【クマンバチの旋回】





なぜかこの頃になると、おれん家のベランダを結構でかい

クマンバチが飛ぶ。

9階にある家のベランダは、建築法か何かわからないが、

運良く自分の家だけ、ベランダがだだっ広い。

そこを一匹のクマンバチが、一定のコースをゆっくりとブ~ンと飛ぶ。

毎年、危険視していたが、飛んでいる本人はこちらに危害を

加えるつもりはなさそうだ。




かつて子供の頃、山にわけ入り遊んでいる時、何匹かのスズメバチに

遭遇したことがある。

木の樹液に集まるクワガタ、カブトムシと一緒に

スズメバチもいて、クワガタを捕ろうとする自分達に突然襲ってきた。

自分は小1くらいで、ただどうしていいかわからなかったが、

上級生が自分のかぶっていた帽子を素早く脱ぎ、飛ぶスズメバチを

絡め取るとそれを次々につぶしていた。

時には向かってくるスズメバチを真っ正面に見据え、顔の前でパチ~ンと

帽子を持った手の平で叩きつぶした。

今思うと信じられない光景だが、あの頃、山に分け入る子供は、

それくらいの能力は、持ってしかるべきだった。

見ていて、とてつもないかっこよさを感じ、自分も上級生になったら

あれが出来るようになるのだと誓ったが、

あいにくと言うか、運良く、スズメバチの襲撃に遭遇する事もなく、

大人になった。




ベランダを旋回するのが、あのスズメバチなら大変だが、

クマンバチは青空にぽかぽかして、とてものんきだ。

ブ~ンじゃなく、バタバタバタバタとオートジャイロか何かのホバリングを

楽しんでいる様でもある。

梅雨と夏が来る前に、のどかな時間が、今うちのベランダに来ている。