キャリア発達を考える際に「トランジション」という考え方があります。

 

レビンソンは、発達段階には、
児童期と青年期(0~22歳)、成人前期(17~45歳)、
中年期(40~65歳)、老年期(60歳以降)の4つがあり
ある発達期から次の発達期への移行には4年ないし5年かかるとし
それをトランジション=過渡期と呼びます。

 

*参考文献:D.J.レビンソン(1992) 『ライフサイクルの心理学(上・下)』(講談社学術文庫)
 

人生にはこの段階それぞれに、転機=選択の機会が何度か訪れます。

 

生活でいえばの結婚、出産、子どもの進学、家の購入や引っ越し

仕事でいえば昇進、転勤、転職、昇進、失業

などといった様々なライフイベントがあります。

ライフイベントには、結婚しない、出産しない、家を買わない、昇進しないといった

「起きるはずの事が起きない」ことも含まれます。

 

そして、ライフイベントには

自分や家族の病気、親の介護もあります。

 

シュロスバーグはこうした「転機」を乗り越えるために

自身が「転機」に入ったことを自覚し、対処することが大事としています。

そして転機を乗り越えるためには「4つのS」を点検することが必要だと言っています。

 

situation(状況)

self(自分)

support(周囲の支え)

strategies (戦略)

 

これを親の介護というライフイベントに置き換えて例を挙げてみました。

 

situation(状況)どういった転機か、どの程度のものか、タイミングはどうか、以前はどうだったか、今後の生活をどう変えるか など

例)父と二人暮らしの実家の母が大腿骨を骨折して入院した。

入院中の支援は?いつまで入院する?リハビリは別の病院?退院後の在宅生活は可能か?入院中の父は一人暮らしはできるのか?仕事の忙しい自分は片道2時間の実家との関わりをどうしていくのか?


self(自分)

転機をどのように受け止めるのか、自分の力や内面的なリソースをチェックする(立ち向かうか耐えるか、楽観か悲観か等)
例)◇父の事も母の事も心配だ。仕事もあるが、自分がなんとかしてあげたい
  ◇子どもも頃から自分を大切にしてくれなかった親だからあまり関わりたくない
  ◇まだ親も70代手前、親だけでなんとかしてくれるんじゃないかな


support(周囲の支え)
転機を乗り越える好意・肯定・援助を得られているか、誰からの支えか、広い範囲からの支えか、支えは足りているか、など
例)◇母の兄弟姉妹はどれくらい手伝えるのか 

  ◇父はどのくらい家の事ができるのか、

  ◇自分の兄弟姉妹はどのくらい手伝えるのか 

  ◇自分の妻は関わってくれるのか、

  ◇介護度などが出るのであれば、福祉サービスを受けられるのか 

  ◇地域のサービスなどはどうか


strategies (戦略)

どのような戦略をとるか(状況を変える、状況の意味を変える、リラックスして処理する、あえてなにもしないなど)
例)◇自分が介護休暇を取る 

  ◇母の兄弟姉妹や自分の兄弟姉妹に時間をかけられる人がいるのでその人を中心に、自分のできる事をする 

  ◇親とは仲が良くないので頼られるまで何もしない 

  ◇介護度が出るのであればケアマネと今後の相談をしていく 

  ◇父にしっかりしてもらう
 

結婚や出産、自分の転職などではこうした点検を自然と行うことができても

親の介護の際には、ただ戸惑うだけだったりしませんか?

親の介護を自分の転機と受け止めて、点検を行う事が重要だと考えます。

 

*参考文献;ナンシー・K・シュロスバーグ(2000)「『選職社会』転機を活かせ」(日本マンパワー出版)  渡辺三枝子編著(2003)「キャリアの心理学」(ナカニシヤ出版)