【節句に絶句】



子供心ながら思った。

なんて不公平!

確かこの日は、男の子の日じゃなかったのか?

3月3日が女の子の日なら、5月5日は男の子の日。

母親にそう教わってきた。

ところがどっこい世間ではいつの間にか、5月5日はこどもの日と

なっていた。

何とか食い止める手だてはないのか!?

オレは一回だけなのに妹は二回も楽しめる!

いったいどういうこっちゃ!?




自分がまだ幼い頃、

男の子の節句は、こどもの日と言う呼び名にいきなり変わった。

長らくそう思っていた。

だが調べると、1947年に、正式にこどもの日と制定されている。

母親は昔の名残で男の子の日と教えたにすぎない。

お雛様に対して飾られる鎧兜は、手間暇は負けるが、

なかなか勇ましく、まあまあ対抗できる優越感があった。

おまけに鯉のぼりもあるし。

なのに、こどもの日!?

あの頃、2歳下の妹は軽いライバルだ。

そんなバカな!と絶句した記憶がある。

5月5日が近づく青空には、そろそろ鯉のぼりが風に泳ぎだしている。

するとあのバカバカしい記憶を思いだして、こころの中で少し笑う。

するとそれは白い蒸気のように、空にふわふわ飛んで行き

青空に霞む白い雲の所で、パフっと消えた。