2024/01/24(水)宝塚バウホールにて、月組『Golden Dead Schiele』開幕。

 

 

くま・あみ・りり

 

作・演出:熊倉飛鳥(デビュー2作目)

主演:彩海せら(102期・研8)

ヒロイン:白河りり(103期・研7)

 

この3名によるタッグは、対照的な要素が混ざりあっています。

 

「若さ」と「老練」

「新しさ」と「懐かしさ」

「眩しさ」と「素朴」

 

熊倉先生、彩海さん、白河さん、3名とも入団して7~8年。

 

彩海・白河は10代で入団しているので、ようやく20代半ば。

(りりちゃんは20代前半かな、3月生まれだし)

(すみれコード、ごめんなすって)

 

月組異動後、ショーで組む事が重なった あみりり

 

『Deep Sea~海神たちのカルナバル~』若手ダンスの場。

『万華鏡百景色』銀座デートの場。

 

そしてバウ『Golden Dead Shiele』で、芝居でがっつり恋人同士に。

 

今まで芝居では絡みがなかっただけに、新鮮。

 

熊倉先生と月組といえば、『桜嵐記』で演出助手&新公演出担当。

この時、まだ彩海さんは雪組生。

 

熊倉先生、彩海さん、白河さん。

それぞれ、新鮮な関係性なんですね。

 

 

★破線下の恋人

 

配役発表時、「ヴァリ(白河)とエディト(花妃舞音)のWヒロインでは?」という予想を見かけました。

 

「破線上じゃないし、正式なヒロイン不在かも」

「恋愛を重視しない脚本なのでは」

「当時の絵画モデルは娼婦が多かったし、ヴァリは色物キャラでは」

 

…といった推測も見かけました。

 

実際に幕が上がれば、シングル・ヒロイン(ヴァリ)でした。

 

シーレとヴァリの恋愛関係もしっかりと。

互いに唯一無二だった…と、別れてなお滲み出る関係。

 

そして…ヴァリは正統派ヒロインでした。

 

純粋で可憐、そして清楚。

幼くして父(教職)が夭折し、貧しい母子家庭という出自。

中産階級(ブルジョア)出身のシーレとは身分違いだと思い悩む。

 

…って、古き佳き時代の宝塚・正統派ヒロイン像と重なります。

 

シーレに比べると、ヴァリは不明点が多い。

勿論、分かっている事もあります。

 

ヴァリは絵画モデルで、シーレと同棲。

シーレが逮捕・拘留されても彼の元を去らず。

シーレがエディトと結婚するため去り、従軍看護婦に。

 

こうして見ると、苦境のシーレと共にいたヴァリ。

シーレが他の人を選ぶと、潔く去り、二度と会わない。

従軍看護婦という、厳しい環境に身を置く。

 

…これらの事実を材料にして、清廉で純朴なヒロイン像を構築したのでしょう。

 

また、宝塚らしさも意識したのかと。

 

スカイステージ『稽古場情報』にて、熊倉飛鳥と彩海せらの対談が放映されました。

以下はニュアンスです。(妹が見せてくれました)

 

熊倉「恋人役の白河さんは?」

 

彩海「普段のりりちゃんは素朴な人。ヴァリ役にぴったり」

 

熊倉先生も我が意を得たりとばかりに、嬉しそうに何度も肯首。

 

白河さんのビジュアルは、昔ながらの正統派娘役さん。

人柄も純朴なんですね。

 

 

あみりり共通点-1

 

彩海せらは、男役としては小柄なイメージ。

 

…ですが、雪組『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』で、小池修一郎先生に「あなた、意外と大きいね」と言われたとか。

あみちゃん、小顔だからかな。

 

例えば舞空瞳も小顔ゆえ、実寸より小柄な印象かと。

実際はすらっとしてるにも関わらず。

 

白河さんも小柄イメージ。

プロフィールを見ると、163cm。

娘役としては標準サイズ。

 

「実際より小柄なイメージ」は、あみりりの共通点のひとつかな。

 

並んだ姿は、しっくりきます。

 

(苦悩してても)キラキラ(が溢れる)あみちゃん。

清楚で可憐なりりちゃん。

 

お似合いのカップルでした。

 

 

★あみりり共通点-2

 

『Golden Dead Schiele』の注目ポイントの一つは、彩海さんの発声。

 

思い悩む事が多い役に合わせてか、過去最高に声が低い。

 

月城かなとの発声と似てる事もたびたび。

『グレート・ギャツビー』新公で月城さんの役を演じた時、身に付けたのかも?

