2016年兵庫県がん・生殖医療ネットワークが設立され、6年以上経過しました。

 

がん患者さんやそのご家族に対して、がん治療による妊孕性(生殖機能)への影響の可能性や将来の選択肢を残すための妊孕性温存療法に関する情報をがん治療開始前にご本人やそのご家族に説明することが大切です。

 

そのためには、妊孕性温存を検討するために生殖を専門とする看護師や多職種との密な連携が必要不可欠です。

 

そこで、兵庫県内におけるがん診療施設と生殖医療施設の看護師、コーディネーターなどとの交流を図り、患者や家族の治療がスムーズに進むことを目的として研修会を実施することとしました。

 

 

(兵庫県がん・生殖医療ネットワークHPより)

 

 

そして、その第1回目として2023年8月27日(日)、英ウィメンズクリニック多目的ルームにて研修会を開催しました。

 

参加者は22名で、医師、看護師、看護大学教員が参加しました。

 

講演として、当クリニックの岡本恵理副院長から

「生殖医療施設から:がん生殖医療の受け入れ施設として役割と実際」

として、

小児・AYA世代の年齢階級罹患率やがん腫の内訳、がん生存率などのお話しから、

女性の妊孕性温存療法の概要、未受精卵子・受精卵凍結の治療の流れと症例の紹介、卵子凍結の治療の流れ、男性の妊孕性温存療法の概要、さらに、無月経・早発閉経に至ったがんサバイバーが子供を授かる方法としてがん生殖、特別養子縁組や里親の制度などについてお話されました。

最後に施設間連携として神戸大学附属病院との連携システム、兵庫県の妊孕性温存の研究促進事業、日本がん・生殖医療登録システムについて説明され、どの内容も大切なことであり、とても興味深い内容でした。

 

 

次に、兵庫医科大学医長 脇本裕先生

「兵庫県がん・生殖医療ネットワークの現在の状況」

についてご講演されました。

毎年、がん診療連携協議会と幹事会で「がん・生殖医療ネットワーク」に関する情報交換がされていると話され、がん診療連携拠点病院と生殖医療受け入れ施設、さらに兵庫医科大学病院の運用システムについて説明されました。

現在は全国に、がん治療施設と生殖医療施設のネットワークは47都道府県まで広がっており、以前よりは広がってきている。しかし、妊孕性温存実施機関の施設認定は要件が難しいと話されていました。

 

また、厚生労働省の妊孕性温存の研究促進事業、日本がん・生殖医療登録システム、兵庫県や兵庫医科大学病院の妊孕性温存のアウトカムについてお話された。兵庫県の生殖医療施設は現在3施設であり、いずれも兵庫県の阪神地区に位置している。兵庫県の北側や西側の地域の方は生殖医療施設が距離的に遠方になるため、治療を急ぐ場合には、希望する生殖医療が受けにくいのではないかと感じたため、連携の強化とオンライン相談などの拡大を検討も考えていきたい。

 

 

そして、神戸大学医学部附属病院がん薬物療法認定看護師 土井久容先生からは

「がん治療施設から:がん患者の妊孕性への関わり」

として、ご自身が対応された事例も用いながら、がんの苦悩や葛藤を抱きながら、妊孕性温存治療を決定する患者の迷いや決断にどのように寄り添ってケアされたのかお話されました。

また、妊孕性温存治療を受けて、移植後に妊娠が成立できなかった患者さんへの対応をお話され、継続的な心理支援が必要であることを感じました。

さらに、さまざまな選択肢を含め、患者の意見や思いを引き出し、意思決定を支援することが大切であると感じました。

 

 

グループワークでは自己紹介と

「がん治療施設と生殖医療施設の連携をどのようにすればよいか?」

という内容でディスカッションを行いました。

ワークでは、現状として、告知後そのまま生殖医療施設に来る方もおられて、多くの課題や問題を抱えて自宅に帰られる。

また心の整理がつかないまま、病院に来て再び多くの決断をするための情報提供をされ困惑が大きいなどのご意見があった。

 

今後の取り組みとしては、

・メールやオンラインで相談をうけられるようにすればよいのではないか。

・がん治療施設と生殖医療施設の連絡ノートなどがあれば情報共有しやすい。

・施設間の連携をもっとスムーズにすべきである。

などの意見があった。

 

 

参加者の方々からは、本研修会について

「妊孕性温存の治療の実際について知識を得ることができた」

「講演もグループワークも学びが多くすばらしい機会でした」

「がん治療施設から生殖医療施設の紹介をする時に、患者さんにより具体的に説明できるかなと思えるようになった」

とのご感想をいただいた。

 

 今回の会のみにとどまらず、患者様がよりよいケアが受けれるように今後とも継続して会が開催できるように調整したいきたい。

そして、がん生殖施設と生殖医療施設の連携をさらに図っていきたいと思います。

 

 

文責:[看護部門] 藤井 美喜  [理事長] 塩谷 雅英

 

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