『睡眠の質』が『卵子の質』に関係していることがわかってきました。卵子の質が不十分で良い受精卵ができないようでしたら、『睡眠の質』を見直してみると良いでしょう。
私たちが、昨年のASRM(米国生殖医学会)で報告した内容をご紹介致します。
Akamatsu S. et al., The poor quality of women’s sleep negatively influences fertilization rates in assisted reproductive technology. Fertil Steril. 2017: 108; e120.
体外受精を予定されていた方を対象に、『ピッツバーグ睡眠質問票』を用いたアンケートを実施し、睡眠の質について評価しました。質問票は0‐21点の加点形式で、点数が高いほど睡眠の質が悪いと判断されます。
検討内では、A群(睡眠障害無;≦5点)、B群(軽度睡眠障害;6-8点)、C群(高度睡眠障害;9点≦)に群分け、体外受精/培養成績について比較検討を行いました。
結果は下記の通りです。
比較対象 A群 B群 C群 p値
(n=136) (n=56) (n=17)
受精率 67.1% 63.1% 48.6% 0.0018
胚盤胞発生率 62.9% 57.1% 48.4% 0.087
良好胚盤胞発生率 26.1% 21.9% 12.9% 0.121
睡眠の質が悪くなることで、受精率が有意に低下することが分かりました。さらに、受精後の胚盤胞発生率、ならびに得られた胚盤胞の質(良好胚盤胞)も、睡眠の質に応じて段階的に低くなる傾向が認められました。つまり、『睡眠の質』は『卵子の質』に大きく影響を与えているということです。
経済協力開発機構(OECD)が2014年に報告した内容によると、日本人(15‐64歳が対象)の平均睡眠時間は、男女ともにワースト3位(加盟国平均時間;8時間22分、日本平均時間;7時間43分)に入っているとされています。とりわけ、女性は1日当たりの平均睡眠時間は世界で最も短い(7時間36分)ことが報告されています。ライフスタイルの変化などが伴い、睡眠時間が短くなってしまっている昨今、少しでも質の良い睡眠をとることが、体質改善になり、ひいては妊娠しやすい身体を作ることに繋がります。
「質の良い睡眠」とは、ただ睡眠時間が長いことではありません。過度な睡眠は、むしろ自律神経に悪影響があることも分かっています。では、質の良い睡眠のためには具体的に何をすれば良いのでしょうか。
以下に『質の良い睡眠』を得るための、いくつかの例を挙げておきます。
【規則正しい生活】(体内時計を整える)
・ 夜は12時までに就寝し、朝は決まった時間に起きる
・ 起きたらカーテンを開ける
・ 朝食を摂る…など
【避けること】
・ストレスの蓄積や、カフェイン・タバコ・お酒の過剰摂取…など