29 | もしも君が迷ったなら

もしも君が迷ったなら

思いついた言葉を詩に。思いついたストーリーを小説に。

既に放課後なので、もしかしたら翼はもう帰ってしまったかもしれない。それでも話を聞きたかった。どうして何も言ってくれないのか。泣きたくなる衝動を抑え、優子は校内を走った。
「もう・・帰っちゃったのかな・・。」
「優子。誰か探してんの?」
クラスメートが声をかけてくる。
「翼くんは?もう帰っちゃった?」
「あぁ。翼ならさっき帰ったとこだから、急げば捕まるんじゃない?」
「ありがとっ!」
そう言うと優子は、翼を追いかけて走って行った。

健太が教室に戻る廊下の窓から優子が走っていくのが見えた。
「健太。」
クラスメートに呼ばれ、振り向く。
「ん?何?」
「優子、カバン忘れてっちゃてさ。悪いけど持ってってあげてくれない?近所でしょ?」
「あぁ。いいよ。」
クラスメートから優子のカバンを受け取る。そして自分も帰り支度をする。
「足、まだ治んない?」
「あー・・だいぶ治ったんだけどな。歩くのは支障ないけど・・やっぱサッカーはまだできないからな。」
「そっかぁ。早く治るといいね。」
「ありがと。」
そんな会話をしながら、健太は教室を出た。

優子は必死に翼を探した。そして翼らしき人影を前方に発見する。
『いた!』
翼は公園の方へ入って行くようだった。優子はスピードを落とすことなく、翼を追いかけて公園へと入って行った。