Fertility and Sterilityという米国の英文誌にはRefractionsといって発表された論文を更に熟考し意見を述べたものが掲載されています。
今回はその中で、Vitaglianoらの「子宮内膜スクラッチ法の有効性」に関しての論文へのDr. J.M.Goldbergの意見を紹介します。
子宮内膜スクラッチ法はエンドループなどを用いて子宮内膜を軽くスクラッチ(ひっかく)ことで内膜の受容性を高めて妊娠しやすくする方法です。
この方法が有効である理由として、以下のような説があります。
1.子宮内膜の脱落化を促し、子宮内膜状態を改善する。
2.キズを付けることで、サイトカイン、インターロイキン、成長因子、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞といった免疫反応に関わる因子を活性化させて、ヒーリング(治癒)力を促進する。
3.子宮内膜の成熟を遅らせることで、胚の着床と同期させる。
2015年のコクラン解析結果からも新鮮胚移植周期において、早期黄体期に行う子宮内膜スクラッチが有効であることが分かります。
当院でも昨年の英文誌(Reproductive Medicine and Biology)にホルモン補充周期の凍結融解胚移植においても有効であり、子宮内膜スクラッチを行うことで着床率が上がることを発表しました(松本由紀子副院長)。
Dr. J.M.Goldbergの意見のように、タイミング療法や人工授精を行っている患者さんにも積極的に取り組んでいくことで、IVFへステップアップせずとも妊娠できる患者さんが増えることを期待しています。
論文:
Vitagliano A, Noventa M, Saccone G, Gizzo S, Vitale SG, Laganà AS, Litta PS, Saccardi C, Nardelli GB, Di Spiezio Sardo A.
Fertil Steril. 2018;109:84-96.
Effects of endometrial injury on frozen-thawed blastocyst transfer in hormone replacement cycles
Yukiko Matsumoto, Shoji Kokeguchi and Masahide Shiotani
Reproductive Medicine and Biology, 2017; 1960199
Endometrial scratching to increase pregnancy rates with intrauterine insemination
Jeffrey M. Goldberg
Fertil Steril. in press