28 | もしも君が迷ったなら

もしも君が迷ったなら

思いついた言葉を詩に。思いついたストーリーを小説に。

「優子はさ・・。翼のこと、好きなの?」
「え?」
何を突然言い出すんだろう。優子は驚いて返事できなかった。
「翼のこと、どう思ってる?」
「・・・。」
そう聞かれ、どう返事していいか分からなかった。この気持ちをどう説明したらいいのか、分からない。
「分かんないよ・・そんな急に言われても。」
「本当に?」
「何言ってるの?急に変なこと言わないでよ。」
「うん。ごめん。でも・・見てる限りじゃ、優子は翼のこと好きなんじゃないかって思ってさ。」
「でも・・例えあたしが翼くんのこと好きでも・・健太くんには関係ないじゃない。」
その言葉は健太の胸に突き刺さった。そう言われたら何も言えなくなる。
「あいつは・・やめとけ。」
「え?・・何言ってるの?」
健太の突然の言葉に優子は戸惑った。
「翼くんのこと・・何か知ってるの?」
そう問われ、健太は口ごもった。言ってもいいのだろうか。
「ねぇ!何か知ってるの?」
優子は健太の腕を掴んだ。真っ直ぐな瞳に、健太は思わず目を逸らした。
「ねぇ!教えてよ!」
どうせ隠してても、いつかはバレることだと、健太は口を開いた。
「あいつ・・言ってたんだよ。もうすぐしたら居なくなるって・・。」
「それって・・。」
「もうすぐ転校するみたいだ。」
「・・転・・校・・。」
優子の手が健太の腕から力なく落ちる。ショックを隠しきれず、優子は呆然としていた。もうすぐ翼が自分の前から居なくなってしまう。
「ゆ・・。」
「あたし・・翼くん探してくる。」
そう言うと、優子は走って行ってしまった。
「あっ・・。」
追いかけようとしたが、躊躇した。自分が行ってどうなるんだと思わず考えた。ただ優子の後姿を目で追うしかできなかった。