今回は子宮内膜受容能検査 (Endometrial receptivity array: ERA) についてご紹介します。
【ERAって何?】
ERAは、良好胚を複数回の周期に渡り胚移植しても着床しない反復着床不全に対する検査で、着床に最適なタイミングを調べることを目的とした検査です。
子宮には着床可能な時期があり、その時に着床できる胚(胚盤胞)が子宮内にないと着床することはできません。この着床可能な極めて限定的な時期を『‘着床の窓(implantation window)’が開いている状態』と表現をします。
反復着床不全では、‘着床の窓’が開いている時期に胚を移植しているつもりでも、実は子宮内膜の遺伝子レベルでは準備が整っておらず、結果的に着床に失敗している症例も含みます。つまり、移植する時期が‘ずれている’可能性があります。
ERAの検査結果は、胚移植日が『受容期(receptive)』あるいは『非受容期(pre/post receptive)』にあるかを評価します。つまり、胚移植日と着床の窓が開いている時期が同期しているのか、あるいは早い/遅いのかが判ります。
【論文紹介】
本日ご紹介する論文は、2014年にHuman Reproductionという雑誌に掲載された、ERAのパイロット・スタディー(当時)です。
対象患者は凍結融解胚移植周期で胚移植を1-6周期(平均2.1回)行っても着床せず、ERAの結果、胚移植日と着床の窓に‘ずれ’が確認されている患者を対象としています。同一患者に対し、‘ずれ’を修正した正しい時期に胚移植を行うことで妊娠するか否かを調べています。
胚移植実施時期
非受容期 受容期
着床率 11%(7/65) 40%(14/35)
臨床妊娠率 19%(7/36) 60%(12/20)
妊娠継続率 0%(0/7) 75%(9/12)
流産率 100%(7/7) 25%(3/12)
‘ずれ’を修正することで、妊娠率がぐっと上がることがわかります。この様に、ERAは胚移植日と着床の窓が開いている時期の‘ずれ’を見極め、個人個人に応じたテーラーメイド医療を可能にする技術になります。
【最後に】
当院ではERAをいち早く導入し、反復着床不全の方を対象に実施しております(詳しくは英ウィメンズクリニックHPをご参照ください)。実際に、‘ずれ’を修正することで、妊娠し卒業されていく方が続々とでてきています。