【光子ロケット】




「あの子達も連れて行きなさい」

博士の言葉で、男の子と女の子が現れた。

一瞬「えっ!」と戸惑う青年の前で、二人は無邪気に笑った。

人類の未来をかけて、光子ロケットが旅立とうとしていた。

アンドロメダまで片道30年の航海だ。

「帰りの便はこの二人と、二人の子供達が乗って帰る」

そう言われ、主人公の青年はうなずいた。



こんな最終回が子供の頃にあった。

【シルバー仮面】という番組だ。

これから、宇宙でどんな冒険があるのだろうと

自分を二人の子供に投影して、胸をふくらませた。

だがやはり引っ掛かる。

あの銀のロケットの筒の中で30年!?

わずかに息が詰まる思いがした。

なので、あまり深くは考えるのをやめ、きらめく星の中を飛ぶ

ワクワク感に思いを転じた。

のはずであったが、

今でもはっきり記憶が残っているところをみると、

やはり、夢の宇宙を旅するにしても、30年という月日に身を投じる

には、いくら子供でも余程の覚悟が強いられることを、

その時感じていたに違いない。



JAXA ”宇宙生活”実験、応募者4400人!

遂にでかでかとこのニュースが出た。

宇宙船の形をした幅3.8m×奥行き11mの訓練設備で、

2週間、男性8人が共同生活を送るという。

30年ではないが、将来を見据えてこんな実験は必要だろう。

寝る場所を見るとオレ達がツアーで北海道に行く時に利用する

フェリーのカプセルベッドのようだ。

あれはそんなにわるくはない。

だが、運動する場所もないせまい空間で、

面つき合わせて男8人2週間。

まあ、オレは海外ツアーなんかで、2ヶ月メンバーと面つき合わせて

というのに慣れている。

それを20年もやっている。

おまけに携帯電話も持っていないから、

他の奴等に比べて、頭上の空間を使って想像力を働かせることに長けている。

もし、自由な研究時間が与えられるなら、その想像力を使って何をしよう。

せっかく宇宙の模擬体験なのだから、荒唐無稽な発想はないだろうか?

とこうして今、書きながら考えてみた。

う~ん、人類がこれから宇宙空間にでる一番手っ取り早い方法はなんだろう?

たぶん、それは人類みな幽体離脱が出来るようになればいいのではないか?

最後は身体を運ぶにしても、まずは幽体離脱をして宇宙を駆け巡る。

この方法がわかれば、アンドロメダまで片道30年かける必要もないのだ。

そしてどこが住みやすいか目星を付ける。

すごいナイスアイディア!

何か楽しみになってきたゾ。

先に、遂にこのニュースが出たと書いたが、

実を言うとオレは、去年早々この実験の情報をつかんでいた。

もちろんフフ、すかさず応募したよ。

だが、しかし、なんと!ふざけんなあ!早々と不採用メールが来やがった。

JAXAよ、オレを使え!