【世界卓球】
中学の卓球部の連中は、放課後になると、学校の2階の廊下の
突き当たりから、卓球台を並べて練習をしていた。
普通の教室が並ぶ廊下じゃなく、技術室や理科室、美術室が
集まる棟の廊下で、放課後は、通る者がほとんどいなかった。
この場所で練習していること事態、しばらく知らなかったが、
ある時、技術室だったか、理科室だったかに用事がある時、
そこの廊下に踏み入れると、コツコツ、ピンポン球を鳴らし、
無言でひたすらラリーをしている卓球部が大勢いた。
「ああ、お前卓球部だったのか?」とクラスの者もいたりして
声をかけるが、反応のいい返事は返ってこなかった。
その中で、腰を曲げ体を上下に振り、卓球台の下に潜るかの様に
して、ひたすらカットでピンポン玉を返しているやからがいた。
彼のラケットはそのまま握るシェイクハンドで、
ペンのラケットしか使った事がない自分からしたら、
彼はなんだか異様に見えた。
でも、激しいスマッシュを、ことごとく返して行く彼の妙技に、
廊下を歩きながらのわずかな瞬間だが、じっと見つめた。
連休中にあった世界卓球に見入ってしまった。
動体視力がすごいのなんのって!
スター選手も生まれていて、手に汗を握ってしまった。
身近なスポーツではあるが、どちらかというと、
あまり華々しさを感じなかった。
でも「ここまで、大フィーチャーされるようになってよかったな」
と、かつての中学の廊下の卓球部を思い出し、
その風景に声をかけた。