今回は妊娠と葉酸に関するお話しです。
これから妊娠を考えられている方、あるいは不妊治療中の皆さまには、既に葉酸サプリを摂取されている方も多いと思います。
もし未だなら、今からでも遅くはありませんので、葉酸サプリの摂取をお勧めします。
その理由は、葉酸を摂取することで、『生まれてくる赤ちゃんの先天異常を減らすことができる』ことが知られているからです。
妊娠前からサプリを摂取されている方は400µg/日の摂取で良いですが、妊娠と分かってから摂取を始められる方は一日800µg/日を目安に摂取するようにして下さい。
次に、葉酸サプリの効果を示す論文をご紹介します。
Czeizel AE. Periconceptional folic acid containing multivitamin supplementation. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 1998; 78: 151-161
ハンガリーで検討された、妊娠前後における葉酸含有マルチビタミンのサプリ摂取に関する論文です。
比較対照群(以下、プラセボ群;n=2,391)と、葉酸を含むマルチビタミン摂取群(以下、葉酸摂取群;n=2,471)の2群をランダム化二重盲検により検討されています。つまり、併せて5,000件近くの症例に対し、信頼度が非常に高い検討方法で研究が行われた論文です。
摂取期間は妊娠を望む一ヵ月前(経口避妊薬を服用していた方は三ヵ月前)から摂取を開始し、妊娠が終わるまで(少なくとも妊娠12週まで)摂取を続けています。
結果についてですが、何らかの先天異常が見受けられた割合は、プラセボ群では4.06%の割合であったのに対し、葉酸摂取群では2.06%と低くなっていました。
特に神経管欠損症(二分脊椎症や無脳症など)の発症割合は、プラセボ群0.25%に対し、葉酸群では発症無し(0.00%)という結果が得られました。その他の結果は下記の通りであり、葉酸摂取により先天異常の割合が低くなることが示されています。
先天異常の種類 プラセボ群 葉酸含有マルチビタミン群 オッズ比
(n=2,391) (n=2,471)
神経管欠損症 0.25% 0.00% 0.06
尿路異常 0.38% 0.08% 0.21
心血管異常 0.83% 0.41% 0.42
四肢欠損 0.21% 0.04% 0.19
肥大性幽門狭窄 0.34% 0.08% 0.24
その他 1.59% 1.04%
多発奇形 0.46% 0.41% 0.88
全体 4.06% 2.06% 0.53
葉酸はビタミンB群の一つです。上述の様な胎児の神経発生系への好影響のみでなく、母体自身の赤血球を作ったり、細胞新生に必要となる補酵素です。但し、過剰摂取(1,000µg/日<)を続けると、嘔吐や眩暈といった副作用などもありますので、過剰摂取には気を付けて下さい。
摂取量に不安を感じるときは、かかりつけの病院にご相談されることをお勧め致します。