【ミノムシボンバイエ】
ちょっと残酷な事をした。
彼、もしくは彼女はあの後どうしたろう。
ある秋、ミノムシの皮を剥いだ事がある。
長崎の山の上の県営住宅に住んでいた頃、みんなが遊園地と呼んでいた
公園の木にぶら下がっていたミノムシを手に取った。
ミノムシは珍しくなかったが、その時、ずっと思っていた事を行動に表した。
両手でミノムシの蓑を持つと、真ん中に親指の爪を立て左右に引き裂いた。
表面の蓑は案外楽に崩れるように割れたが、
その下は粘っこい繊維のような白い幕がでてきて、簡単に中を割る事が
できない。
あまり力を入れすぎると中の生き物をつぶしそうなので、
注意して皮の上の方に爪を入れ引き裂いていくと、
黒く細い幼虫が、鈍くもがいていた。
興味深かったが、想像の域を出なかった感じもした。
そのせいか、少しだけ後悔した。
開ける必要はなかった。
その後、どうする事もできず、下の落ち葉の中にうずめた。
さぞ寒い思いをして、死んじゃったかな。
長らくそう思っていた。
だが、今回調べてみると、意外にそうでもなさそうだ。
わるいなと思って下の落ち葉に落としたのがよかったかもしれない。
ミノムシの皮をはいだ後、幼虫と色紙と一緒に置いたりすると、
カラフルな蓑を作ったりするらしい。
だから、あの時のミノムシもすぐさま、蓑作りに取りかかったはずだ。
なぜか秋になれば、ふと思い出していたが、
なんだかよかったよ。
朝晩、めっきり寒くなった。
ミノムシがうらやましい。
ひょっとすると彼らは、生物の理想の姿の一つかもしれない。