 

歌い出すときの伸びやかさは、望海さんを彷彿と…。

学んだことを、我が力にしていますね。

 

感情の揺れと共に、発声が微妙に変化します。

 

嬉しい時は声が若返る(…って、若者の役だけど)

明朗で、やや高め。

 

表現力が、声に出ています。

 

 

さて、対してヒロインの白河さん。

 

白河りりといえば、美声の持ち主。

歌唱力では定評があります。

 

大劇場・別箱とも、エトワール経験者。

別箱では「役として」子どもの声で歌ったことも。

(珠城りょう主演『幽霊刑事』)

 

月組の開演前アナウンスも担当中。

 

本作でも歌う場があり、音域の広い曲を危なげなく歌唱。

地声とファルセットの切替も自然でした。

 

彩海さんと白河さん、二人とも声がよく通る。

滑舌も良く、台詞が明瞭。

 

歌声も、声量豊かに朗々と。

いわゆる歌うまさん。

 

二人とも、歌でも芝居をしています。

歌から気持ちが滲み出る…溢れだす。

 

『声で芝居する』…そこも、あみりりの共通点ですね。

 

 

★あみりり共通点-3

 

芝居、歌、ダンス。

どの分野も、二人とも高値安定。

 

真ん中のレベルが高いと、舞台のグレードがぐっと引き上がりますね。

物語に集中できます。

ハラハラするのは、芝居の筋だけ。

 

歌も、芝居も、ダンスも呼吸が合っていました。

同じリズム、同じスピード感、同じ間合い。

それは簡単なようで、とても難しいはず。

 

『THE ストレスフリー』

 

あみりりが組む事で生まれる安心感です。

 

 

★あみりり共通点-4

 

彩海せら、白河りりとも、新人公演で様々な役を演じてきました。

 

 

彩海が雪組時代に演じた『壬生義士伝』吉村貫一郎(本役:望海風斗)

 

切腹を命じられた直前、妻や子のために貯めて来た銭を数える姿。

切れ味の良い刀は息子に遺し、刃こぼれした刀で腹をさばく。

 

思い出すたび、鼻の奥がツン…とします。

 

 

白河は『フリューゲル』で演じたエミリア(本役:白雪さち花)

 

戦時中、軍の書類を改竄し、こっそりユダヤ人を逃がし続けたエミリア。

戦後、ユダヤ人大量虐殺に加担した罪で捕縛。

 

長らく拘束され、記憶もおぼろげな状態に。

息子(主人公・ヨナス)と再会しても「初めまして」

エミリアの中では、20年以上経っても息子は幼い坊やのまま。

 

…ですが、坊やと一緒に歌った歌をヨナスと歌い、「また会いたいわ」

 

その笑顔がね…無邪気であり、聖母のようであり。

 

 

彩海さんも、白河さんも、忘れ難い演技をみせてくれました。

観終わったあと、しばらく立てなかった。

 

そこもワタシ的に、あみりりの共通点です。

 

 

 

★シリアス…だけど

 

月組『Golden Dead Schiele』は全編シリアス。

 

でも、暗くてどんより…には、なりません。

 

フィナーレの存在もさる事ながら、本編も綺麗に閉じていく。

 

切れ味の良い包丁を使うと、余分な滓がこぼれないように。

 

あ、フィナーレはめっちゃ素敵ですよ。

男女の群舞も、男役群舞も、デュエットダンスも。

THE タカラヅカ。

 

男女群舞では、彩海せらと花妃舞音が組みます。

仮にも、正式な婚姻をした妻ですものね。

エディト(花妃)への配慮も忘れない、熊倉先生。

 

ですが、正ヒロインはヴァリ(白河)ですよ、と。

夢のようなデュエットダンスの場を設けていました。

 

前作でも、出演者への目配り気配りを感じさせた熊倉先生。

 

観客へのサービス精神も、感じました。

 

観終わったあと、黙って噛みしめる何かを戴きました。

 

彩海さんがカーテンコールで「感じ方は人それぞれ」と仰ってましたが、ホンマそうやなと。

 

じんわり、ずっしり。

持ち帰った、この気持ちをじっくり味わい尽くしたいと思います。

 

 

▽ 感想つづきます

にほんブログ村 演劇・ダンスブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村