から持ってきていた「シュナの旅」を再度、読み返しました。子供の頃には、ほとんど気にかけていなかった”あとがき”を読むと、『チベットの民話「犬になった王子」(君島久子訳 岩波書店)が元になっています。』と書かれていました。
 感動しました。心が震えました・・・。「やはり、そうだったのか・・・」と。
 
『犬になった王子』のストーリーは、「シュナの旅」を誠に彷彿とさせるものでした。それもその筈、「シュナの旅」こそ、『犬になった王子』を原話に創作されたものですから・・・。私は、この名作との誉れ高い民話が、何故だか今まで、日本で一切、絵本化されていなかった事実に、運命を感じました。「後藤 仁よ、宮崎 駿 作品が本当に好きなら、このゆかりの民話を絵本に描きなさい・・・」との天命を受けたかのように・・・。そこで私は、一切迷う事なく、岩波書店 編集者に『犬になった王子』をぜひとも絵本化したいと提案しました。
 そして、
絵本『犬になった王子 チベットの民話』(君島久子 文、後藤 仁 絵/岩波書店)が誕生したのです。

 絵師(日本画家・絵本画家) 後藤 仁


ながいかみのむすめチャンファメイ 表紙・表
絵本『ながいかみのむすめチャンファメイ』 (君島久子 再話、後藤 仁 絵/福音館書店こどものとも)


絵本『犬になった王子(チベットの民話)』表紙
絵本『犬になった王子 チベットの民話』 (君島久子 文、後藤 仁 絵/岩波書店)