【ヒゲとボイン】



夜の新宿で信号待ちをしていた。

交差点には少し風があり、原チャリにまたがる薄着のオレは

少し肌寒かった。

横断歩道手前に、白いスーツのOL風の女の人が立っていた。

風を気にして長い黒髪を向こう側の手で押さえている。

すると「ギョ!?」

何と!

見えるその人の鼻の下に、黒くふさふさしたナマズの様なヒゲが!

凝視する事、数秒。

だが、再度の風でヒゲと思われたのはパラパラと鼻から離れた。

なあ~んだ。

その人の黒髪だった。

それにしても一瞬ではあるが、本当にヒゲが生えている様に見えた。




「すげえ長い鼻毛がでちょうゾ」

高校の時、友達に出会い頭で言われた事がある。

なにゃあ!そりゃあ一大事とばかりに鏡を見ると、

微妙な長さの髪の毛が鼻の下に付いていた。

髪の毛にしては短く、鼻毛にしては長いが、付いている位置が絶妙で、

長い鼻毛がでているように見える。

「違うワイ、髪の毛じゃ!」

フンと鼻の下をこすった。




信じられないような見間違いがたまにある。

大笑いできたりできなかったり。

なるべく大笑い出来る方がいい。

今回の見間違えは、ちょっと笑い、高校の時の鼻毛の事を思い出し

交差点を抜けて行った。

尚、その女の人がボインだったかはわからない。

大好きな漫画家、故小島功先生のグレイトなネーミングを

使用させてもらいました。