築地最後の初競り、大間産の本マグロが3645万円の最高値だった。マグロの初競りは、毎年年頭に話題になるが、今年は少し異変があった。ここ数年、6年連続で競り落としている寿司チェーン「すしざんまい」運営する会社の喜代村が競り勝たなかったからだ。最後のせりである今年に限ってというのにはそれなりの理由がある。

 初競りでマウントを取らなかったのは第一に、今年が本当に移転前の最後のせりだったこと。そして豊洲にはすしざんまいは行かない。今後はあくまで「築地すしざんまい」として築地を拠点としていくこと。当初、豊洲の集客施設に名乗りあげたがその後に辞退。隣の大江戸温泉を廃止する確約がない限りと豊洲には出店しないという結論だった。外国人観光客が減り、国内景気が冷え込むなか、どうみても豊洲移転はマイナスの公算が高い。やむを得ず移転を決めている仲買御者でさえ、内実では反対がほとんど。衛生面や設備面はともかく、移転したら今より売上がプラスにならないことは目に見えているからだ。

 そこですしざんまいである。さすが商売人、機を見るに敏。儲からないことには手を出さない。移転後は張り合う必要もなく、ソマリアの密漁マグロを買えばいいだけだ。所詮すしざんまいにとって魚市場はどうでもいいのだ。だから一番の席を譲っただけ。