【10℃】
冬の教室に入るとまずストーブ!しかしその日はついてなかった。
何でついてないんだと疑問がると女子が教えてくれた。
10℃以上だとつけてはいけないらしい。
「ウソだろう、絶対10℃以下だよ」
男子が言い放ち温度計を持ってくると、10℃を少し越していた。
しかし窓の校庭は冬の色で、手前に見える鉄棒は冷たくさびている。
これが中学生なら「いいよ、点けちゃえ」なのだろうが、
小学生はそうならない。
目盛りがどうにかならんかなと温度計をにらむだけだ。
ただ、10℃って結構寒いんだとその時思った。
どこを走っていたか忘れたが、バイクに乗っていると突然吹雪に
なり、なんとか死ぬ思いで運転していると、どうしてもおしっこ
がしたくなり、飛び降りるようにバイクを停め、道で立ちション
した。
かじかんだ手でつかんだ棒も冷たく、挟まないようにエイッと
ジッパーをあげ、よろけるようにバイクのタンクに手を置くと、
冷たいはずのタンクが意外に暖かく感じ、ちょっとの間、
素手で触っていた。
どれぐらいオレの手は冷たくなっとんじゃと思いながら、
その後、エンジンで手を温めた。
暑さはまあまあ同じ気がするが、
寒さを感じる温度の違いはおもしろい。
昔テレビで、サドゥ-と呼ばれるインドの修行僧が
気温零下の山で、裸で座禅を組み続けている姿を番組で見た。
このサドゥ-と言われる人は、何の為にしているのかよくわからない
が、人によっては何十年間も、片方の手だけ挙げ続けている人や、
インド中を転がりながら移動したりする人がいたりとかして
全くもって凄まじく不思議な人達だ。
その座禅の修行僧は、極寒の中で寒さを感じないばかりか、逆に熱まで発していた。
修行も極まればそこまでなるのかと、畏敬に近い思いを持ち、
自分にもそんな能力が備われば便利だと思ったのは、
ちょっとはなはだ失礼だが、
人間の身体はこうまでなるのかと感心した。
でもちょっと近い事はある。
雪がちらほら降る札幌の街を、半袖Tシャツで歩いていた。
コートが行き交う大通りを颯爽とライブハウスに向かっていた。
心が燃え、体が燃え、二の腕に落ちてくる雪に心地よささえ感じた。
ライブ前はよくそんな状態になるし、気合いを見せるため
わざとそういうことをする事もある。
自分に限らず、そんな経験は誰にもあるだろうが、傍から見たら
ちょっと滑稽だ。
全然気合いも入ってない普段、
冬の寒さにたまらず「うっ」と身をすぼめる時、
あの時の自分の状態を思い出すと、
他のメンバースタッフがアホを見るような目でオレを見る気持ちが
その時はよくわかる。