かつては、スーパーマーケットなどでは、自らが商品の生産を行っているわけではないものの、「小売」という役務を指定して商標登録を受けることができなかったことから、扱っている多くの商品を指定する必要があり、それが多区分に跨ると、その分、費用も嵩んでしまうという不合理がありました。


 そんなこともあって平成18年改正により小売役務を指定できるようになったのですが、逆に例えば自社で製造しているけれども、ネットやカタログで通販も行っているという場合には、商品そのものと小売役務とで2区分の指定が可能になって来ます。

 この場合、もともとの商品のみを指定して商標権を確保しておけば、余程の場合でなければ不利益を被ることはないと思います。かつては、それしか選択肢がなかったわけですし、その商品に関する小売役務は、指定商品と類似関係にあることに疑義が生ずるとは考えにくいですから。


 しかし、それでも2区分で確保した方が確実だとは思います。商品を指定したのみでは、他者が通販サイトやカタログでのみ登録商標を使用した場合、一旦類似の概念を持ち出さないとならないことが理由の一つとしてあります。

 それと、もう一つ感じるのは、こういう通販を行っている会社ですと、製造が小規模なことが多く、そうすると商品自体には商標を付していなかったり、付していても付記的と感じることが少なくないからです。

 もっと言えば、どちらかと言うと、その商標を主に使用しているのは通販サイトやカタログ、つまり小売役務のように思われるということです。


 ところで、小売役務を指定する場合には、通常よりは使用意思が明確に要求されます。

 例えば、個人が出願人なのにスーパーマーケットのようなところでないと行えないような小売役務を指定した場合とか、互いに類似しない(需要者層等が異なる)小売役務を指定した場合には、使用意思を確認する目的で拒絶理由通知が出され、本当に使っているのか証拠が要求されることがあります。

(下記の「二、3条1項柱書の2.(1)」参照)

http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/syouhyou_kijun/04_3-1-hashira.pdf

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