【勝負のついたち】




マジかよ!終わらん。

だが明日がある。

ぶっちゃけ勝負は明日だと思い寝た。

夏休みの宿題は、いつも9月1日に賭けた。

8月31日になんとか終わらそうとしたが、とてもとてもだ。

新学期一日目は、宿題の回収はまず無いと見こんで行くと

案の定そうで、オッシャー!とこぶしをにぎり、家に帰ってなんとか

宿題終了の形に持って行った。

時にはその次の日も持って行けず、それ以降に持ち越した事も

あった気がする。

読書感想文なんて、小5から中3まで毎回【走れメロス】だった。

ただ、工作では一度がんばった事がある。

小6の時に、前に2本のブラシを回しながら、ゴミを吸い込んで走る

道路清掃車を作った事がある。

ベニヤ版をノコギリでギコギコしながら夏休みの大半をそれに

費やした。

新学期に学校でゴミを吸う実演をしたら、担任の先生が

えらく驚いてくれて、体育館に展示する事になり、

他の先生に本当にゴミを吸い込むんだと自慢してくれた。

嬉しかったが、そうなるように作ってあるだけなのになあと

ちょっと戸惑った。

子供はほめてもそんな表情を見せる時があり、

大人からすると、もっと素直に喜びなと思う時があるが、

まさしくあの時の自分がそうだった。

子供の心の中はいろいろわけありなのだ。



夏休みの宿題は7月中に終わらせるという夢のプランは

誰もが考える。

自分も当然トライしたが、気がつけばいつも通りのドタバタだ。

それは今でも続いている。

どうもギリギリじゃないと頭が発光しないらしい。

ギターウルフがメジャーになって早々、初めてのシングルを作るよう

言われた事がある。

だが、その当日になっても完成せずスタジオ入りした。

上等なスタジオで、メンバーと面つき会わせいろいろ試すが

全然ピンと来ない。

すると、ギターアンプがいきなり故障した。

見るとこりゃあ交換が必要だという事で、別のがやってくる数時間、

オレは便所にこもった。

首でもつろうかと頭によぎる地獄の数時間だったが、

【カミナリワン】という曲がかろうじてなんとかできた。

それ以降、似たような時間を数度経験していて、今も状況は

全く変わらない。

この時、なぜか漫画家の事を思った。

彼らの苦労を思うと、それこそ、その苦しみは天文学的なものに

違いなく、想像するだけでゾッとした。



夏休みの宿題はいつもこんな調子だったが、

そのおかげで、夏休みが終わるというむなしさが吹っ飛んでいた気がする。

そして今思うと、先生も全てをわかっていて新学期初日に

宿題を回収しなかったに違いない。



今朝9月1日、ここしばらく町に見なかったランドセルを見かけて、

ああそう言えば新学期かと、朝のニュースで知っていたくせに
あらためて思った。

彼らは横断歩道を渡っていた。

学校行きたくないだろうなと同情するような気持ちで一瞬思ったが、

ありゃ宿題明けの顔してるゼと思い返した。

見ると、工作や絵を持っている子供達はいなく、

そうかそうか今日が勝負だなと思い、少しおかしく彼らを見送った。